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自分のまちは自分でつくる!【TABLE SESSION TENJIN vol.14】

2022年02月25日 11:00 by 深江久美子

“まちづくりは人のつながりづくり”をコンセプトにした未来のまちづくりにつながる場「URBANG TABLE」。変革期を迎えている天神で、新しいまちに必要なモノ、都市としての機能とは?そんな“まち”の在り方を考えるトークイベント「TABLE SESSION TENJIN vol.14」が開催されました。


「人が育む営みの結果地域が育まれていく。故意的に創り出すものでなく自然に派生するもの。」と語るのは今回のゲスト、森一峻さん。地元・長崎県東彼杵町に2008年にUターンし、自身で会社を経営しつつ、「千綿」というエリアの価値づくりに取り組まれています。その中で見えてきた課題、今後のまちづくりについての展望を聞いてみました。
 

地元の有志で結成され一般社団法人「東彼杵ひとこともの公社」。森さんはそこで東彼杵の地域活性化のため尽力しているキーパーソンです。米倉庫をリノベーションし地域住民と交流できる場として「Sorrisoriso千綿第三瀬戸米倉庫(以下Sorrisoriso)」という建物を運営しています。現在は地域ブランド直営ショップ「くじらの髭」とカフェ「tsubamecoffee」、九州電力と協業して、たい焼きのような新名物<くじら焼>を開発し「CHANOKO」というお店で街のPRしています。人がコミュニケーションを図り、人と人がつながり活動に期待していると教えてくれました。
くじらの髭HP:https://kujiranohige.com/


●東彼杵ってどんなまち?
長崎の中央に位置し、東彼杵町、波佐見町、川棚町の3つの町からできている東彼杵。町内の人口は1995~2014年の間に約2000人も減少し現在は7,700人といいます。働き盛りの生産人口も2035年には3500人に減少すると予想されているんだそう。
そんな東彼杵ですが、クジラとお茶のまちといわれ文化はたくさん。港町なのに盆地で、茶畑から海が見える珍しい立地なんだそう。この地でお茶を保管・拠点にし、長崎の女傑 大浦慶は幕末に財をなしたという史実もあるんだそう。
 

●森さんのターニングポイント
生まれ育った人たちが自分のまちを魅力的だと思っている人が少ないという東彼杵。元々は町の活性化を目指していたというより、人口減少が起こることで、自分が東彼杵でやっていけるのかが不安になり、現在の活動に繋がったといいます。元より取り壊しが決定していた米倉庫(「Sorrisoriso」の前身)を1年かけて交渉しリノベーション。魅力・仕組みづくりにしたいと米倉庫の企画(=拠点づくり)が誕生したそう。


●5店舗、5年構想と10年構想
2013年構想がスタートし、建物の修復からはじまりました。2014~2015年には説明会を設け、ワークショップや改装し地域情報発信拠点・交流施設として開設します。1年に1店舗お店ができるような5年構想を設け、女性の活躍、寄せ集めチャレンジ出店、農業の蘇り、情報発信を基礎に、寺子屋的な仕組みを作り出したといいます。
そして、元製陶所だった当時の面影を残しつつ、新しく再生され人気スポットとなった波佐見町西の原の「モンネ・ルギ・ムック」を立ち上げた岡田さんと交流を深めます。トークセッションに来てもらい身近な事例として話してもらったそう。はじまったばかりはコンビニと居酒屋しかないまちが、2021年超えると約25店舗とかなり増えたといいます。


●まちづくりよりも、人づくり
他の地域で企画を立てると経営者の参加を多く感じていたが、東彼杵のは自主的に行動する経営者が少ないと思ったとのこと。急に地域を作ることは難しいので、自営業者を増やすために人の営み作りからスタート。まちづくりよりも、人づくりに励んだと話してくれました。
そして、ここで働く魅力的な人を紹介しているWEBサイト「くじらの髭」も立ち上げました。「Sorrisoriso」への相談をきっかけに今では移住が増え空き家も少なくなってきたそうです。今年に入り観光客向けに探索コースを紹介する「くじらの旅チャンネル」という動画も公開。今後も力を入れていくと教えてくれました。

●「くじらの髭」の由来
東彼杵と縁のあるくじら。彼杵港では五島沖、小値賀沖からくじらを九州中に送り出して財を得た人がいたそう。そこからヒントを得たのが「東彼杵ひとこともの公社」です。また、くじらの髭は良いモノを仕分けするといわれており、良いモノを吸収していく性質から価値あるものを伝えていく・・・・・・。意味合いもピッタリで名前が決まったと話してくれました。
 

●結いの文化を大切に
都市圏に住んでいた頃は隣にどんな人が住んでいるのか知らなかったと森さん。昔の隣組ではないけれど、小さなまちでは相互扶助の文化がまちづくりをしていくと教えてくれました。地域においてキーパーソンをどうしたら作れるかという相談も多々あるそう。「キーパーソンを作るお手伝いができればいいなと思いますが、自分のまちのことで精一杯なので仕組みを作ってみんなで共有していきたい」とのこと。東彼杵だけを伝えても全国には広まらないので、全国各地の人がつながる仕組みづくりにもチャレンジしていくそうです。

●森さんの今後の野望
ひとこと研究所を作りたいと森さんは話します。今日のテーマのように<自分のまちは、自分でつくる>になる仕組みになると思っているそう。言葉にしたら手伝ってくれる人がいるので、本気だと思ってもらえるようにプロセスに共感してもらえるように作り込むと意気込んでいました。
2月17日には新たな交流拠点「uminoわ」をオープンさせるそう。ライターやデザイナー、クリエイターの育成や、縫製屋やコインランドリー、カフェを設け、地域の方と町外の方とを結びつけていきたいと話してくれました。
https://kujiranohige.com/info/6784


保守的になりやすい小さなまちで、誰でも受け入れてくれる「東彼杵ひとこともの公社」を設立した森さん。ハコがあったのはもちろんですが、周囲を良い意味で巻き込む森さんの人柄に魅かれ、多くの人たちが集まってきたことが大きかったんですね。森さんのようなキーパーソンが誕生すると、まちは新たな一面を見せるのかもしれません。

 

【会場での質問もご紹介】
――場つくりや人の情報発信ですが、前と今と変わったことはありますか?
やっていることは同じですが、だんだん見える化していきました。まちの人をストックして、アーカイブで記録を残すのは街の価値になると思っています。
 

――最初のスタート。1歩踏み出した時、最初に感じた変化と失敗を教えてください。
1~3年は模索中で失敗が多かったです。テナントの方の課題、コミュニケーションがとりずらかったです。どうすればいいのかと考えたのが学んだ心理学。結局は人間関係だったと思います。
 

――モチベーションの保ち方は?気持ちの浮き沈みの対処法を教えてください。
一緒にやってくれる人が周りにいるというのが大きいです。落ち込んだ時は感情に左右されないように、協力してくれる人に感謝しようと考えています。

 

★TABLE SESSION TENJIN vol.14の動画
https://youtu.be/c0kitoswyvM
イベントの詳細は下記youtubeからチェック!
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取材・文:深江久美子
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