まち

まちに愛される店づくりの極意【TABLE SESSION TENJIN vol.12】

2021年12月28日 12:00 by 深江久美子

“まちづくりは人のつながりづくり”をコンセプトにした未来のまちづくりにつながる場「URBANG TABLE」。変革期を迎えている天神で、新しいまちに必要なモノ、都市としての機能とは?そんな“まち”の在り方を考えるトークイベント「TABLE SESSION TENJIN vol.12」が開催されました。


大学在学中に父が経営する食堂が倒産。その後、家族の生活を支えようと5坪13席の焼鳥店を開業しました。今では福岡を中心に人気の居酒屋「竹乃屋」などの飲食店や、様々な事業を全国展開している株式会社タケノの代表 竹野さんに愛される店づくりについて伺いました。出口の見えないコロナ禍においてもピンチはチャンス!と攻めの経営姿勢は変わりません。竹野社長のこれまでの歩み、これから目指すものを聞いてみました。
 

●「竹乃屋」誕生秘話
小学生の頃から出前の手伝いをしていた食堂が倒産したのは、竹野さんが大学に入学してすぐのできごと。自分で何かできないかと初期費用60万で小さなお店を開業します。「焼いて塩を振るだけ」の単純作業だと考え1976年に笹原駅近くに焼鳥店を創業します。焼鳥のいろはも分からず、最初はお客さんにも怒られてばかり。見兼ねた近所の食堂のおじさんが1ヵ月毎日指導してくれた甲斐もあり繁盛店へ。周りの人との縁を感じつつ、竹乃屋の歴史がはじまります。
 

●コロナ禍は意思決定の連続だった
1976年から続く「竹乃屋」も順風漫歩だったわけではありません。2020年にはコロナ禍で未曽有の事態に!数えきれない予約キャンセル、中国にも店があったそうで眠れない日々だったといいます。「政府もそうだったけど、朝決めたことを夕方変更したり。己を信じるしかなかった。」と竹野さん。コロナ禍は収束すると信じ、前に進もうと・・・・・・。常にハードな意思決定の連続だったそうです。

▼意思決定 その1
そんな中、2020年3月に着工したのは全270席を擁する福岡空港店。「竹乃屋」史上、最大規模の店舗だったそう。キャンセルすると福岡空港に出店することは二度とない。無謀な中、神様が挑戦しろと言っていると言い聞かせオープンさせました。ちなみに空港からは本店を望むこともできるそうです。

▼意思決定 その2
福岡空港店以外にもPayPayドームでの出店も。出店にあたり商品開発も終え商品化していた。それをどうにかしないと・・・とオンラインショップを1週間で立ち上げます。その時に多くの人に応援してもらって完売となったそう。個人のお客さんをはじめ、大手スーパーで催事をさせてもらったり、大口の注文をしてくれたり。色んな人たちが手を差し伸べてくれたと竹野さん。


●完璧よりもスピードを重視!
考えずに動くをモットーにしている竹野さんは「正確でスピードあるのが良いが、僕はスピードを優先します」と断言します。スピードを上げるとミスが少なくなるという持論も展開してくれました。最近の例でいうと、着手からローンチが1週間だったというオンラインショップの立ち上げ。この短期間での実行力は驚愕です。その代わり、決済が着払いのみというシステムだったそう。5か月後にはあらゆる決済可能な通販サイトに。


●新しい事業、催事と食物販
コロナ禍に2021年10月までに全国で16店舗開店を開店(リニューアル含む)。今後も某所に都心型ワイナリーなど9店舗を予定しているといいます。ほかにも、完全オーガニックな「つまんでご卵」の農場を飯塚市に立ち上げたり、レストランを併設した発酵シロップ工房や美容健康サポート茶の販売、健康電位で水分を自然な状態にできる健康機など幅広く手がけているそう。
様々な事業を展開する竹野さんですが「挑戦しなかったら成功も失敗もない。挑戦しなかったことに後悔することは多い。」と話します。挑戦すれば答えは二つ、成功か学びか。大変な時期だけどこの挑戦の答えは1年後に出ると、新しいことに挑戦し続けています。
 

●竹野さんが大事にしていること
竹野さんが感銘を受けているのが、幕末に医師・政治家として活躍した後藤新平の「財を残すは下、事業を遺すは中、人を遺すは上なり」という名言。事業が存続しないと人が育たない。事業を存続させるために財が必要。財・事業・人は三位一体。コロナになって改めて気付かされましたといいます。

従業員は社員・アルバイト合わせて1050人。アルバイトにも休業保証をし、コロナ禍でのリストラもしないと宣言したそう。そんな竹野さんに引き寄せられたのは、お客さんたちも!子どもの頃から来てくれる方、80代になっても来てくれる方・・・・・・。長く愛されるのは美味しいだけじゃなく、お客さんとのコミュニケーションだと教えてくれました。常に現場ではお客さんにどうやったら楽しんでもらえるか、飲食店は半径300mがメインとなる近所で支持されるか、コミュニティの1つとしてあるかを考えているそう。コミュニティが続くとドラマが生まれます。そういう場づくり、空間づくりを提供するのも、飲食店の役割だと話してくれました。

最後には「自分の前に現れる障害、問題点は自分が越えられるものしかこない。越えられないものには気付かない。鍛えられるための試練で、これを乗り越えたらと考えると楽しい。乗り越えた先を想像して。」と心強いメッセージで今回のトークセッションは終了しました。

 

愛される店づくりの秘訣はないと語った竹野さん。企業努力はもちろんですが、株式会社タケノが成長した裏側には関わる全ての人たちとのコミュニケーションがポイントだったと感じました。会話や行動でのキャッチボールを続けながら、心地良い場づくり(店舗)も行う。それは「URBANG TABLE」が掲げるコンセプトとも共通しているものでした。

 

【youtubeからの質問もご紹介】

――地域に根ざした店舗運営を目指す中で、店舗の近所の方とコミュニケーションをとるために工夫されてることはありますか?
いまは休止しているけど、町内の運動会など行事ごとは協賛している。以前はサッカーのスポンサー、少年野球のスポンサーなどをしていました。

――竹野社長が「譲れないもの・手放せないもの」って何ですか?
義侠の精神。母校の食堂をしていたりします。後輩に恩送りができれば・・・・・・。そういうのを大事にしていきたい。

 

★TABLE SESSION TENJIN vol.12の動画
https://youtu.be/bErNRLWwzR4
イベントの詳細は下記youtubeからチェック!
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取材・文:深江久美子
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