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熱量が集う場こそが、まちをつくる【TABLE SESSION TENJIN vol.11】

2021年11月30日 11:00 by はたゆう

“まちづくりは人のつながりづくり”をコンセプトにした未来のまちづくりにつながる場「URBANG TABLE」。変革期を迎えている天神で、新しいまちに必要なモノ、都市としての機能とは?そんな“まち”の在り方を考えるトークイベント「TABLE SESSION TENJIN vol.11」が開催されました。

11回目となる今回は、株式会社スペースRデザインを立ち上げ、博多区の山王マンション、冷泉荘など、約20年間で44棟の老朽不動産物件の経営再生を、賃貸リノベーション事業として実施する吉原勝己さんをゲストに迎えトークが行われました。

吉原さんは、製薬会社の研究開発員を経て、今から20年前に家業だった不動産業を継ぎました。他の不動産会社と違うのは、築40年~50年の中古ビルを取り扱っているところ。不動産業を一代で終わらせるのではなく、三世代に渡り築100年の賃貸事業の運営を経営計画としているのだそう。築40年代近い物件は、特別な想いで作られた建物が多く、今にはないデザインで入居の需要があるのだそう。

●「“リノベーション ミュージアム”山王マンション」
不動産業を継いだ時、築53年の山王マンションと、築63年の冷泉荘は衝撃的な物件だったと話します。明らかな老朽を目の当たりにし、当時は珍しかったリノベーションを知り合いや学生さんへ依頼。一部屋一部屋担当するデザイナーを変え内装も全く異なるものへと生み変えました。個性豊かな部屋が揃い「“リノベーション ミュージアム”山王マンション」へと名前を変え、口コミで広がり空室も埋まったそう。

●入居者によるDIYで生まれる共感「冷泉荘」
元々、リノベーション住宅だった「冷泉荘」を、オフィス需要の増加を受けオフィスビルへ用途を変更。用途をその街に適した需要へ変えていくことで、街の活性化を図りつつ、不動産経営も安定すると言います。

冷泉荘のyoutubeチャンネル↑

リノベーションした後も建物の価値を持続するためには、ハードのリノベーションだけでなく、ソフトの面が大切なのだとか。入居者によるDIYで生まれる共感、入居者同士のコミュニティ、それは入居していること自体がブランドになっていて、建物の価値を生み出しているのだと話します。現在では、冷泉荘の家賃収入は76.5%もアップしました。20年以上経営してきて証明できたのは、リノベーションすることで家賃は下がらないということ。


●久留米の団地「江戸屋敷」で起きてること
西鉄久留米駅から車で10分程のところにある「コーポ江戸屋敷」という団地の経営をすることに。土地柄、安く家が建てる事ができるため、リノベーションしたからといって家賃を上げる事ができず、解決策を探るべく勉強会を実施。リノベーションせずにコミュニティで人が集うようにと、空室をコミュニティデザインカレッジとして利用できるようにしました。東京より社会学を専門にしている甲斐先生を招いて講義も実施し、延べ200人の多種多様な人が学び、江戸屋敷のコンセプト「理想の暮らしは自分たちで作る」が生まれました。

その中で、好きなことをして自然と人が集まることは何かを話し合った結果、路面に「ピザ窯」を設置し、自由にピザが焼ける街を目標にする事が決まりました。

ウッドデッキに座って街を眺めながら談笑し、ピザを食べ、植栽の木陰に佇む。そんなイメージ図は、一つ一つと実現しているといいます。植物を植え、ウッドデッキができ、着々と進めていくなかで、久留米にいる若手の大工や園芸、金属左官などの職人が続々とこのコミュニティに参加。この江戸屋敷のコミュニティデザインに関わりたいと団地の一室は、現在職人によるシェアオフィスとして活用されているそう。直接仕事を受けることができる事業へ転換したいとの彼らの想いも合致し、その影響から江戸屋敷は進化を遂げています。

入居者が自由に入れるスペースを作り、そうめん流し等のイベントなども開催。

閉鎖された通路を花壇にし、ハーブを植え収穫し料理に使ったり。

●団地同士の交流が生まれる
そんな活動の中、ある嬉しい出来事が起こりました。江戸屋敷の勉強会へUR大阪の方が毎回大阪から参加してくれるようになりました。そして今度は、大阪で進んでいたURの再生プロジェクト「香里団地」「千里青山台団地」のコミュニティデザインを江戸屋敷の職人達と一緒に見学するべく大阪へ。団地同士の相互的なコミュニケーションが生まれました。

そうしているうちに、江戸屋敷の一室でパン屋を開く人が現れたり、それをSNSで見た東京のご夫婦がカフェを開くべく移住して来られたりと、人の繋がりが建物やエリアに影響を与え始めました。戸建や分譲だとできない、賃貸だからこそ生まれたことだと話します。

●江戸屋敷の職人グループが手掛けた「日の里団地」
URが運営する住民主体の団地「日の里団地」。宗像市にある約50年前に建てられた団地で、実はこの再生プロジェクトの工事は江戸屋敷の職人グループが携わっています。日の里団地の凄いところは、入居者一人一人が社会を改革していこうという意識の高さ。その想いは、今後の日の里の街を大きく変えていくだろうといいます。

●シャッター商店街を中心に新たなまちの賑わいを生み出す大牟田
炭鉱で栄えていた大牟田は、今では人口が半分になっています。シャッター商店街が問題になっていて、人通りが少なかったそう。しかし今では、シャッター商店街の一軒一軒を官民一体の施策でDIYし、空き店舗が0に。地元の若者が自分達の街を変えていこうという機運が高まっています。
大牟田駅前に駅のシンボルとして古い西鉄電車が設置され、カフェとして生まれ変わりました。フルーツサンドがいただけるなど老若男女問わずお客さんがひっきりなしに訪れています。その流れから、直ぐ隣にジェラート屋等、新しいお店が次々とオープンしています。

●九州DIYリノベWEEK
2014年から始めたイベントが、今や全国まで広がりを見せている「DIYリノベWEEK」。「自分の好きな暮らしは自分で創る。自分の好きなまちは自分で創る」を合言葉に、各地でリノベーションやまちづくりに取り組む人々が、ワークショップなどのイベントを通して交流を図る取り組みです。鹿児島の伊佐市では112件も不動産を再生させたチームが新規に参加するなど、九州各地に影響を与え始めています。

●九州各地から感じるリフレクション
各地で活躍するイノベーターを横目に、福岡でも何かできないかと、大名にあるビルの屋上を緑化しイベントを実施したり、駐車場をアウトドアオフィス街にするべくトレーラーオフィスを設置したり、様々な取り組みを行っています。

最後に吉原さんは、福岡のこれからに対する危機感を語ってくれました。福岡市民は消費する街に心地良く暮らしているが、これからまだまだ活躍できる場所の設定が必要。天神ビッグバンで新しくなっていく福岡に住んでいる事に安心するのではなく、一人一人が活動してこそまちの魅力を保つことができるのだといいます。

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リノベーションやDIYといった元ある建物を活用する取り組みを身近なもとのして捉えていたので、福岡がその先端と他地域から言われている事に驚きました。と同時に、新しく生まれ変わろとしている福岡の街に甘んじて期待ばかりを抱いているだけではいけないなと感じました。まずは、ニューオープンといった真新しさだけではない街の魅力を再発見しながら散歩したいと思います。
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取材・文:はたゆう
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URBAN TABLE

住所 福岡市中央区天神4-3-30 天神ビル新館1階

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