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移住ってホントに必要?【TABLE SESSION TENJIN vol.15】

2022年04月16日 11:00 by はたゆう

“まちづくりは人のつながりづくり”をコンセプトにした未来のまちづくりにつながる場「URBANG TABLE」。変革期を迎えている天神で、新しいまちに必要なモノ、都市としての機能とは?そんな“まち”の在り方を考えるトークイベント「TABLE SESSION TENJIN vol.15」が開催されました。

15回目となる今回は、福岡移住計画の代表も務める(株)SALTのCEOの須賀大介さんを迎えトークが行われました。須賀さん自身も東京から福岡へ移住し10年を迎え、移住体験者として、また移住をすすめる立場として様々な視点から話を聞くことができました。

●20年前の渋谷で起業
今から20年前、ビットバレーと呼ばれIT企業が集中した渋谷にWeb制作会社を立ち上げた須賀さん。しかし、起業して7年目にリーマンショックが起き、10年目に3.11の震災を体験。東京の高い家賃や人件費を維持しながら事業を続けていく事に疑問を感じ、東京のハイコストな事業をやっていくとどうして
も利益や経済合理性が優先となる仕事の在り方に疑問を持ち、もっとIT企業ならではの、社員の個性を活かしたしなやかな働き方ができるのではと考え始めたそう。そうして、2012年に福岡に移住し、まずは、福岡と東京の2拠点での事業展開をスタートさせました。

●糸島の芥屋に最初のコワーキングスペースを始める
移住した当初、天神にオフィスを構えたものの、売上が伸び悩んだ時期がありました。営業先では、これまでの業務実績は理解してもらえるが、実際に福岡の為に何ができるの?という問い掛けが胸に刺さります。移住してきたばかりで、福岡の歴史やまちについて深く理解していない事が大きな壁となって立ち
はだかりました。その後、天神でのオフィスをクローズし糸島 芥屋にある元スーパーマーケットだった物件をリノベーションした『ライズアップケヤ』をコワーキングスペースとして運営を開始します。東京から天神そしてそこから一気に芥屋という土地に入って活動を始めたため、ローカルリテラシーが無い
まま運営をしていると、うまく行かない事も多く経験。そこで、ひとつひとつ自らの体験として学びながら、次に今宿の、海が見える場所現在の本拠地となるSALTを開設したのです。そこから5年間で徐々に会員数の伸び、1フロアから5フロアまで拡張していきました。



●コロナ禍の影響により出張がストップし気づいた価値
順調に見えたSALTの運営の目の前に立ちはだかったのが、コロナでした。福岡へ移住して8年たった2020年、県外のクライアントへ出向ていたのがコロナ禍の影響により強制的にストップしました。しかしそのことで逆に福岡にどっぷりと居る時間ができ、自然の中に毎日通っていたそうです。そうして初めてさらに福岡や九州、特に地元ポテンシャルの高さに気づいたそう。そこで、東京へ仕事を取りにいくのではなく、福岡に足を運んででも一緒に仕事がしたいと思ってもらえるような顧客を創造していこうとリブランディングに乗り切ったのです。

●2021年、(株)SALTと社名を変更
そのリブランディングの取り組みの中で、昨年社名をスマートデザインアソシエーションからSALTへ変更。社名の由来は糸島にある「またいちの塩」からインスピレーションや影響を受けたといいます。海水から塩の結晶を作る、0から熱によって価値を創り出す。そんな姿に感銘を受けたそうです。そのSA
LTというコワーキングスペースで生きる自分たちの姿をそのまま社名に決めたのだそう。

●分散型オフィスでの働き方の実践と事業
コワーキングスペースは福岡に3拠点と東京に5拠点、宿泊は10物件を管理していて、移住やシェアオフィスの事業の売上は、現在では全体の約7割に。前半10年間でやってきた、これまでのWEB事業を抜いて、不動産活用事業が中心になっていきました。現在、フルコミットの正社員は8名、拠点運営メン
バーは14名。映画監督、パートナーなど、多様な働き方をするメンバーとチームを構成しています。

●これからのコミュニティ型のまちづくり
須賀さんは、自らが東京から福岡へ移り住んだ経験も活かし、福岡への移住を サポートするプロジェクト「福岡移住計画」の代表も努めています。お試し移住や、まち歩きなど様々な取り組みを行い、中には働き方を変えたい考えの大手企業からも参加があるのだそう。
これまでは、公共のインフラが出来て、そこに個人の暮らしが後から付いてくるという流れでした、しかしこれからは空き家や空きビルが増え、その場所でどういう暮らしをし、どういった街にしたいのかという理念がとても大事で、そこにコミュニティ(コワーキングスペースやシェアオフィス、シェアハウス)としての価値が生まれてくる。そういった考え方の順番がとても大切だと話します。

コワーキングスペースをはじめとした不動産開発を福岡や東京等で行ってきて感じたのは、箱を提供する行政やデベロッパーが増えていく中でコミュニティを作る人材が不足していること。地域で活躍する人や移住者、アーティスト等、若い次の担い手を育てていくことが、これからの課題だと話します。

●官民一体の事業をしかける
昨年10月から須賀さんたちが取り組む最新のプロジェクトに、古賀市と協力して実施した事業で、温泉施設「快生館」を活用したコワーキングスペース運営のプロジェクトがあります。コロナウイルスの影響で休業になっていたこの施設をオフィスやワーケーション、地元民の交流の場など多様な利用用途とし
新しく運営するというもの。ワークスペースとして活用する一方で「快生館」として快く生きるとは?をテーマにしたトークイベントや、ヨガ教室、マルシェ等、様々なイベントを行っています。今後、コンパクトシティ構想などの実証実験もかねて、機能の実装と実証を繰り返していくのだそうです。

●移住は必要か?その答えのひとつは、越境インターシップ
移住して仕事を見つけて働き出した時、その仕事が合わない場合もある。そんな時に、例えば半年ごとに働く企業を変え、様々な企業を体験していく中で、やりたいと思える仕事に出会う。そんな在り方を受け入れる懐深い企業のインターンシップの仕組み作りをしてみても面白いのでは?と須賀さんのアイディアは広がっています。

●拠点サービス、拠点滞在・体験プラットフォーム『+Wander(プラスワンダー)』を磨きなおす
全国のコワーキングスペースや民泊施設の情報ポータルサイト『+Wander(プラスワンダー)』も須賀さんが手掛けたもののひとつ。国内外の多拠点シェアオフィスと宿泊先を定額(月額3万円)・割引で利用できるサービスで、1拠点に囚われず様々な地方で働くことで、各地の人や自然と触れ合いながら働く事を推奨するサービスです。地域や行政を巻き込んで、この取り組みを広げていけたらと展望を語ります。

●「移住」は誰のもの?何のため?「移住」のあり方
そもそも、福岡に住んでいる立場から福岡への移住者が増えてほしいと思うか?の問いに対して、まちが多様になる、地元にない視点で新しい取り組みが生まれる等のメリットはあるとファシリテーターの髙山さん。しかしインフラの混雑が増える可能性も。移住は必要だけど、更に移住を丁寧に着地させるサポートが大切で、それは1社だけで行うのは難しく、企業との連携が不可欠と話します。「移住」せずとも、プロジェクトの期間だけ、週末だけ、と少しの間だけ移り住んで働く在り方を「微住(びじゅう)」と名付け、柔軟な移住の在り方もこれからは必要かもしれないと須賀さんは問いかけます。
人は色んな地域に関わることで見えてくるものがある。そして、それを受ける地方の体制が何よりも大切だと話し、このイベントを締めくくりました。


一つの企業、まちに定着した生き方も良いが、移住で様々な職やまちに出会い体験できる仕組みのお話しはとても興味深く、須賀さんが考える柔軟な移住の在り方がもっと広がっていってほしい思いました。


●参加者の声
・快生館で東京などから移転予定の企業がいる時に、パートナーやクライアントになりうる企業を紹介できると誘致に近づける。福岡でも東京の企業と繋がりたいとことろはあると思うので、そういう情報が知れたら有難いです。

・そもそも移り住む“移住”の必要性ってあるのでしょうか?生活拠点ごとの魅力に誰もが気付きつつ、どこでも働ける環境になればいいなと思いました。


イベントの詳細は下記youtubeからチェック!
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取材・文:はたゆう
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住所 福岡市中央区天神4-3-30 天神ビル新館1階

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