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誰もがクリエイターになれる未来を創る【TABLE SESSION TENJIN vol.09】

2021年09月07日 11:00 by はたゆう

“まちづくりは人のつながりづくり”をコンセプトにした未来のまちづくりにつながる場「URBANG TABLE」。変革期を迎えている天神で、新しいまちに必要なモノ、都市としての機能とは?そんな“まち”の在り方を考えるトークイベント「TABLE SESSION TENJIN vol.09」が開催されました。

9回目となる今回は、「株式会社しくみデザイン」代表取締役 中村俊介さんをゲストに迎えトークが行われました。「人間が苦手なことは機械がやってしまえばいい」と、楽器の演奏やプログラミングが誰でも簡単できるコンテンツを発表してきた中村さん。モデレーターには福岡テンジン大学の学長 岩永真一氏を迎え、その発想の原点や、会社を作った経緯、今後の展望について話を伺う事ができました。


●「建築」も「デザイン」も自分には不向き
中村さんは、父親の転勤で学生時代は群馬県で過ごし、大学は名古屋大学の工学部建築学科に進学しました。建築を学ぶにつれ、自分には建築は不向きだと感じ、大学の先生に相談。全てを一から作れる“ものづくり”がしたいと伝え、デザインが学べる九州芸術工科大学大学院を進められ進学することに。在学中は、プログラミングのアルバイトでCADを扱うなど、デザイン以外へも視野を広げます。そして、再び専攻していたデザイン学科への不向きを感じ始めます。最終的に行き着いたのは、アルバイトで学んだ「プログラミング」と「デザイン」を組み合わせたメディアアートの創作でした。


●コンプレックスから出来たものがグランプリを受賞
そんな中村さんには、あるコンプレックスがありました。楽器を演奏する事への憧れがあるものの、人前に出て演奏する程の腕前はない。格好良く演奏してみたいが、練習はしたくない!それならば、誰でも簡単に演奏ができるようなツールを作ればいい、そう考えてできたものが、人の体の動きに反応し演奏ができる「神楽(KaGuRa)」というデジタルコンテンツでした。発表した2002年には余りにも新鋭的で、NHKの番組に取り上げられたそう。また、デジタルコンテンツグランプリ東北のグランプリの受賞、特許の出願と、大きなターニングポイントとなりました。

●体感コンテンツでマネタイズ
その後、「神楽(KaGuRa)」を利用したリハビリや広告等を福岡県に提案したことで補助金がもらえる事になり、「株式会社しくみデザイン」を設立する流れになったのだそう。会社を運営するにあたり事業のマネタイズを考え辿り着いたのが「体感コンテンツ」でした。「笑っていいとも!」の番組コーナーで、「体感コンテンツ」の一つが取り上げられた事がきっかけで、会社への問い合わせが急増。これを機に、中村さんは「体感コンテンツ」はビジネスになると考え、更に仕事の枠を増やしていきました。

【体感コンテンツの例1~球場のディスプレイ~広告】

球場の大型ビジョンに観客席へカメラがフォーカス。カウントダウンと共にフォーカスされた観客の顔にはタイガーマスクを被ったように映り、最後に企業広告が入ります。皆が思わずビジョンに注目する面白い仕掛けに、広告を打った企業の売上も見事にアップしたのだそう。


【体感コンテンツの例2~店頭ディスプレイ~】

アパレルショップの店頭にあるデジタルサイネージに風船が現れ、子供がその風船を割ると割引券が表示されるというもの。自分の子供が実際に体験し手に入れた割引券とあって、客単価や売上も高くなり、実施店舗は2店舗から全店舗へ広がったそう。


●「すごい」は一度だけ、「楽しい」は何度でも。
通常、ポスターや動画等の広告は見る人にとって必要性が低いものが多いが、顧客自身の体感や体験を挟む事で、興奮や驚き感動など人の心が動き、売上もそれに伴い上がるのだといいます。そんな中に生まれたクリエイティブポリシーが『“すごい”は一度だけ、“楽しい”は何度でも』。作り手が、“凄い”と褒められるものはいずれ忘れ去られるが、作り手ではなく顧客が“楽しい”と感じた事は、たくさんの人に広がり、ずっと覚えられていると話します。

「神楽(KaGuRa)」はリリースして10年経ち、更にブラッシュアップし「KAGURA」として再発表。様々な楽器の音が登録されており、不協和音を奏でないリズムが組み込まれているので、誰が操作してもプロ並みの演奏ができ、それらしい楽曲を作ることができます。
そんな「KAGURA」は、2013年に、世界規模で行われる技術コンテスト『Intel(R) Perceptual Computing Challenge』のグランプリを受賞するという快挙を成し遂げ、約2800の応募の中から1位に輝きました。

KAGURA
https://www.kagura.cc/jp/
WindowsやMac(カメラ付きのPC)で操作可能。有料版の他に無料版もあります。


●クリエイターを作るクリエイターへ
クリエイターとしてコンテンツを作り続けてきて気づいたのは、結局はゲーム、音楽、映像、アートは全て、作っている人が一番楽しいという事。だからこそ、全ての人が創り手になると、さらなる広がりがあると思ったそう。そうして出来たものが、誰でもプログラミングを通じオリジナルゲームや作品を作ることができるアプリ「Springin'」。文字等の説明は一切無く、直感的な操作で子供から大人まで簡単にゲームを作ることができ、作ったゲームはアプリ内のマーケットストアで販売することができます。作ったゲームに、いいね!やコメント、またダウンロード数も数値化されて、モチベーションを上げる工夫もされています。

●「Springin'」を世界へ
最初子供が作っていたが、途中から親御さんが夢中になり、親子で「Springin'」にハマっている事例も多いそう。そもそも子供向けに作ったものではなく、基本的に大人向けにデザインされ、子供にも操作が出来る、そんな作りになっているのです。
コロナ禍のおうち時間の需要により、現在は70万ダウンロードを超えています。その内、小学校を始めとした教育関係からのダウンロードが急増。この流れから、より多くの人に使ってもらう事へ業務をシフトする為、「体感コンテンツ」の新規受託業務を一切断り、社員のリソースを全て「Springin'」へ注力できるようにシフトチェンジしたのだそう。


●クリエイターが主役になれる時代がくる?
これまでは、発注者よりクリエイターの立場が下に思われがちだったが、昨今はテクノロジーが発達し、TwitterやTikTokなどコンテンツを発信する側に価値が生まれてきているといいます。今はまだインフルエンサー(情報を発信する人)の力が強いが、これからはクリエイターが主役になれる時代へと突入し、表に出ることが苦手だが作る事が好きな人に光があたるプラットフォームが、今後ますます広がりをみせていくだろうと話します。


●Springin'を教える人を増やす
幅広くゲームを作る楽しさを届けるべく「Springin' Classroom」というサービスをスタート。Springin'を使ったプログラミング教室を始めたい人向けの教材提供や、教育版ライセンスの管理などができるサービスです。また、子供向けに丁寧に説明した単行本も販売され、これから更に広がっていくであろうSpringin'に期待が高まります。

「Springin'」を一通り使い方が単行本になった「はじめてのスプリンギン」↓



●質問
Q&A『KAGURAとSpringin'に興味を持った子供に、次はどのような方向性をアドバイスしたらよいでしょうか?』
▼中村氏
こうしなさい、と言うより、自分でやりたくなるような環境と道具を用意してあげる。そして、作ったものをひたすら褒めてあげる。そして、Springin'内でやっているコンテストへの出品を進めてみる。賞を取ったら、その成功体験をもって、次にステージへ向かわせる。Springin'の中には月に一度、スポンサーになっているサポーター企業が、アワードを行っている。そんなチャンスを子供へ与えてあげる。楽しんでやっているところを伸ばしてアシストしてあげる事が大切です。

福岡テンジン大学学長 岩永真一さん▼
Springin'では、使い手が作り手になるような仕組みになっており、まちづくりも、それと同じように一人一人が作り手側になるように意識をすることが大切。Springin'のように作り手も楽しめるよう、まちづくりも楽しく関われるような仕組みづくりが重要かもしれません。

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練習はしたくないが楽器を上手に演奏したい、一見理不尽に思える事も視点を変える事で革新的なコンテンツが生まれるのだと感じました。そして、きっと国内にとどまらず世界へ広がるべきコンテンツが、ここ福岡から発信されていることを誇りに思う1時間半でした。
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イベントの詳細は下記youtubeからチェック!
▼Youtube
https://www.youtube.com/watch?v=mS_p19CxiwA
▼Facebookページ
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▼公式サイト
https://tenjinsite.jp/urbangtable

取材・文:はたゆう
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