日々是食欲

業態が細分化しつつある飲食業界

2013年06月13日 08:00 by 弓削聞平

福岡でもここ数年で「ワインはすべて自然派です」という店をあちこちで見かけるようになったこともあり、今年の3月に発売になった〈ソワニエ〉で「自然派ワインにハマった人々」という企画をやった。そして次の流れは日本のワインだ。ひと昔前は日本のワインといえば、観光地のお土産ワインというイメージが否めなかったが、最近は実に高品質なワインがあちこちのワイナリーでリリースされている。そういうこともあり、日本のワインを以前よりたくさんおく店が増えてきてるが、東京のように専門バーというのは福岡にはなかった。しかし、福岡にも遂に「ワインはほとんど日本のもの」という店ができた。薬院の「ユクス」という店がそれだ。こういう店のいいところは、その打ち出し、つまりここで言えば日本ワインだが、それへの愛情が深いことだ。それが客にも伝わり、そして客も新たなおいしさへの出会いと発見がある。これこそ外食の喜びだろう。

最近このように飲食の業態は実に細分化が進んできている。ここ5年くらいで増えているのが日本酒の店だ。10年前には日本酒専門バーなんて考えられただろうか? 春吉の「ぼんちゃん」とか大名の「赤たん」のように日本酒と焼酎という店(あるいは焼酎だけという店)はあったりもしたが、最近の日本酒バーのようにフードは料理と言うよりは酒のアテがほとんどで、あとはひたすら日本酒という店が成り立つとは思いもしなかった。そこには、日本酒自体の質があがり、熱心な蔵人、あるいは酒屋の尽力により、全国的に日本酒気運は上昇していったことが大きい。そうなればそこにはおいしい日本酒をおいしく飲ませる店の存在も必要不可欠であり、そういう店が福岡でも徐々に徐々に増えていったのだ。そんなふうに、造り手、流通、そして実際に飲ませる店があって初めてその業界が成熟するのだ。

大名の「kasa」や白金の「白樺」などイタリアンワイン専門のワインバーができたり(イタリアンレストランでワインはすべてイタリアのものというのはそう驚くことでもないが)、ニュージーランドワインのみを扱うワインバー「RiNGA」(春吉)ができたことも記憶に新しい。イタリアならともかくニュージーランドだもんな〜。確かに小さな店ではあるがえらくマニアックだ。これも店主がニュージーランドワインに惚れ込んでいるからこそだ。

また、最近は本サイトでも紹介したバウムクーヘンメインの店「Adolf Baked Company」ができたり食パン専門店「むつか堂」ができたりもしている。あるいは昨年、白金にはジン専門バー「ねずの実」もできた。これらはいわゆる専門店なわけだが、焼鳥とか水炊きという専門店とはその専門性というか間口の狭さは尋常じゃない。

このような専門性の強い店というのはぼくら消費者にとっては実にありがたい。そこには一般的なワインバーだったり、居酒屋だったりでは出会うことのできない商品やストーリーに出会えるからだ。専門店だからこそ仕入れられる商品もあるし(一般店では仕入れることはできてもオーダーする客がいないので、実質的には仕入れられない)、たとえば普通のバーでは開けられないような酒をグラスやショットで飲むチャンスもある。店の人も当然その世界のことだけを(だけというと語弊があるが)勉強するので、当然知識も豊富だし、それだけ情報も入ってくるので話もおもしろい。

だから専門店の多い街はおもしろい。さして興味がなくても、案外行ってみるとハマったりする人もいる。これからもいろんな専門店ができるといいな〜。

あ〜、今回はカレーの話を書くつもりだったことに今気がついた。そう、6/20に「福岡のハマるカレー」というカレー専門ガイドブックが発売になります。こちらも細分化だな〜、なんて強引にこじつけてみたりして。書店やコンビニで販売されますんでぜひ買ってください。福岡の176軒のカレーの店を紹介してます。




新しい岩手のワイナリー。これが初リリース。中はニュージーランドワイン。

取材・文:弓削聞平
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