食べること、飲むことが好きな人にとって、飲食店をハシゴすることは大きな楽しみの一つです。とはいえ色々食べ飲み歩きたいけど、この寒い時期はあまり歩きたくなかったり、また腰を落ち着けてゆっくり飲みたいという方も少なくないと思います。そんな方々に朗報です。1つの場所に留まって、何店舗もハシゴできるという魅惑のスポットが誕生しました。

薬院六つ角からほど近い大正通り沿いに、今回ご紹介する『薬院ハシゴ横丁』はあります。入口をのぞいただけでは分からなかったのですが、入ると奥まで空間が続き、けっこうな広さです。ここに7店もの飲食店が同居しています。

てっきりフードコートや屋台村のように共有スペースにテーブルや椅子があって、そこで飲み食いするのだと思っていましたが、違いました。1店舗ずつそれぞれのイメージにあった内装が施されています。あえて説明するならば、隣り合う飲食店の表側の壁を取っ払ったような感じといいましょうか。

例えばこのように、まったく雰囲気の異なる店が隣合わせで並んでいるのです。なかなかユニークな光景です。

横丁内の店舗はそれぞれ独立した形で運営されています。ですがせっかく1つの空間に同居しているというそのメリットを生かして、横丁内では他店のフードの出前もできるというシステムが作られています。

出前をする場合、その店に自分で注文に行き、どの店に持ってきて欲しいかを伝えます。清算はその都度、キャッシュオンで支払います。各店には下の写真のように出前メニューも置かれています。ただしドリンクは座っているお店のみでの注文になります。

もちろん出前ではなく、店のハシゴも楽しめます。とはいえ、7店ともジャンルが違うし、それぞれメニューが豊富です。これだけあると迷ってしまう……。ということで、各店の店主にお店の特徴やおすすめメニューなどをうかがいました。なお、料理については全店コンプリートしたかったのですが、さすがに1人の胃袋では限界があるので、今回は、手始めとして3店の料理をいただきました。

この店が入っているなら、まずこの横丁は信頼できるといっても過言ではないでしょう。人気の焼鳥店『美久馬』です。イチオシはやっぱり厚みがあって噛めば肉汁が口に広がる「豚バラ」です。「できるだけ熱々を召し上がってくださいね」と店主。ワインやウイスキーも楽しめます。

食欲をそそる、素晴らしい焼き加減の串です。左から「トマト巻き」（220円）、「砂ずり」（176円）、「豚バラ」（198円）、「せせり」（198円）、「とり皮」（154円）。間違いのない美味しさ！

こちらもご存知、中洲にある茶碗蒸し専門の『稲穂』です。中洲店同様に19種類もの茶碗蒸しが揃うなか、大将のイチオシは「チーズ茶碗蒸し」（410円）です。また、ここ横丁店限定で、握り寿司も出しています。寿司ネタは9種類ほどあり、「おまかせにぎり」（3貫638円）、「ふわふわの穴子握り」（2貫858円）など、気軽に本格寿司が味わえます。

写真は「茶碗蒸し三種Aセット」（1,100円）。左から「チーズ」「なめこアオサ」「海老」です。出汁の風味がよく効いたとろっとろの茶碗蒸しは、具材によって味と食感の変化を楽しませてくれます。特に一番人気の「チーズ」は茶碗蒸しのとろとろに加え、チーズがトロ～リ。その食感に思わずうなってしまいます。

なんと平尾にある人気のビストロ『ロベール・エ・ルイーズ』も入居していました。こちらは平尾店よりもカジュアルに、1～2人でも楽しめるようなメニューの提案がされ、グラスワインも5～6種類揃えています。おすすめは薪でじっくり焼き上げる「薪焼きステーキ アンガス牛」（100g1,650円）と「レバーペースト」（770円）です。

続いて焼き肉屋『やいてん』は福岡では珍しい、熱した溶岩のプレートで肉を焼くお店です。溶岩は遠赤外線を放出し肉が柔らかく焼き上がり、脂も落ちにくいため肉汁もたっぷりです。「カルビ」「サガリ」（各550円）など1人前がリーズナブルに提供されるので、1人焼肉にもぜひ！

居酒屋『戎屋』は、中洲からこの横丁へと移転してきました。「牛テール鍋」（2,680円）をはじめ、もつ鍋や水炊きなど鍋の種類が豊富なうえ、ステーキやテールなどの肉料理、唐揚げのような居酒屋料理など、メニューがとても充実しています。テーブルとカウンターあわせて全20席と、横丁内で一番座席数が多いので大人数ならこの店が狙い目です。

『和天』は7店で唯一、独立したばかりの店主が初出店したお店です。糸島産の野菜など旬の食材を中心に、揚げたての天ぷらを味あわせてくれます。「自家製厚焼き玉子」（250円）、「豚足の天ぷら」（390円）などの変わりネタもあります。盛り合わせ800円～。おすすめドリンクは「グレープフルーツサワー」（520円）です。

「天ぷら盛り合わせ」（1,000円）は日替わりで、この日は菜の花、ナス、ニンジン、パプリカ、安納芋、そして自家製の厚焼き玉子でした。素材の味を生かすため薄衣で仕上げられていますが、そのためサックリした食感も生まれています。厚焼き玉子はジュワっと中からも美味しい出汁が染み出て秀逸！

1人でも気軽に寄れる『立呑み処ちかっぱ』も中洲に本店があります。この横丁店では「春巻き」「肉汁水餃子」（各300円）など中華に力を入れています。また、店長いわく「全店舗のメニューをみると、〆の麺類がないなぁと思いまして…」と「辛麺」（700円）も出しています。「ジムビームハイボール」（330円）など、ドリンクは立ち飲み価格で安めの設定です。

どのお店も魅力あふれる料理に加え、店主やスタッフの人柄もよく、これは各店ハシゴしたい！と思いました。「1人でも、カップルでも、友だち同士でも、また家族連れでも、いろんな人たちにそれぞれで楽しめる、いつでも来たくなるような場所を作りたかったんです」と横丁運営者の松尾さん。「お店をハシゴすることで、新しい味、そして人と出会えます。様々なタイプのお店が集まっているので、好みや世代を超えた交流が生まれればいいなと思います」と話します。

１カ所に腰を据えていろいろ味わうもよし。席が空いていれば各店を回るもよし。とにもかくにも、労せずしてひとところでいろいろな味や料理を自分流に楽しめる、まさにパラダイスのような横丁です。