日々是食欲

星の数より、相性を大事にしたい

2019年07月30日 12:00 by 弓削聞平

2014年に「ミシュランガイド」の福岡・佐賀版が出て、今月5年振りに福岡・佐賀・長崎版が発売になった。本が発売になると、今回もあそこが載ってないとか、あそこが載るとは…というような声が聞こえてくるが、それは仕方のないこと。お店の好き好きは主観的なものだから。もちろんそうはいっても、できるだけ客観的に「おいしい店」という基準を示そうと調査員たちは日々お店を巡り評価するわけだけど、すべての人が納得する評価なんてありえない。それはぼくもわかっているんだけど、前回のときは「えー、あそこもあそこも載ってない」という印象が強く、当時編集長をやっていた「ソワニエ」で「ミシュランに載ってなかったけど、私この店大好きです」という特集をやったくらいだ。しかし、あのときに比べると今回は「えー」という印象はそんなになく、よく調べてるなぁというのが正直な感想だ。もちろん多少はぼくの印象と違うところもあるけれど、それは前述のとおり仕方のないことだ。

 

 

前回ぼくにとって、いや福岡のグルマンたちにとって、一番の「えー」は西中洲の「Goh」が星どころか掲載すらされてなかったことだ。その時点でも「Goh」は毎日満席の人気店だからミシュランの調査員が知らないわけはない。しかし、当時シェフは「調査にも来てないと思う」と言っていた。地元の人気店で、同じように「来てない」といっていたところはぼくが知ってるだけでも数軒ある。ただし、来てるけど気づいてないという可能性もなくはない。実際、星を取った店で、調査員が回っているのは知っていたにもかかわらず、まったく気づかなかったと言っていたレストランオーナーもいるし。その後「Goh」は「アジアベストレストラン50」に3度もランクインしたので、さすがに今回載らないということはないだろうと思っていたら、やはり1つ星を取っていたのでよかった。

多くの客の「いい店」の評価というのは、みんなにとっていい店ということより、自分にとっていい店かどうかだ。自分に合う店をどれだけ見つけられるか、そしてそこといいおつきあいができるかというのが大事だ。先週行った居酒屋さん、今週行った寿司屋さんに餃子屋さん。いずれもミシュランには載ってないし、きっと調査にも来てないけれど、すごくいい店だし、ずっとおつきあいさせてもらいたいと思える店だ。私的評価ユゲミシュランではビブグルマン確実だな。ガイドブックの星の数より相性、自分の評価を大事にしたいししてほしい。そう思うんです。そう思うんですけどぼくもガイドブックを出すことを生業にしてます。ははは。ただぼくが出すものはランキング(星)はつけてないし、いい店は全てもれなく載せてますというスタンスでもない。先にも述べたように、読者が自分の気に入る店を知る入口になればいいなと思ってます。

取材・文:弓削聞平
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