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連続アジフライ小説~アジフライに恋して~第2話「彼女とアジフライが好きな理由」

2018年08月23日 12:00

連続アジフライ小説~アジフライに恋して~第1話「人気者の彼女とアジフライ」はこちらから≫

女「このアジがいいね!」

と、彼女が言ったから、この日はアジフライ記念日になった。俵万智の『サラダ記念日』よろしく、彼女は旅の疲れを癒すようにアジフライを食べながらビールを飲んでそんなダジャレを言うほどに上機嫌だった。もちろん僕も右に同じだ。

女「ね、松浦いいところでしょ?」
男「最高!どこいってもごはんが美味しいし、海きれいだし」
女「天気良かったしね」
男「ふふ、天気は松浦関係ないけどね」
女「ふふふ」

頰を赤らめて笑う彼女がとても可愛かった。

ー話は、昼にもどりー

昼過ぎに松浦市に到着した僕らはまず、松浦市魚市場内にある『大漁レストラン旬(とき)』で『旬あじ定食』を食べた。脂の乗ったアジのお刺身とアジフライのついた定食だった。お腹がいっぱいになった僕らはそれから福島という島の海に向かった。

福島町の初崎海水浴場でのんびり海を眺めてながら砂浜を散歩しながら、少し海に入ったり貝殻を拾ったり写真を撮ったり、そんな恥ずかしいくらい恋人らしいことをして、それから土谷棚田を見に行った。美しい曲線を描きながら海岸まで伸びていく棚田は、夕景になると幻想的に美しかった。インスタ映えするなあと言い掛けたけど、なんだか恥ずかしく思えて口をつぐんだ。そして夕日が沈んでいくのをじっと見ていた。

それから松浦に戻って鶴屋旅館について、夕食にまたアジフライを食べながらビールを飲んだ彼女が『このアジがいいね』と言った、いまここ、といったところだ。

女「ああ、好きだ」
男「え?」
女「アジフライとあなたが好きだ」
男「うれしいけど食べ物と一緒にされたなあ(笑)」

彼女はお酒を飲むと少し饒舌になる。

女「ねえ、どうして私と付き合ったの?」

周りに人がいても多少のことは気にしなくもなる。

男「それは、……好きだなと思ったから」
女「どういうところが?」

ドキッとした。女の子のこういう質問に何て答えたらいいのかを僕は知らなかった。そんな技量を持ち合わせてはいなかった。

男「えーっと」

えーっと、がもう良くないのは分かってる。すぐに答えるべきだ。だけどうまく答えることができない。僕は彼女のどういうところが好きなんだろう。顔?性格?話が合うから?趣味が合うから?彼女が美人だから?人気者だから?誰もがうらやむ彼女を連れて歩けるから?彼女の好きなところを考えると、自分が嫌な奴に思えてしまう。ほんとのことを言うと、理由なんてない。好きだからだ。好きなものに理由なんてない。理由をつけて説明しようとすると嘘臭くなってしまう。僕はアジフライが好きだけど、好きだからとしか言いようがないんだ。好きなものに理由なんてない。とか考えてると答えに窮してしまいー

女「答えられないの?」
男「いや、えーっと、一緒にいて楽しいところかなあ」

それくらいのことしか答えられなかった。

女「ふふ、そうやって一生懸命考えてくれるところが私は好き」

そう言ってニコッと笑うと彼女はまたアジフライを食べた。そしてビールを飲むと泡ヒゲを作って、またニコッとした。それがとても可愛くて僕は思わず『か、かわいい』と言ってしまった。そして彼女とアジフライが好きな理由を考えていた。


続く

連続アジフライ小説~アジフライに恋して~第3話「旅の終わりとアジフライと」はこちらから≫

ライター:石田剛太(ヨーロッパ企画)
俳優/ラジオパーソナリティ
'79年愛媛県生まれ。'99年に第2回公演よりヨーロッパ企画に参加。以降、全作品に出演。
舞台や映像作品やテレビ番組の出演に加え、ラジオパーソナリティや脚本家としても活動中。
主な出演作品:舞台「続・時をかける少女」(ニッポン放送/ぴあ/イープラス)、
「芝浦ブラウザー」(東京グローブ座+パルコPRESENT)、映画「パンク侍、斬られて候」
「鍵泥棒のメソッド」「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる野望」、テレビ「ヨーロッパ企画の暗い旅」(KBS京都/tvkテレビ神奈川)ほか

連続アジフライ小説~アジフライに恋して~1話はこちらから↑↑↑


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