日々是食欲

飲食店での愉しみは料理とお酒と……

2011年11月11日 08:00 by 弓削聞平

 現在(11/10)発売中の「ソワニエ」の特集テーマは「小バコ」だ。そもそも「大バコ」「小バコ」ということばがどれくらい一般の人に通じるものなのかわからないのが、「小バコ」といえば、店が小さく、収容人数、つまり席数が少ない店のことを指す。この特集では目安として15坪、20席以下というのを1つの目安にした。
 ここのところ「バル」という業態が全国的に増えているのだが、これも多くは小バコである。1つにはカジュアルに手頃なワインと料理を楽しみたいというお客側の業態的ニーズもあるし、逆に店を出す側からすれば、開業資金的な問題、そして人件費コストを踏まえると小バコでできる業態は魅力的なわけだ。
 そもそも大バコより小バコの方がおもしろい店が多いのは今に始まったことじゃない。多くのお客を集めなければならない大バコはどうしても最大公約数的な運営をせざるをえないが(その典型がファミリーレストラン)、小バコの場合そうではないので店主のこだわり、趣味を店に反映しやすい。この号が出た後、春吉にオープンした「RINGA」はニュージーランドワイン専門のバーだが、こういうのはまさに小バコじゃないとありえない。
 ふと気づいたのだが、そういえばぼく自身もなじみの店は小バコが多い。「新川コテージ」「ちろり」「築地」等々(それも「ソワニエ」に掲載してます)。それは店との一体感というか、一種、スタッフの部屋に遊びに行っているような雰囲気を楽しんでいるからに違いない。そういう店は常連率も高く、その常連たちとも顔なじみになるので、友達の部屋に皆で集まっているいわゆる部屋飲みあるいは部室的な感覚になる。しかもほんとの部屋飲みだったら、準備したり片付けたり、お酒をついだりしないといけないが、もちろんそれもない。ま、お金は払うわけだが……。
 飲食店に出かける目的といえばおいしい料理を食べにいく、おいしいお酒を飲みに行くというのが真っ先に挙がってくるが、店の人、お客とのコミュニケーションも飲食店の愉しみということを知ると、外食生活は一層楽しくなるに違いない。

取材・文:弓削聞平
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