まち | ひと
社会問題をビジネスで解決する【TABLE SESSION TENJIN vol.06】
2021年07月12日 18:00 by はたゆう
“まちづくりは人のつながりづくり”をコンセプトにした未来のまちづくりにつながる場「URBANG TABLE」。チャレンジを支援する事も、「URBANG TABLE」のコンセプトの一つ。今回は、年間10を超える事業が立ち上がる株式会社ボーダレス・ジャパンの代表 田口一成氏を招いて、社会起業家のチャレンジを支援する仕組みについてトークが行われました。
株式会社ボーダレス・ジャパン代表の田口一成氏は、25歳の時に独立し、ボーダレス・ジャパンを創業。15年経った現在では、世界15ヵ国で40のソーシャルビジネスを展開しています。従業員は約1500名、グループ年商は55億円を超えます。
様々な社会問題をビジネスで解決する同社は、「グッドデザイン賞」や「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」を受賞。個人としても、ForbesJAPAN「日本のインパクト・アントレプレナー35」、日経ビジネス「世界を動かす日本人50」などに選出されています。
●株式会社ボーダレス・ジャパンとはどんな会社なのか?
貧困問題、地球温暖化、限界集落、人種・性差別、難民問題など、様々な社会問題を解決する“ソーシャルビジネス”を行っている会社です。そもそも社会問題を解決させるのは、国や政府ではなく、ビジネスマンこそ挑むべき仕事であると考え田口氏は会社を設立。
一つでも多くの社会問題を解決するために、世の中の社会起業家を増やしていく。そんな想いから、社会起業家の為のプラットフォーム(ノウハウ、資金、人材など)を提供し共有し合う関係性をボーダレス・ジャパンで作り、日々様々なトライをしならが運営していると語ります。
●取り組んでいる事業
2019年には、1年間に16社が誕生。日本にいる難民を正社員として雇用しパソコン再生を行う事業、海外の貧困家庭の女性達に資金と養鶏の仕事をセットで託す事業、ホームレスを専門にした再就職支援など、手がける事業は多岐にわたります。
成功した事業の一つに、障碍者を健常者と変わらない賃金で通常雇用する「UNROOF」というプロジェクトがあります。革製品を製造販売する事業で、精神・発達障害の方が革工場で働きながら一流の革職人へと育っており、今も成長の可能性を広げています。
このような、多くの社会ソリューション、成功ビジネスモデルが社会には必要。では、どうしたらそれらを、多く生み出し、そして世界に広げるていけるのか?そう考え続けて日々ボーダレス・ジャパンは変化しているのだそう。
●社会起業家を多く作る仕組み
入社後1年間の修業の後、1000万円の資金を元に実際に起業し自立支援を行います。その後、経営が軌道に乗った後も、人事、労務、総務、経理などの経営支援を受けることができるそう。ほとんどの事業が上手くはいかないが、それでもいいのだと田口氏は話します。起業して身につく力は、やはり全然違っていて、そういった経験は起業家育成にとって、とても良いプログラムなのだそう。
●事業ノウハウを広げる仕組み
世の中にいいアイデアは沢山あるのに何故広がらないのか?
数年かけてやっとの思いで作り上げた事業のノウハウを、他の人へ託したくなる仕組みを考えた時に、ノウハウを託す相手を身内化(財布を同じにする)することで、広げられるのではないか、そんな仮説をボーダレス・ジャパンでは実験的に行っています。
具体的には、各事業の余剰利益をグループ全体で共有。その集まった余剰利益の使い方を全グループ会社の社長の合議制(多数決ではなく満場一致で可決)により決定する。つまり、この余剰利益は、新たな社会起業家の創業資金や運営資金になります。きっと、黒字化した起業家達はサポートしてくれた感謝の気持ちから、自分も次の起業家達の世代へ恩返ししたいと思うのではないか?恩返しではなく次の世代へ恩を送る、まるで自然の循環のような仕組みを“恩送り”と田口氏は表現。そんな相互扶助のシステムが大きくなる事で、本来クローズドしていたアイディアやノウハウが引き継がれたり広がったりするのだと語ります。
●どういうシステムがあると社会がよくなるのか?
参考にしたのは“芸人”。いい会社が増えると、いい社会になる。沢山の社会起業家が誕生する社会システムを考える中で参考にしたのは吉本興業の芸人養成所NSCだったそう。弟子入りして芸人を目指す方法ではなく、NSCに入ってみて芸人を目指すか、他の道へ進むかを決める。
社会起業家も同じと考えた田口氏は、ボーダレスアカデミーという社会起業家としてチャレンジできるソーシャルビジネススクールを立ち上げました。今では300人以上が卒業しています。
●悪化の一途をたどる地球温暖化
今回一番聞いてほしいと強く押したテーマが地球温暖化。他の社会問題は徐々に良くなっているが、この問題はタイムリミットがあり、CO2排出を2050年までに実質ゼロ(森林がCO2を吸収する量とを差し引いて)にしないと、不可逆(地球がもとの状態戻らないこと)になる。それを達成する為には、逆算して2030年までにCO2を半分にしないと絶望的なのだそう。
今回のコロナによる経済活動の低下で削減されたCO2は年間8%ほど。このペースで減らしてやっと2030年に半分になるのです。これまでの生活をしていて達成できるものではなく、抜本的に変えないといけないと話します。
また、日本の排出しているCO2の40%は発電によるもので、8割は火力発電、車の排気量は17%ほど。そして、家庭から排出されるCO2の半分は電気から発生します。そんな中、どうしたらCO2を減らせるのか?そう考えた時に、みんなが火力発電からCO2を出さない太陽、風、水力等の自然エネルギーへ切り替えたらいいのではと思い、「ハチドリ電力」を立ち上げたのだそう。
●100%自然エネルギーの「ハチドリ電力」とは?
CO2ゼロの実質自然エネルギー100%で、電気代の1%を再生可能エネルギーの発電所の新設費へ使われ、更に1%を社会活動団体を選んでへ寄付することができます。尚且つ、電気料金は大手電力会社よりも安いのだそう。
↑「ハチドリのひとしずく」という物語から由来。みんなが、まず出来る事をしないと未来は変わらない、そう熱く語ります。
しかし、今年に入って起きた電力の市場価格の高騰では、利用者に高騰した料金を請求することなく、その分をまるまる被り大幅な赤字に。グループの社長会では、誰一人その決断に反対しなかったというから驚きです。そもそも、この事業は利益がほとんどなくリスクが高い事業。それでも、誰かがこれをしなといけないという使命感でやっているのが伝わります。
毎月届く利用明細には、実際に貢献したものが数値化されていて(今月CO2削減量など)利用者からは明細書が届くのが楽しみ、といった声も。
メリットしかない!ハチドリ電力はこちら↓(スマホからチェック!)
https://hachidori-denryoku.jp/
賃貸マンションはほぼ現在の電力会社から変更できるそう。
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社会問題を解決する視点をここまで自分のこととして捉え、解決する仕組みを真剣に考え実行している企業がある事にとても感銘を受けました。会社の利益や売上以上に社会をよくしたい、そんな意識を私達一人一人が持つことで、未来を変えていけると思いました。
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●youtubeからのコメント・質問
Q&A『大きなまちや企業などが新しいことを始める土壌をつくるにはどういったステップを踏むのがよいのでしょうか?』
▼田口氏
失敗し続けられる環境を作る事が大切です。個人リスクを無くしチャレンジできる事が重要で、私利私欲のためのトライは自己責任だと思う。地域や社会を良くしようとしている人が個人でリスクをとってビジネスをするのではなく、地域の人や同じ志を持った人に賛同してもらい、連携し資金面でも広く集めて進めてみては?
Q&A『チャレンジしたくなるマインドとは?』
▼田口氏
起業については、無理やりではなく、好き好んでやることが大切。やりたい事があり、足踏みしている人の背中を押すくらいの接し方が大切です。
Q&A『この仕組みが大きくなると、関わる人が多大になり、身内化という関係性が少し薄れてしまうのでは?その対応策や「身内化のデメリット」、身内化のその先の形はありますか?』
▼田口氏
2025年までに、年間100社立ち上げる体制を作るのがチームの目標で、顔の見える関係が命題になっていて、実験的に日々仕組みを変えています。今の時点では、議題を自分事として捉えるための軸となる合議制は維持しつつ、全員合意が成り立つサイズ感を考えています。例えば農業分野といったカテゴリごとのグルーピングの中で、合議制を取る。そうする事で、より深くなり精度を上げていくことができる。また、違うカテゴリーとも別軸で関わる仕組みを考えないといけない。
イベントの詳細は下記youtubeからチェック!
▼Youtube
https://www.youtube.com/watch?v=quHcf9ifjUI&t=2161s
▼Facebookページ
https://www.facebook.com/urbangtable
▼Twitter
https://twitter.com/home?lang=ja
▼公式サイト
https://tenjinsite.jp/urbangtable
取材・文:はたゆう
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