天神ワーカーに密着取材

「話す」「整理する」を同時に実現 コミュニケーションの課題を解決するカード型チャットツール

2025年03月11日 11:00 by はたゆう

postalk株式会社    川野 洋平さん
【福岡市トライアル優良商品】postalk(ポストーク)

アイデアや情報を簡単に視覚的に共有しながら整理することができるWebサービス『postalk』。デジタルのホワイトボードに付箋をペタペタと貼りながら「話す」と「整理する」をWeb上で同時に行うことができるツールです。2021年に『postalk』をリリースし、スタートアップのトップランナーに話を聞く「スタートアップ屋台」を主催するなど積極的に活動するpostalk株式会社 代表 川野洋平さんにサービス誕生までの過程や現在地、これからの展望を伺いました。

「今はこんな感じですけど、僕は幼少期から人とのコミュニケーションがとても苦手でした。小学校から友人との関係がなかなかうまくいかず、孤独を感じることも多かったように思います。そんな中、15歳くらいの時にジミ・ヘンドリックスのギターに出会って、ブルースやジャズを知ったんです。「こんな格好いい世界があるんだ」と雷に打たれたような衝撃を受けました。同じ左利きっていうのもなんだか嬉しかったですね。

そこから学校帰りにこっそりライブハウスに通うようになりました。年齢をごまかすために学校のブレザーをカバンに隠して。周りの人達はわかっていたと思うけど、そっとしておいてくれたんだと思います。年上の方ばかりでしたが、僕みたいな若造にもとても優しい人達でした。それは僕にとって初めて人に温かく受け入れてもらえた経験で、そこにいる時だけは孤独を感じることはありませんでした。でも、ライブハウスを一歩出ると、同世代の友人とのコミュニケーションはやっぱり苦手なままでした。

ブルースやジャズを通してできた友人と交流する中で「もっと人と話したい、深く関わりたい」という思いが強くなりました。僕のような人間が、自分の気持ちや考えを相手に伝えるためにあったらいいなと開発したのが『postalk』です。ポイントは視覚的に振り返りながら考えの整理ができること。コミュニケーションが苦手だった昔の経験が原点になっています」

「音楽一辺倒だった僕がスタートアップに挑戦しようと思ったのは、プログラマーをしていたバンド仲間からスタートアップの本を借りて読んだこと。「ブルースやジャズも格好いいけど、スタートアップもめちゃ格好いいじゃん!」と感じたのがきっかけでした。」

「2013年に福岡でスタートアップを立ち上げて、バックエンドサービスの売却も経験しました。福岡に戻ってきてからは「fgn」の職員として、今度はスタートアップで頑張る皆さんを支援する側として働き始めましたが、サポートしているうちにだんだん「やっぱり自分で何かを作りたい」という思いが再燃してきて…。そこで、2021年に『postalk』をリリースし再びスタートアップの現場に戻ってきて今に至っています」

「今は一人で運営をしながら、外部のエンジニアにサポートをしてもらっています。「fgn」では同じスタートアップの人達と悩みを共有しながら励ましあっています。皆さんの活躍がいい刺激になっていますね。」

「気分転換にランチに出かけたりすることもあります。おすすめは親戚が営んでいる新天町の「鮨金」さん。天神のど真ん中なのに手頃な値段でお寿司がいただけることと幼い頃から変わらない雰囲気が落ち着きますね。1階も活気あっていいですが、2階でゆっくり地元のお客さんが昼間から飲んでる感じなんかが好きなんです。「fgn」の新年会などでも利用していただいています」

マインドマップのように整理しながら
視覚的に情報を管理できるチャットツール

2024年、福岡市トライアル優良商品に認定された『postalk』は、ホワイトボードに付箋を貼ることに特化したコミュニケーションツールです。チャットやメールでは伝わりづらいニュアンスを、付箋を貼り並べ替えたり整理することで可視化・構造化することができます。ChatGPTやWhisperのAIを活用し、会話の要点からホワイトボードを作成する「postalk with」や、ホワイトボードの内容から自動的に議事録やタスクを生成することができる「postalk letter」など、便利でコミュニケーションがさらに活性化する機能をリリースし続けています。

『postalk』の背景には、僕自身が感じていた既存のコミュニケーションツールへの違和感があります。チャットツールではメッセージが流れてしまい後から見返すのが難しい、メールなどのテキストのやり取りでは、会話の構造が見えづらく意図が伝わりにくくなるため結果、誤解が生まれやすい、などの課題を解決するために、視覚的に情報を整理できるツールを作ろうと思いました。

コロナ禍の中では、大学のゼミなどで活用をいただいていました。オンラインで繋がった学生同士が『postalk』を介してディスカッションをしながら情報を整理するのに役立っていたようです。普段は、発言の少ない人も意見を付箋で貼り付けるなら参加がしやすいなど、運用の中で気がついたこともありました。

また、人が思考し考え精査をすることに価値があると思っているので、付箋を整理し並べ替える過程にはあえてAIなど自動化できるシステムを入れていません。「自動化すればいいじゃん」と言われるのですが、そこは手跡が残るようにしています。

現在は、税理士の先生や士業の方々に好評いただいています。例えば、年末調整や確定申告など業務が毎年繰り返されるような場合、慣れている人にとっては当たり前の作業も、一年に一度のことだとやり方を忘れてしまうことがあります。士業の先生方からすれば、毎年同じ質問をされるなどご苦労があるようです。そんな時に『postalk』を開けばどこに必要なデータが格納され、何をすればよいかを視覚的に確認することが可能です。

AIの技術や発展は目覚ましいものがありますが、僕はAIはあくまで補助ツールであり、主体は人間であるべきだと思っています。『postalk with』という機能では2種類のAIを使い、会話を自動でテキスト化しながら、要点を整理し、視覚的に表示をすることができます。コミュニケーションを重ねた先に、人と人との関係性を深めるためのツールとして『postalk』が活用されると嬉しいですね。

これからも、スタートアップ、ビジネス、クリエイティブの観点から、よりよい商品を生み出していきたいと思っています。

 

「postalk」に関するお問い合わせは
株式会社postalk まで
https://postalk.app

 

取材・文:はたゆう
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