グルメ | 新店舗オープン

料理も器使いも一皿一皿がつつましやかに美しい、11品の和食のコース

2020年01月16日 12:00 by 木下 貴子

桜坂の住宅街の裏通りに密やかに建つ「吉田ハウス」には小さな、しかし個性溢れる店が集結しています。その一角に、12月に新しく和食店『桜坂 拓』が誕生しました。


気品あるシックな佇まいです。店内はシンプルで落ち着つきのある雰囲気の中、木の温もりも感じられます。


カウンター4席、テーブル6席の小さな店。「自分の目が生き渡るくらいのスペースが良くて」と店主・樋口拓郎さんは、カウンター越しにお客の食事のペースを確かめながら、適度なタイミングで料理を出していきます。


料理人になったきっかけをうかがうと、「妻が食べることが大好きだったんで…」とはにかみながら樋口さんは答えてくれました。奥様がとりわけ海鮮が好きだったためまず和食から料理の世界へと入りました。「石堂橋 白つぐ」で5年修業した後、他のジャンルも学びたいとフレンチなどの洋食でも修業を重ね、念願の独立を果たしたのがこの『拓』だと話します。

気さくにお話してくださる樋口さん。和食というとちょっと気構えてしまいますが、いい塩梅で緊張をほぐしてくれます。


料理は5,500円のコースが用意されており、アラカルトはありません。女性のお客をメインターゲットとして考え、「少しずつ、いろいろな料理を楽しんでいただきたい」と、一口二口サイズの料理11品でコースを構成しています。「和食はやはり季節感が重要ですから」と旬の食材を主体とし、月替りでコースの内容を変えているといいます。

以下、写真はすべて1月のコースより。
最初に、すり流しを必ず出しています。1月は黄緑が艶やかなロマネスコのすり流しです。


器使いにも注目を。『拓』を開くにあたって、樋口さんは九州を中心に、若手作家の器を集めたそうです。すり流しの木の器は石川県の作家によるものです。シルエットの美しさはもちろん、手にもった時のフィット感と温もりは秀逸です。


八寸は、昆布に漬け込んだカブで包んだカラスミ、イイダコの桜煮、クワイ、ちしゃとうの味噌漬け、熟成鯛の握りです。


クチナシで黄色に色づけされたクワイ、門松に見立てたちしゃとうなど、新年らしい華やかさが演出されています。


次はお造り。手前はハモかと思いきや、穴子でした。今の時期抜群に美味しいという対馬穴子を骨切りし、湯引きにして出しています。奥は高級魚アラの炙り。このちょっとした贅沢感が嬉しいですね。


焼き物はサワラです。できるだけ地物を使いたいという樋口さん。添えられた野菜は、糸島産の有機野菜を使用しています。


サワラは焼き過ぎるとパサつくし、レアすぎると箸が通らないので、幾度も試作を繰り返したそうで、絶妙な焼き加減です。


料理は他に、椀物、揚げ物、肉の炭火焼、土鍋ご飯が出てきます。そして最後のデザートは、なんと和と洋の2皿を出してくれます。

和菓子は練り切りで、1月は深紅のダリアを表現。そういえば、店内の奥にダリアも活けられていました。粋な計らいですね。


細やかな細工の見事な事。じわじわと掴まれてきた心が、ここで一気に鷲掴みされます。


さらにとどめの洋スイーツの登場です。月替りの自家製フルーツチップを使用するというスイーツは、今月はイチゴです。カスタード・イチゴ・ヘーゼルナッツのムースを飴でドーム状に包みこみ、上にヘーゼルナッツのアイスを乗せ、イチゴのチップをあしらっています。洋食で培った経験がここで発揮されていますね。


コースを5,500円に設定した理由として、「1万円以上出さないと本格的に味わえない和食店が多いのですが、それだとご年配の方や富裕層の人々など限られてしまいます。この値段設定だと広くご利用いただけますし、和食を知る入口として使っていただけたら」と樋口さん。「またコース1本に絞ることで、より一皿ずつ手がかけられるんです。逆に絶対外せないプレッシャーは大きいのですが…」。料理好きな奥様のために料理人になった初心を忘れず、いまはお客様に向けて日々次の料理を考案されています。

昼も夜もこのコースを基本にしていますが、昼に限って2,200円のミニコースも2月末まで用意されています。また、3月以降はランチとしてミニ御膳や海鮮丼なども考えているそうなので、ぜひチェックしてみてください。

料理とともに楽しみたいお酒も、日本酒1合880円、白ワインがグラス660円・990円、ボトル3850円・6,050円など明朗会計。コース仕立てで種類豊富に上品に、しかもけっして高額ではない価格帯で、本格和食を存分に堪能できます。

取材・文:木下 貴子
このライターの他の記事を読む

プレイス情報PLACE

桜坂 拓

住所 福岡市中央区桜坂2丁目7-11 吉田ハウス1F
TEL 092-401-0200
営業時間 12:00~15:00/18:00~22:00
定休日 水曜
PAGE TOP