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つむぐ想い。つなぐ未来。conext:vol.4 野村祥悟さん

2016年10月21日 18:00 by 山内淳

CONEXTはアクションを起こしたい人たちに贈る情熱伝播サイトです。自分らしくカッコよく生きる大人たちはどのように働いているのか、なぜいつもやりがいのある現場にいられるのか、どうしてやりたい仕事が巡ってくるのか。一方で夢を追う若者たちは何を考え、今、どのように行動を移そうとしているのか。そんな大人と若者をCONNECT(繋ぎ合わせ)して、NEXT(次)ステージへ。


ラジオ番組の制作ディレクターにアーティストのプロデュース。野村祥悟さんのお仕事で共通しているのは、“福岡発信”というところ。東京のラジオ局や大手プロダクションではできない、自由な発想から生まれる活動が注目されています。自分の「おもしろい」を信じて制作した番組やプロデュースしたアーティストは、福岡の“いま”を映す鏡なのかもしれません。

―― ラジオディレクターってどんなお仕事ですか?

しゃべり手に向かって、ガラス越しに指示を出したりするのが基本的な仕事です。あとは原稿を書いたり、選曲したり、番組の大枠を作っています。東京や大阪では構成作家が台本を書き、ディレクターが番組進行をして、ミキサーが機材類を操作する、というように分業しているらしいですが、福岡のような地方局ではディレクターが1人で全部やることが多いです。

―― これまでの経緯を教えてください。

23歳の頃に「LOVE FM」でバイトを始めたのが原点です。その後、「エフエム佐賀」や「RKBラジオ」など、いろんな放送局でラジオ番組を制作してきました。その中で音楽関係者との交友関係が広がり、アーティストのプロモーションを手伝うことも増えてきたんです。ただ、フリーランスのままだと取引できないことも多々あり、法人化する必要がありました。それで、昨年音楽プロダクション「C.I.T.Y.」を設立したんです。

―― 現在はどんなお仕事をなさっていますか?

カフェ「STEREO」(大名)の渡辺さんとレコードショップ「PARKS」(荒戸)の松尾さんと3人でラジオ番組をしています。「このバンドがいいよ」という情報を共有してイベントを開催したり、アーティストのプロデュースを行ったりしています。

↑ALTER EAGO

―― プロデュースするアーティストはどのように発掘するのですか?

今はまだ友達や知り合いがほとんどです。僕らが開催したイベントに出てくれた人や、DJをしている友達のパーティに出ていた人、バンド活動をしている学生などが多いです。まだまだ知られていないアーティストが福岡にはたくさんいます。彼らを多くの人たちに知ってもらえたらいいなと思います。

―― 野村さんのプロデュース術を教えてください。

特別なことは何もしていません。僕ができる範囲のことをしているだけです。例えば、「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」や「ミュージックステーション」に出たいってアーティストに言われても何もできないけれど、「LOVE FM」や「ミュージックシティ天神」に出たいって言われれば僕でも力になれます。CDを全国流通させたいとか、「タワーレコード」にCDを置きたいとか、福岡が地盤でも行えることが中心。僕ができるのはきっかけ作りで、アーティストの活動を後押しすることです。

―― 制作協力に「ikkubaru(イックバル)」(※)がいるのはどうしてですか?

著作権の問題で、「JASRAC」に登録の楽曲以外は、それぞれ承諾を得ないとラジオで流せないんです。僕が担当している番組は「JASRAC」に登録のない特殊な曲をかけることが多くて、直接アーティストにメールをして楽曲使用の交渉をすることもあります。彼らはインドネシアのバンドなのですが、「君たちの曲をかけたいんだけど、いいかい?」とメールを送ったところから交流が始まりました。「ikkubaru」が来日した際は福岡のライブは僕らが仕切ったり、新曲が送られてきたらラジオでかけたりしています。大阪に「ikkubaru」の日本での活動を担当している方がいらっしゃるのですが、彼と画策して「ikkubaru」の曲をアイドルに歌わせてみたり――。むしろ色々と助けてもらっています。

※ikkubaru:山下達郎や角松敏生など1980年代のシティ・ポップに影響を受けた、インドネシア出身のシティ・ポップ・バンド

Music写真
Mario_luengo - Freepik.comによるデザイン

―― そもそも野村さんがラジオにハマったきっかけは何ですか?

やはり「オールナイトニッポン」ですかね。僕が子供の頃は、スマホはもちろん、自分の部屋にテレビがない時代でした。なので、夕食のあとは部屋でラジオをよく聴いていました。でも大学生になると、ほかの遊びも増えてラジオをあまり聴かない時期もあったりして……。そして、社会人になってまたラジオを聴き始めるようになり、そのおもしろさを再認識しました。ラジオの仕事を始めるようになったのも、ちょうどその頃です。

―― どんなところに仕事のやりがいを感じますか?

自己満足の世界ですが、自分自身がおもしろいと思える番組ができた時です。そんな番組がほかの人からも「おもしろいね」とか、「いいね」と評価されたら最高です。

―― 企画は野村さんの持ち込みですか? ラジオ局から要望があるんですか?

なんていうか、僕の企画はエイリアンみたいなものです。徐々に自分のカラーを出して浸透させていくんです。エイリアンがこっそり卵を産んで、こっそり孵化させていくような感じかな(笑)。趣味性の高いものが受け入れられるラジオは、テレビよりも恵まれている環境だと思います。もちろん、発注があればマニアックな番組でなく、大勢が楽しめる番組だってバシッと作りますよ。

―― これまで失敗したことや、苦労したことは?

ラジオは失敗が日常茶飯事。失敗を次に活かしていく、スクラップ&ビルドの繰り返しです。アーティストに対して僕ができることは、東京へ進出するまでのお手伝い。無理にアーティストを東京で成功させよう! とするとうまくいかないのかな…と思います。

―― 今も変わらない信念はありますか?

「自分がいいと思ったものを紹介する」というスタンスは昔から変わりません。でも、「このアーティストはこんなところがいい」と、自分の考えを前面に出さないようにしています。なるべく先入観を持たずに聴いてほしいんです。僕がいい! と思うこと以外にも、それぞれのリスナーさんが感じる“いい部分”はたくさんありますから。プロデュースに関しても、アーティストに「君たちはこういう風になるべきだ」なんて言うことはなくて、アーティストのやりたいことを尊重して、そのためにはどうすればよいかをアドバイスしています。

↑colteco

―― プロデューサーがアーティストの方向性を決めるんじゃないんですね。

人それぞれだと思います。東京はアーティストの数も多いので、トガってないと埋もれてしまう気がします。福岡はもうちょっと牧歌的に活動できるのがいい部分かも。無理してトガらなくても、自然体で好きなことができる土地だと思います。

―― 今後のラジオはどうなると思いますか?

今はradiko(ラジコ)で全国のラジオ番組がどこでも聴けるようになり、まだ実験段階ですがSNSで共有してタイムフリー聴取が可能なシェアラジオも始まりました。これまで全国で放送される番組は東京発信だけだったけど、ラジオの地域差が取り払われるので、今後は地方発信の全国番組が増えると思います。「福岡のソラリアプラザ1階にあるLOVE FMパークサイドスタジオからお送りしています――」みたいな。

―― 今後どんな番組を作りたいですか?

福岡のアーティストを全国区に押し上げ、音楽をベースとした福岡のシーンを全国でも取り上げてもらえるようにしたいです。そうなれば福岡から発信する音楽番組は、もっともっと作りやすくなると思います。なんでも東京の流行を追うのではなく、福岡発のムーブメントを全国に起こしたいですね。

↑STEPHENSMITH

―― 20歳の頃に戻れるなら、何をしておきたいですか?

「あの頃やっておけばよかった」と思うようなことは全部やってきたので、特に思い当たりません。これまでの経験値が積み重なって、今の自分があるから。今と同じことを20歳の頃にしても、決して成功しないと思います。

―― 若者と一緒に働くならどんな人がいいですか?

自ら「やりたい」と手を挙げて飛び込んでくる人がいれば、どんな人でも構いません。実際に仕事をしてみて、どうモノにするかはその人次第です。僕に限らず30代、40代の人は、もっとガツガツ来てほしいと思っている人が多いんじゃないかな。「こんな番組をしたいから、こんな人を紹介してほしい」とか言われた方が力になれます。僕を踏み台にしてほしいですね。受け身でいては何も傷つかないけど、何も得るものがないままだと思いますよ。

 

野村祥悟 Nomura Shogo
1984年、福岡生まれ。音楽プロダクション「C.I.T.Y.」CEO兼プロデューサー。大学卒業後、23歳の頃に「LOVE FM」でアルバイトを始め、ラジオ番組の制作に携わるようになる。その過程で出会ったアーティストのプロデュースやレーベルの立ち上げに際して、2015年に「C.I.T.Y.」を設立。カンバス、colteco、about a ROOM、STEPHENSMITHといったバンドからStereo fukuoka、浦郷えりかなどアイドルまでに関わる。

●C.I.T.Y.
https://city.amebaownd.com/

カンバス ワンマンライヴ~アイランド~

会場LABO by CODESTYLE(薬院)
期間2016年10月29日(土)
時間開場:20:00/開演:20:30
チケット:前売り 2,000円/当日 2,500円(どちらもドリンク別)
チケット予約:https://tiget.net/events/6720

NEW TOWN

会場Peace(荒戸)
期間2016年11月12日(土)
時間開場:17:00/開演17:30
チケット:前売り 2,500円/当日 3,000円(どちらもドリンク別)
チケット予約:https://tiget.net/events/6599

 

conextに関わりたい25歳以下のヤル気ある男女を募集しています。以下のフォーマットからご応募ください。

 

●取材を終えて
話すほどに伝わってくるラジオ愛と郷土愛。海外アーティストにも物怖じせずコンタクトを取る行動力や、おもしろいことを探求し続ける姿勢が印象的でした。ラジオでもプロデュース業でもサポートに徹する姿は、まさに“縁の下の力持ち”ではないでしょうか。野村さんが手掛ける番組やアーティストが、全国でも人気に火が付く日を楽しみにしています。

取材・文:山内淳
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