ひと

つむぐ想い。つなぐ未来。conext:vol.2 松下由香さん

2016年08月31日 18:00 by 山田 祐一郎


CONEXTはアクションを起こしたい人たちに贈る情熱伝播サイトです。自分らしくカッコよく生きる大人たちはどのように働いているのか、なぜいつもやりがいのある現場にいられるのか、どうしてやりたい仕事が巡ってくるのか。一方で夢を追う若者たちは何を考え、今、どのように行動を移そうとしているのか。そんな大人と若者をCONNECT (繋ぎ合わせ)して、NEXT(次)ステージへ。



世界7カ国で劇場公開された長編アニメーション映画「放課後ミッドナイターズ」をはじめ、3DCGアニメーション、モーショングラフィックスを軸に、実に多様なコンテンツの企画制作を手掛けている「モンブラン・ピクチャーズ」。

そんな「モンブラン・ピクチャーズ」は才能溢れるクリエイター集団。映像コンテンツに関するスペシャリストたちが在籍する職場です。その中にあってひときわ異彩を放つ人物がいます。彼女の名前は松下由香さん。長崎生まれ、アメリカ育ちの帰国子女であり、営業、カフェの店長、広報、事務職を経験してきたという異色の経歴を携え、この会社に事務・経理として入社しました。そんな松下さんには、ずっと温めてきた強い思いがあります。彼女の原動力とは。

――事務・経理として入社したんですよね。
はい、元々はそうだったんですが、現在はその枠を越え、幅広い仕事を任せてもらっています。

――現在の肩書きは。
事務・経理をはじめ、海外マーケティング、自社コンテンツの広報、営業など、肩書きはあえてつけていません。モンブランにとって、自分が必要とされるものは何でも関わらせてもらっている感じですね。

――そもそも松下さんのルーツとなる幼少期のお話を聞かせてください。
出身地は長崎です。父の仕事の関係で8才から15才までの7年間をアメリカで過ごし、高校入学時に福岡へ戻り、それからは日本で暮らしています。

――異国の地へ行くことに不安はなかったですか。
当時は、あまり深く考えておらず、不安よりも楽しみのほうが強かったかもしれません。アメリカに行ってからも、当たり前のように現地の学校に通いました。ただ全く英語もできなかったので、授業についていけず、はじめは苦労の連続でした。今でも人生で一番大変だった時期は、8歳の時だと思っています。一方で、アメリカの学校には、多種多様な人種がいて、いろんな考え、文化があり、とても刺激的でした。

――海外生活で得られた最も大きなものは。
自己主張ができるようになりましたね。日本だと授業は、スクール形式の並びで机は全て先生が立つ教壇のほうに向けて並んでいますよね。アメリカだと、いつでもディスカッションできるように、席は生徒同士で向き合っているんです。そういう環境の下で過ごしていると、自ずと主張しなければなりません。また、向こうでは意見を言うと必ず「何でそう考えたのか」という理由を求められます。だから、とにかくよく考えるようになりました。それが良いクセになったと思います。おかげで、人前で自分の意見を述べることを臆すこともなくなり、肝が据わりました(笑)。

――海外での豊富な経験は、社会に出てからも役に立ちましたか。
就職活動時は、周りから英語を活かした外資系などを勧められましたが、英語はあくまでツールであり、仕事は私がやりたいと思えるものと決めていました。ただ、当時は自分の方向性が決まっておらず、まずは会社に収益をもたらす職業に就きたいと思い、営業職を選択しました。英語は全く使わない仕事でしたが、社会人として基盤となる常識やスキルを学ぶことができ、営業という選択肢は正しかったと今でも思っています。



――その後、やりたいことは見つかったのでしょうか。
入社して半年が経った頃、仕事の関係で「ペットの里親募集」という文字に目が止まったんです。恥ずかしながら、法律で犬猫が殺処分されているとは知らず、さらに調べてみると、その要因は一度家族として迎えたペットたちを手放す飼い主ということを知りました。私自身も犬と暮らしていたので、思わず「信じられない!」と声を荒げるほどの衝撃を受けたのを今でも覚えています。

――それからずっと殺処分問題と向き合ってきたのですね。
ペットの社会活動に取り組むNPO法人に2003年から従事しました。そのNPOでは、運営管理や会計といった内側のことから、事務局やボランティアコーディネートなどの外との接点となる役割も経験しました。また、里親募集の役割も果たせるカフェを立ち上げることになり、店長も務めさせてもらいました。

――本当にさまざまな経験を積み重ねています。
専門職以外はほとんど経験したと思います(笑)。ただ、どんな仕事をしている時も、「ペットの殺処分なくす」という目標を基軸にしていたので、常にそれを達成するために必要な職に就いていました。2011年には「いぬねこカウンシル福岡」を設立し、福岡を人と犬や猫たちとが、安全で幸せに暮らせる街にしたいという思いで活動しています。

――なぜ「モンブラン・ピクチャーズ」で働くことになったのでしょう。
それまでずっとペット業界に近い場所に携わってきました。ただ、それではダメだと分かったんです。例えばペットにちなんだイベントを開催するとなると、当然ながらそれに興味を持った人たちが集まります。最初のうちは分かりませんでしたが、段々、同じ面々だけが何度も訪れていることに気が付きました。この問題を解決するためには、多くの人の心に問いかける必要があるのですが、どうすれば伝わるのか、またこのままでは、殺処分問題が仲間内、内輪の話として終わってしまう。そんな危機感を覚えました。

――全く別の業界に身を置く必要がある。
そうなんです。またいつものように、目標を達成するために今足りないもの、必要なものを考えました。そして、一つの答えとして、衣食住は人間の外側を生成している、では人の心は?と考えた時に、「エンターテインメント」だと思いつきました。絵本、音楽、アニメなど、幼少期から私たちはたくさんのエンタメに携わっています。エンタメは人を魅了できる、そして魅了的なコンテンツは、人の心に伝えることができると思いました。それから、私はずっとエンタメ業界に入れる方法を探っていました。そんな最中「モンブラン・ピクチャーズ」との出会いがあったのです。今だから言えるのですが、雇用条件を聞く前から、私は働くと決めていました。幸い、採用していただいたので、感謝です(笑)

――エンタメ業界にはいり、その後は。
エンタメはより多くの人々にいろいろな思いを届けることができます。だからこそ人を魅了させられるコンテンツを作りたい。ただ、作るためには、当然ながらお金が必要です。今は、そこを一番の課題として、自身で制作費を調達できるプロデューサーになれることを目指して、日々奮闘しています。



――今はその過程にいるわけですね。
はい。ここにきて、幼少期のアメリカ経験が大きく影響しています。エンタメは、今や海外との関係性は非常に重要な時代になっています。関係性を構築するためには、言語だけなく、国や文化を超えて、会社間だけでなく、一人の人間としても互いに興味を持ち、友達を世界中につくるつもりでコミュニケーションを取らなくてはなりません。そこについては、私はすでに幼少期から経験しているので、幸いにも自身の個性で順調に進められていると思っています。年間10カ国以上飛び回りながら、徐々に可能性が広がっていることも実感しています。

――後に続く若者たちに伝えたいことはありますか。
行動しながら考えるでもいいし、行動する前に考えてもいい。とにかく「考える」というフェーズを必ず入れてほしいなと思います。私自身がそうだったように、。失敗をしても、なぜ失敗したのかを考えれば自ずと次への道が開かれてきました。自身で考えて行動した結果は、どんな結末であれ、後悔がないのです。後悔がなければ、当たり前ですが、前進することができます。


モンブラン・ピクチャーズの最新作
▼絵本「チャドとクラーク」シリーズ

チャドとクラーク都会で大ぼうけん

第1作目「チャドとクラークのぼうけん島」の続きのお話し。
ぼうけん島での生活をとおして、友だちになったチャドとクラーク。クラークがおじいさんたちと一緒に都会へと帰ったある日のこと、チャドがひょっこり都会へやってきます。都会でもドキドキとハラハラのぼうけんが二人を待っていました。
http://chad-and-clark.com/

©MontBlanc Pictures

 

 


松下由香 Yuka Matsushita
2012年、「モンブラン・ピクチャーズ」設立時に事務・経理として入社。翌年にはその英語力とそれまでのキャリアを買われ、海外ビジネス展開を兼任する。2014年には福岡市からの委託事業として、自社コンテンツに加え、福岡のアニメスタジオ制作のコンテンツを預かり、海外のテレビや映画のマーケットへ参加し、セールス活動を行う。ASEAN、ヨーロッパを中心に海外を飛び回り、アニメコンテンツの市場開拓、海外でコンテンツをマネタイズする仕組みを構築中。

●モンブラン・ピクチャーズ株式会社
http://mtblanc.jp
●いぬねこカウンシル福岡
http://www.inc-fukuoka.org



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●取材を終えて
才色兼備で、仕事ができるビジネスウーマン。そんな松下さんの第一印象は、インタビューを進めていくうちに、変わらないまでも、少しずつ変化していきました。仕事というフィールドに囚われず、彼女自身に目を向けていくほどに、深い愛情を持ち、静かに情熱を燃やし続ける芯の強い女性というイメージが大きくなっていきます。ずっと「考える」ことを続けてきた松下さん。だからこそ生まれた犬猫の殺処分問題への壮大なアプローチに驚くと同時に、きっと上手くいくと思えました。

取材・文:山田 祐一郎
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