日々是食欲

なぜか寿司屋が多い、警固・浄水エリア

2016年02月11日 08:00 by 弓削聞平

コンパクトシティと言われる福岡。小さなエリアに商業もビジネスも住宅もぎゅぎゅっと詰まっていて便利なのですが、エリア特性はそれほど明確ではありません。中洲はバーが多かったり、大名(特に西通りに近いところ)は若い人向けの店が多かったりはしますが、多くのエリアは様々な業種・業態がごった煮状態です。

そんななか、赤坂けやき通りから浄水通りあたりまでの南北に伸びるエリアは10年ほど前まではやけにイタリアンが多かったんです。ところがそれらが少しずつ減っていき、今はイタリアンは他エリアに比べて多いというほどではなく、むしろ薬院駅周辺にイタリアン系が集中しています。たとえばピッツェリアの「ガエターノ」、トラットリアの「フィーゴ」あたりは有名だし、イタリアワイン専門のバー「白樺」など、10軒くらいはあるのではないでしょうか。そしてかつてイタリアンが多かった先のエリアはいつの間にか寿司屋が多くなってきました。老舗でいえば元祖レタス巻きの「おかめ寿司」や警固本通りの「あづま寿司」。数年前にできた今やかなり先まで予約が取れない「さかい」もあります。またけやき通り沿いには「石ばし」という20代の店主が一昨年始めた店もありますし、昨年の6月には同じく20代の店主が浄水通りの方に「かず矢」を開業しました。「石ばし」はかの「吉冨寿し」出身で、「かず矢」は「やま中」出身とどちらも名店の出ですが、そういう意味では昨秋、同じく警固に「巳之七(みのしち)」という「たつみ寿司」から独立した店ができ、警固本通りにも「やま中」出身の「木島」ができました。他にもけやき通り沿いにはカジュアルに寿司と天ぷらを楽しめる「けやき通り 海晴れ」もあるし、そのすぐ近くには「綾元」という深夜まで寿司を食べられる居酒屋的な店もあります。

新しいところで言えば、久留米の名店「甚六」の分家である「六香」も先月赤坂にできましたし、大正通り沿いには「松むら」という店もできています。この2軒はまだ私も未訪問なので、近いうちに出かけてみたいと思っているところです。

他にもまだまだあるのですが、なんとも華やかな顔ぶれです。元々福岡の寿司業界は、ここ数年30代の店主が自身の店をもつケースが非常に多いのですが、それにしても新旧合わせてこのエリアの寿司街ぶりはちょっと異様です。どう考えてもこのエリアに寿司店を出すエリア的メリットがあるとはさして思えませんが、あえていえば赤坂、桜坂という富裕層が多い住宅街を後に控えていることくらいでしょうか。寿司屋といっても、さまざまなスタイル・価格帯がありますが(このエリアに回転寿司はない)、それぞれが切磋琢磨してファンをつかみ、若い店主たちが、そして店そのものが、さらに成長していくことを願っています。

おっと、告知を忘れてました。もう販売期間は過ぎましたが昨年11月20日に発売した〈ソワニエ〉の特集は「寿司屋は怖くない」です。「寿司屋は相性だ」を裏テーマとし、好きな寿司屋は人それぞれであることを密かに訴えたつもりですから、「ジュンク堂」やアマゾンでバックナンバーを入手して、ぜひ読んでみてください。


1.昨年11月に発売になった〈ソワニエ〉。
2.浄水通り近くにある「かず矢」。

取材・文:弓削聞平
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