日々是食欲

「元気」と言われる福岡飲食業界の現況

2014年05月08日 08:00 by 弓削聞平

ちょっと仕事がらみで福岡の飲食業界の傾向などをまとめている。いろんな方面のプロの方々にお話聞いたり、データを調べたりしているが、そのなかで特徴的なものをいくつかご紹介しよう。

福岡は個人店が強く関東などの大手チェーンがなかなかうまくいかないというのは有名な話だ。2011年の「日経レストラン」でもそのことは大々的に取り上げられている。とにかく個人店、特に居酒屋や焼鳥屋のレベルは高く、コストパフォーマンスのよさはすばらしい。このことは今も大きくは変わらないのだが、以前に比べるとうまく行く大手フードカンパニーも増えてきたように思う。特に天神・大名(西通り近く)、博多駅は家賃が高くなかなか個人には手が出ないので、関東や関西の企業が、割と大きな坪数で展開することが多い。特にファッションビルなどのビルインは初期投資も大きくなりがちなので、資金力がありノウハウをもっているところじゃないと難しい。2011年に開業したJR博多シティのなかの飲食フロア「くうてん」をみても、その傾向は顕著だ。地元の個人店もあるにはあるが、ほとんどは大手であり、関東などからの出店だが、実に評判もよく3年経った今でも賑わっている。今後もソラリアプラザの飲食フロアが改装し、パルコが増床し、郵政ビルができることで、ますますその傾向は強くなりそうだ。

そうは言っても、福岡の個人店、それも小バコ(小さな店)の人気は変わらない。個人店は資金力がないところがほとんどだから、前述の中心部から少し離れたところ、つまり警固・赤坂・薬院・平尾・高砂・春吉あたりに集まっている。それも10坪前後の店が多い。つまりそのエリアのそれくらいの坪数のところに、個性的な店は実力店が多いというわけだ。今、なかなか入れないというイタリアンの「なかがわ」や「チェルニア」や「ガエターノ」もそのエリアだ。もっとも「ガエターノ」は小バコではないが。そういえば今挙げた3軒はすべてイタリアンだ。そう、福岡はイタリアンが多い、しかもここ数年すごく増えているというのも事実だ。おもしろいことに、イタリアンは薬院から警固にかけて集中しており、現在も増え続けている。GW直前にも薬院に「gorm's」という店ができたばかりだ。しかし不思議と春吉にはイタリアンは極端に少ない。もちろんダイニングバーでパスタも出すというところはあるが、記憶をたどると「葡萄房」「りんご家」「バラティエ」「フリッジ」(フリッジは正確な町名でいえば渡辺通)あたりが浮かぶ程度だ。やはり春吉は焼肉と焼鳥が俄然多い。そんな街のカラーを紐解くのもまたおもしろい。

もう1つだけ福岡の飲食店の特徴を挙げるならば、それはコミュニケーション力だ。街がコンパクトというのも関係してると思うが、客と店主、店主と店主の距離がとても近い。これは東京からやってきているシェフたちもよく言うことだ。店の人もいろいろ食べ歩き親交を深め、あげくにお客を紹介しあったりもする。また、行政やどこかの団体ではなく、個店が周りの店と一緒に発案・運営するイベントも数知れずだ。そして店が顧客を集めて、バスツアーに行ったり、花見をしたりということも多いし、普通に閉店後にスタッフと客があたかも旧知の友のように飲み歩く。こんなことがまた福岡の飲食業界を活気づかせているに違いない。全国でも飲食が元気と言われる福岡の街。アベノミクスとは関係なく、個の力、人の力でますますおもしろくなっていくに違いない。
とどろき酒店が主催するイベント「満月ワインバー」。

取材・文:弓削聞平
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