日々是食欲

飲食業界にもシェアの時代がやってきた

2014年04月10日 08:00 by 弓削聞平

大名にこの3月「メルカドサンミゲル」という店ができた。http://tenjinsite.jp/gourmet/g-newshop/detail.php?hid=38045

天神サイトでの紹介にもあるが、この店はメキシコ料理の「エルボラーチョ」のオーナーである杉山さんの声がけから始まった。「エルボラーチョ」といえば、10年以上前に大名で産声をあげ、その後じっくりとマイペースに高砂、博多駅、西新と出店し、先頃ついに東京・日本橋の商業施設「コレド日本橋」に出店した名店だ。そんな勢いのある名店のオーナーが、自店の本拠地でもある大名で新たに考えたのはコラボバル。元々親交のあったスペインバルの「ロッサロッサ」、そしてイタリアンの「アロマキッチン」に声をかけた。赤坂けやき通りにある「ロッサロッサ」も福岡のバルでは老舗だし、港のかもめ広場前(バルをやるにはとんでもない立地だ)には「プルポ」というスペインバルももっている。さらに「アルマキッチン」といえば、今をときめくOBU COMPANYの経営。OBUは福岡の会社だが「松介」「蛍」など40軒近くものあらゆる業態の飲食店を経営し、こちらも数年前東京に出店。さらに居酒屋甲子園で連覇する店をもつなど、そのレベルの高さには定評があるグループだ。この3軒のコラボ店と聞けば考えただけでもワクワクするではないか。

オープンしてすぐさっそく行ってみたが、システムとしては商業施設の1階などによくあるフードコートだ。自分の好きなところで好きなドリンクやフードをオーダーし、共用のテーブルに自分で持って行っていただくというもの。フードコートといえばファミリー向けのライトなものを想像するが、これがちゃんと雰囲気のあるバルになっているのがさすがだ。力のある3つの店であるとともに、今回はスペイン、イタリア、メキシコと多国籍なのもおもしろい。ちょこちょことそれぞれの国の料理をつまみ、ワインやテキーラをいただく。それだけではない、それぞれが名店なだけに、サービス面もレベルが高いし、またそれぞれが互いに刺激しあうことでよりレベルアップしていく。まさにコラボの強みが今後もいかんなく発揮されるに違いない。

昨今、バーの昼の時間帯を別の人が借りてカフェなどをやるという二毛作のようなことをやっている飲食店をよく見かける。飲食店の三大コストは家賃、人件費、食材原価だが、そのうち努力で下げることができない固定費が家賃だ。それを少しでも軽減するために、使ってない時間帯を別の人に貸し有効活用するのは、固定費の軽減につながるし、客層の拡大にもつながる可能性を秘めている。今回のようなコラボ店も、そういう意味で飲食店のリスクを減らすとともに、相乗効果で集客を促進できるというメリットがある。といって、何でもコラボすればうまくいくというものではない。そこには「エルボラーチョ」の杉山さんのような、立地の見極め、そしてそこにハマる業態、さらには業態は決まってもどこの店と組むかのセンスがとても重要だ。ま、これはファッションなんかのコラボも同じですね。いずれにしても、こんなふうに1つの物件を複数の店でシェアする業態はこれから増えてくるだろう。まさに数年前からシェアハウスも流行ってることだし、飲食店もシェアの時代がやってきたようだ。

余談だが、「サンミゲル」はそれぞれの国が国だけに、もしここに大きなモニタでもあったら、今年のワールドカップのときの盛り上がりは想像を絶することになりそうだ。




店内にはカウンターが3つ。好きなものをつまみ、好きなものを飲む。スタッフもノリがよく、盛り上がること間違いなし。(photo:Hidemasa Yoshino)

取材・文:弓削聞平
このライターの他の記事を読む

プレイス情報PLACE

FUKUOKA CRAFT by エルボラーチョ

住所 福岡市中央区大名1丁目11−4 どんぱビル1F
TEL 092-791-1494
営業時間 17:00~翌3:00(日祝日15:00~23:00)
定休日 なし
URL http://www.elborracho.com/fukuokacraft

関連するトピックスTOPICS

PAGE TOP