日々是食欲

今年は国産のお酒に追い風が吹く

2013年02月14日 08:00 by 弓削聞平

一度このコラムにも書いたが、国産ワインに追い風が吹いている。先日、飲食店にワインや日本酒を卸している「とどろき酒店」の驫木渡氏と話をしていたのだが、彼は今年、国産ワインに力を入れると言っていた。私が編集している「ソワニエ」でも2年半前の創刊号で6ページではあったが、国産ワインの企画を組んだのだが、確かにここ1、2年、飲食関係の雑誌でも国産ワインが取り上げられることは増えたし、福岡の店をみていてもドリンクメニューにちらほら見かけるようになってきている。以前は国産ワインといえばもっぱら果物を作っている土地が観光用のワインを製造販売していたものだが、最近は正面からワイン造りに向き合って、葡萄から栽培し、丁寧に醸造しているワイナリーが増えている。

また、2年ほど前だったか東京の友人が国産ワイン専門のバーを始めた。メディアでもときどき見かけるしなかなか盛況だと聞いている。そういえば、大名の「アジート」という日本酒とワインの店の店主は、昨年の秋だかに山梨のワイナリー巡りをし、その後店で国産ワインのイベントを行ったりもしているし、3月には「とどろき酒店」主催の国産ワインイベントも行われる。こんなふうに酒屋や店の細かな活動が、国産ワインファンの底上げに結びつくのは間違いない。

また、日本酒もここ数年明らかに飲む人が増えている。こちらも過去に「ソワニエ」で「女性が日本酒を飲み出した」という企画をやったが、まさにそういう傾向が顕著で、日本酒のイベントに行くと女性率がすごく高いのに驚かされる。奇しくも今月の11日には恒例の「城島酒蔵まつり」が開催され、今年も大盛況だったようだ。これも、かつての日本酒のイメージにはほど遠い、女性のグループやカップルなどが目立つようになっており、その消費者層の広がりを実感する。

日本酒もワイン同様、今は若い造り手が少量ながらも手間暇をかけて造ったり、多様性に富んだ試みを行っており、リリースされるのが毎回楽しみだ。また、現在発売中の飲食専門誌「dancyu」でも「新しい日本酒の教科書」という特集を組んでおり、「脱・『辛口の酒ください』のススメ」など、興味深い記事が満載だ。九州といえば焼酎の地方と思われがちだが、実は福岡や佐賀は日本酒の蔵が多いことで知られ、美味しい日本酒が身近なところでたくさん造られているのだ。

さて次なる国産酒といえばクラフトビールだろう。こちらもここ数年東京を中心にブームになっているが、例によって福岡まではまだまだという段階だ。しかしそんななか国産だけではないが、舞鶴の「エールズ」や高砂の「パディ」など、クラフトビールをメインとしたパブは話題だし、つい先日天神サイトでもニューオープンとして紹介した「Monkey」には常時10種類以上の国産クラフトビールが揃っている。これらクラフトビールも以前は観光みやげを目的に「地ビール」としてものすごく増えたが、今ではブームにのっかっただけだった会社はすっかり淘汰され、実力のあるものが残り、それを飲食店が取り入れ始めたところだ。

国産ワイン、日本酒、国産クラフトビールとくれば国産ウイスキーも忘れちゃいけない。こちらはブームというわけではないのだが、大名には「BEM」という国産ウイスキー専門バー(スタンディング)がある。こちらも実に熱心に日本のウイスキーの美味しさを啓蒙している貴重な店だ。

こんなふうに、今年は日本の酒が注目されてくるように思う。地産地消じゃないけれど、国内の原料で、日本人が手間暇かけて造っている酒をぜひみなさんも飲んでみてください。
「アジート」が1月のイベントで抜栓したワインたち。(写真提供:アジート)

取材・文:弓削聞平
このライターの他の記事を読む

関連するトピックスTOPICS

PAGE TOP