日々是食欲

来年のおせちのアイデアが閃いた

2013年01月10日 08:00 by 弓削聞平

 2013年第一回目のコラムだ。今年もよろしくお願いします。

 さて、12月には「おせち」について書いた。あれを書いたのは12月の初旬だったが、その後お店を徘徊しているとやはり最近はおせちをやる店が増えたな〜と実感した。ぼくがよく顔を出すのは個人店がほとんどだが、そういう店の場合はどうしても作れる数にも限界があり、20〜50個限定というのが多い。もちろん大手外食産業のように早くに作って冷凍しておくということもあまりない。なぜなら、冷凍しておく冷凍庫のスペース自体がないし、それ用に冷凍倉庫を借りるなんてこともできるはずがないからだ。大体個人店というのは常日頃の営業のための食材をストックするだけでもギリギリという店は少なくないのだ。ほとんどの店は営業をしながらおせち(オードブルセット)を作るので、調理する物理的な時間の不足ということだけでなく、そういう面からもそんなに大量にはできない。そんなふうに数量が少ないから、来店したお客さんに案内するくらいで売り切れることが多く、どこがおせちをやっているという情報は意外にオープンにならないものだ。ただ、ぼくが毎年買っている「味 竹林」あたりは毎年大丸などでも注文を受けているので数もハンパではない。ゆえに、毎年クリスマス以降は店の営業を止め、さらに知り合いの料理人等に助っ人を頼んで不眠不休でおせちに取り組んでいる。

 さてあるお店で聞いた話によると、最近1段とかの非常にコンパクトなおせちが出てきているらしい。確かにそういうニーズはあるかもな〜。ぼくの友達も何人か商業施設に入ってるショップ関係の人とかいるんだけど、休みは元旦だけとか、どうかすると休みなしって人もいて、そういう人は徐々に増えてきてる。飲食店も元旦からやるところが年々増えてるし。そうなってくると、特に一人暮らしの人とかは実家にも帰れず、日常と何も変わらないわけで、もし多少なりとも正月気分を、と思えばコンパクトなもののニーズが出てくるのはわかる。また、普通に年末年始が休みの人にしても、最近はスーパーにしろ、飲食店にしろ正月から開けているところが増えたので、三が日は家でおせち、というスタイルがくずれつつある。「おせちに飽きたらカレー」というのは何十年も前のレトルトカレーのCMのコピーだが、今や3日には(どうかしたら2日の夜には)もうおせちに飽きて、それこそカレーだったり、焼肉だったりを食べる人が少なくない。であれば、おせちは3日間で食べることを想定した量にする必要もないだろう(もちろん従来のものは必要という前提です)。

 さらに1段おせちの使い方はもう1つある。コンパクトなものをA店から1つ、B店から1つと購入すれば2つの店の味を楽しめるのだ。それを和食系2つにすると料理が重複するのは間違いないけど、和食系と洋食系、あるいは中華系とすれば、バリエーションが増えて楽しいのではないだろうか。

 先月のコラムで皆でいろいろな店のおせちを持ち寄って新年会をやると楽しそうという話を書いたが、これ、実際にやろうとするとけっこうお金がかかってしまい、富裕層でもない限り現実的にはなかなか難しい。しかし、これなら金額も抑えめでいろいろなお店のものを楽しめそうだ。いや、そうは言ってもぼくは来年も「竹林」に確定なんだけど、〈ソワニエ〉でそういうおせちを企画するのはよさそうだ。実際詳細をツメて考えるといくつか越えねばならないハードルはありそうだけど、検討してみることにしよう。
今年の「味 竹林」のおせち。鯨に鮑に数の子に・・・。

取材・文:弓削聞平
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