日々是食欲

シチュエーションは味を大きく左右する

2012年09月13日 08:00 by 弓削聞平

 福岡の夏は「サンセットライブ」で終わる。そう感じているのはぼくだけじゃないはずだ。毎年、9月の頭に開催されるこのライブは今年8/31〜9/2に開催されたが、今年でなんと20周年を迎えた。第1回はまだ「サンセット」が移転する前の小さな店の前の駐車場で、いかにも個店のパーティの延長という感じだったのだが、今や場所を芥屋海水浴場に移し、ステージは全部で4カ所あり、3日間で15000人くらいを動員する大イベントになった。しかしぼくは、イベントが大きくなったことよりも、20年間、1年も欠かすことなく開催しているというその継続力に敬意を表したい。雑誌でもそうだけど、何回かやるのはモチベーションも高いし、いいものも作れるかもしれないが、それをずっと続けることって本当に難しいと身をもって感じている。
 な〜んて偉そうに言ってるぼくも毎年行っているわけではないのだが、今年はぼくが発行した「ぐる〜り糸島」を会場で販売するために、3日間開演から終演までずっと参加した。本を売るために行っているわけだから、ライブを100%満喫することはできなかったが、それでも音は常に聴こえているし、ちょいちょい店を離れて観に行ったりはした。
 しかしライブはともかく、食事はいろいろなものを堪能できた。なにせ、ずっと会場にいるわけだから当然腹も減る。それにいつもと違うのは販売ブースという拠点があること。ちゃんと日よけのテントがあり、テーブルと椅子があるから、ごはんを食べるという点での環境は一般客とは全然違う。飲食ブースもかなりの数ある。糸島や福岡の店が出店しているものもあれば、企業のブースもあれば、はたまた祭りのテキ屋みたいな露店もある。
 ぼくが食べたのはもっぱら「ソワニエ」や「ぐる〜り糸島」でお世話になったりしている一般のお店が出店しているところ。「極みや」の伊万里牛の薄切り、「檳榔の夜」の魯肉飯(ルーロン飯)、「村崎焼鳥研究所」の焼鳥、「フリッジ」のピザ、「とく屋」のソーキそば、「くう氣」のあごだしラーメンなどなど。ぼくらは大体3人でブースを切り盛りしていたので(切り盛りというほど忙しくないのだが)、各人目についたものを買ってきては皆でつまむという感じ。これはなかなか楽しい。一番気に入ったのは「村崎焼鳥研究所」の麦トロ軟骨丼かなぁ。春吉にある店でも出しているものなのかどうかはわからないが、細かくしたコリコリ軟骨とずるずる山芋をぐっちゃぐちゃにしてすするメシのうまいこと。いや〜、最高です。
 そりゃ、どれも純粋に味だけを追求すれば、店で食べる方がおいしいに決まってる(店では出してないメニューもあるが)。だけど、やっぱり食事には雰囲気って大事なんだよね。どんなシチュエーションで誰と食べるのか。これって、料理の満足度をかなり左右する。そういえば、今年もあちこちでお店主催のバーベキューが開催されたけど、あれもそうだ。気心の知れた同じ店の顧客らで、屋外(多くはビーチ)で食べるバーベキューのうまさは、同じものを店で食べる、あるいは初対面の人ばかりのパーティで食べるのとは全然違う。往々にしてバーベキューって焼きすぎてしまったりもするもんだけど、そんなことも全然気にならず「うまい!」。
 ・・・・・・とは思うんだけど、一流の料理人たちが食材に、下ごしらに、そして調理(焼き)にこだわったバーベキューというのもちょこちょことあってるようだ。これはこれで行ってみたいよな〜。ちょうど今発売中の「料理通信」という雑誌の誌面企画でもそういうのがあっていた。来年は「ソワニエ」もそういうのやろうかなぁ。二番煎じになるけど、本音をいえば・・・く、食いたい。あっ、完全に公私混同ですね。いかんいかん。




【1】「村崎焼鳥研究所」の麦トロ軟骨丼【2】「フリッジ」のマルゲリータ【3】「檳榔の夜」のブース  photo:hidemasa yoshino

取材・文:弓削聞平
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