日々是食欲

細分化されてきたワインマーケット

2012年04月13日 08:00 by 弓削聞平

 いつからだろう。こんなにワインが身近な存在になったのは。もう20年くらい前だろうか? 「ブルータス」などの一般雑誌でもワインの特集が組まれ、テレビでも「赤ワインのポリフェノールは健康にいい」などと言われ、徐々にワイン需要が増えていった(ちなみにコーヒーにもワインと同等のポリフェノールが含まれているそう)。それとともに、従来はフレンチやイタリアンのレストランで飲む、ちょっとハイクラスなお酒だったワインが、徐々に庶民レベルのクラスに降りてきてくれた。今でも本格的なワインバーなどに行くと、医師や企業オーナーなどとよく遭遇するのはその名残かだろうし、ワインのコレクターもどそういう職業の方々が多い。それだけワインにステイタスがあり、高貴な趣味だったということだろう。
 しかし日本でも安くておいしいワインがたくさん流通しはじめ、しかも居酒屋やダイニングバーでもこれだけワインが揃っている現在の世の中では、もうほんとに市民権を得たといっていいだろう。それにしても当時からすると、今のように、寿司屋や和食の店に行っても、これだけワインが普通に置かれている状況って考えられなかった。変われば変わるものだ。
 そしてワインブームの頃にワインにハマった人たちが、それから勉強をしてソムリエやアドバイザーの資格を取り、あげくに自分でワインの店を出してしまったという人も少なくない。さらには仕事とはまったく関係ないのに、趣味として資格を取る人も多い。それだけワインというのは、知識に深みがあり、向学心を刺激される酒なのだ。
 一時期ワインバーが増えた時期があり、最近はカジュアルなバルスタイルが全盛だ。流行って、マーケットが拡大し、業態に幅が出るというのはぼくら客にとってはありがたい。そして近頃はワインバーも細分化の傾向にある。数年前から「自然派ワイン」に特化した店が増えているのはご承知の人も多いだろう。上人橋通り近くの串焼きと自然派ワインの店「イル・フェ・ソワフ」、春吉の「山下ワイン食道」など何軒もある。全国的にも増えているし、福岡においては「とどろき酒店」の熱心な啓蒙活動によるところも大きい。また、シャンパーニュ専門のバーも数軒ある。なかでも大名の「TRITON」は今ほどシャンパーニュが一般的になる前からやっている先駆者だ。
 イタリアンに行けばイタリアワインが多いのは当然だが、イタリアワイン専門のバーもある。大名の「kasa」はフードもいろいろあるが基本的にはイタリアワインを楽しむ店だし、先月白金にできたばかりの「白樺」もイタリアワイン専門のワインバーだ。もっとマニアックなところでは、少し前春吉に「RiNGA」というニュージーランドワイン専門のバーができたのには驚かされた。また、福岡にはまだできてないと思うが、東京には国産ワイン専門のバーもいくつかある。最近は国産ワインにもおいしいワインがいろいろあるので、いずれ福岡にも1、2軒はできても不思議はない。幅広く、奥深いワインなだけに、今後の動向がますます楽しみだ。
福岡でも有数の在庫を誇るワインダイニングのセラー。

取材・文:弓削聞平
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