★STORY★
昭和63 年の年の瀬。ジャズピアニスト志望の博（池松壮亮）は、場末のキャバレーバンドで酔客相手に演奏する毎日にすっかり嫌気が差していた。ある晩、店にふらりと現れたチンピラの“ あいつ”（森田剛）にリクエストされて「ゴッドファーザー愛のテーマ」を演奏するが、その曲が大きな災いを招くとは知るよしもなかった。

「ゴッドファーザー」をリクエストしていいのは、界隈を牛耳る熊野会長（松尾貴史）だけ。そして演奏を許されているのも、会長の大のお気に入りで、銀座を代表する高級クラブ「スロウリー」と「リージェント」を掛け持ちする敏腕ピアニスト、南（池松壮亮、二役）だけだったのだ。

ジャズが弾ける場所を求める博は、キャバレーを飛び出して、高級クラブのハウスバンドを目指す。ミュージシャンが集まるカフェ「ボストン」に潜り込み、自分を売り込もうとするが耳を貸してくれる者はいない。

一方、南もまた、ろくに音楽を聴かない酔客たちの前で演奏する毎日にウンザリしていた。かつての夢だったアメリカに留学すると密かに心に決めていたが、どっぷり使った夜の銀座から抜け出すのは容易なことではなかった。南は「スロウリー」にやってきた熊野会長に引き止められ、掛け持ちするはずだった「リージェント」のステージにも出られなくなってしまう。

「スロウリー」のバンマス三木（高橋和也）は、急遽ピアニストの千佳子（仲里依紗）に「リージェント」の代役を見つけるように指示。千佳子が「ボストン」に探しにいくと、名乗りを上げたのは博だった。千佳子と博は、かつて同じ宅見先生（佐野史郎）のもとでピアノを学んでいた先輩後輩の間柄だったのだ。

千佳子の紹介で、博はいきなり「リージェント」でピアノを弾くことになる。意気揚々とアドリブを加えて演奏するも、「リージェント」のバンマス曽根（川瀬陽太）から「クラブでは余計な自意識は捨てろ」と説教されてしまう。

南は千佳子に、今日限りでクラブを辞めてアメリカに留学するつもりだと話す。そして夜の街を歩いていると、博のキャバレーバンドの仲間だったK 助（松丸契）が、誰に聴かせるともなくサックスを吹いていた。南は置き捨てられていた壊れたアップライトピアノでK助とセッションし、宅見先生から言われていた「ノンシャラント」という言葉が初めてつかめた気になって、胸の奥のなにかが吹っ切れる。

南が「スロウリー」に戻ると、千佳子からアメリカ人シンガーのリサ（クリスタル・ケイ）を巻き込んで、ステージでの演奏を録音しようと提案される。ボストンの音楽大学の入学審査にはデモテープが必要なのだ。リサのレパートリーであるブルースのスタンダードナンバーを演奏する南たち。バンマスの三木も参加し、勝手に着いてきたK 助もサックスを重ねてくる。南にとっても会心の演奏で、クラブの客たちも珍しく耳を傾けていた。

ところが酔っ払った熊野会長がイクをつかみ、ズンドコ節を歌い出す。会長の機嫌を損ねるわけにはいかないと、南は伴奏を始め、バンドもそれについていく。調子に乗った熊野会長はリサの腰に手を回し、リサはとっさに会長を突き飛ばしてしまう。凍りつく店内。とっさに南は会長が大好きな「ゴッドファーザー愛のテーマ」を弾き始めた。デモテープはもはやカオス状態だが、南は演奏しながら「ゴッドファーザー愛のテーマ」がいかに名曲なのかに初めて気づいていた。

そこに熊野会長に恨みを抱く“ あいつ” が乱入し、「スロウリー」の店内は血で血を洗う阿鼻叫喚の大騒ぎに。混乱の中でなんとかデモテープを守ろうとした南は、ビルとビルとの隙間に落下してしまう。ゴミと残飯にまみれた狭い空間には、髪もヒゲも伸び放題の汚い浮浪者がいた。3年前からここに住んでいるという浮浪者は、なんと南と同じ顔をしていた。ここはアメリカだと言い張る浮浪者は、いったい何者なのか？ 南はこのゆがんだ空間から抜け出して、夢のアメリカ留学に旅立つことはできるのだろうか？

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【公開】10月6日（金）
ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13　ほかにて全国ロードショー

【出演】池松壮亮
仲里依紗　森田剛
クリスタル・ケイ　松丸契　川瀬陽太
杉山ひこひこ　中山来未　福津健創　日高ボブ美
佐野史郎　洞口依子　松尾貴史　／　高橋和也

【原作】南博「白鍵と黒鍵の間に」（小学館文庫刊）

【監督】冨永昌敬　【脚本】冨永昌敬　高橋知由　【音楽】魚返明未

【オフィシャルサイト】https://hakkentokokken.com/