日々是食欲

博多名物、「権兵衛」スタイルのとりかわ

2014年11月13日 08:00 by 弓削聞平

先月の本コラムの最後にちょっと触れた「ふくおか手みやげ自慢」が10月21日に発売になった。きょう書店に行くと、なんと「anan」も「&Premium」も手みやげの特集をやってるし、「ブルータス」も同じ10月に以前の手みやげや取り寄せの特集を合本にした別冊を発行している。なんだか「手みやげ」キテんのか〜? お歳暮シーズンってのも関係あるのかなぁ。そうこの「手みやげ自慢」はお歳暮にも使えるんだよね〜。お歳暮ってほどかしこまらず、周りの日頃お世話になっている会社や人に、「今年もお世話になりました〜」って、ちょっと気の利いたものとか持って行くと、グーンと株が上がるんじゃないかな? いや、そもそもこの手みやげの本って、自分のために使ってもいいんだよね。バレンタインも元々は女性が男性にチョコレートをあげるものだったけど、最近は自分のために買う人も多いよね。そう、普段使いできるもの、あるいは「自分へのご褒美」的なちょっと贅沢なものまで、いろんなものが載っているので、特にこれからの季節は参考にしてみてほしいな。

東京などから福岡に来た人に何を食べてもらうかっていうのがよく話題になるし、ぼく自身聞かれることもすごく多いんだけど、昔は水炊き、ラーメン、魚料理だったけど、いつの頃からかそれに加えてもつ鍋が求められるようになった。もはやもつ鍋は全国にあるんだからわざわざ福岡でまで食べなくてもいいだろうって思ったりするんだけど、やっぱ“本場感”があるのだろう。福岡でうまいもつ鍋を食べたいって言うんだよね。

そしてもう1つ挙げておきたいのが焼鳥だ。博多の一般的焼鳥屋はメニュー構成が非常に居酒屋的で、串ものも鶏肉だけじゃなく一番人気は豚バラだし、牛サガリだの、ベーコン巻だの実に多彩なであり「焼鳥」というよりは「串焼き」の色が強い。さらには豚足、焼き魚、山芋鉄板焼きなど、串じゃないものがあるのもまったく普通だ。そして極めつけは最初にドーンと出てくるキャベツ。しかもこれがおかわり自由ってのも、福岡ならではの姿だ。これを体験させるだけでも、他県から来た人には十分インパクトはある。

そしてもっと福岡独特なのがあの「権兵衛館」に始まった「とりかわ」だ。もう何十年も前に今は大名にある「権兵衛館」の店主が試行錯誤のうえ始めたこのとりかわは、その後薬院店(現「粋恭」の場所)も常に満席という人気店となり、福岡の人を魅了した。

鶏の首の皮を串にぐるぐるっと巻いて、タレにつけては焼き、つけては焼きを3、4日繰り返したものを、客の注文により焼き上げるわけだが、席に着くなり「じゃ、かわ30ね!」とかいうオーダーを聞いただけで、初めてのお客さんは驚きの顔を隠せない。

今では「権兵衛館」「権兵衛薬院店」で修業した人が独立したり、独学で同様のとりかわを出す店が福岡、そして九州にはいくつもあるが、なかでも圧倒的人気を誇るのは「かわ屋」だろう。店は白金と警固本通り沿いにある。小さな店だが飛び込みではまず入れず、「空いたら携帯に電話します」と言われたりもする。ぼくが先日行ってきたのは昭和通り沿いにある「勝軍」。ここは、権兵衛スタイルのとりかわと普通のとりかわの両方をメニューに載せている。そして先ほどの話ではないが、とりかわをはじめとした焼鳥以外のメニューもものすごく豊富なのが特徴だ。もはや焼鳥屋なのか居酒屋なのかわからないというくらいなのだ。

この手のとりかわを出す店は、そのほか中央区以外にもたくさんあるし、今はフランチャイズで関西などにもあるhttp://www.columbus-egg.co.jp/newentry/torikawa.php。(フランチャイズで全国に広がることについては、個人的には好きではないが)もつ鍋や炊き餃子のように、福岡発の全国区料理として認知されつつあるようだ。




【1】手みやげブーム、到来か?
【2】10月に発売になったばかりの「ふくおか 手みやげ自慢」
【3】「勝軍」の「勝軍とりかわ」(100円)。冷えないように各テーブルに置いてある専用鉄板の上に置かれる。

取材・文:弓削聞平
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