日々是食欲

「ミシュランガイド福岡・佐賀」が発売に

2014年07月10日 08:00 by 弓削聞平

先月、馬場健治氏も本サイトのコラムに書いていたが、ここのところ福岡の飲食業界は「ミシュラン」の話題で持ちきりだ。もうだいぶ前から「鹿児島の店に調査員が来たらしいよ」「北九州の店に来たらしいよ」などと噂が流れ始め、当初は九州全域のリサーチをしていたようだが、最終的には福岡県と佐賀県のレストラン&宿泊施設のガイドブックになったようだ。

特に今年に入ってからは、福岡のハイクラスなレストランやワインバー、あるいは懐石料理や寿司の店に行くと、「どこどこに来たらしいですよ」「どこどこは載るみたいですよ」などという会話になることが明らかに増えてきた。しかし驚いたのは「掲載してもいいですか?」というような類の電話があったにもかかわらず掲載しないお店もあるということだ。私も今まで福岡をはじめ全国誌等いろいろな雑誌の取材に携わったが、掲載するかどうか決まってないのに許可取りの連絡を入れたことはないし、編集部からそういう指示をされたこともない。ということはお店の方も許可取りがあったということは掲載されると思っているわけだから、電話の後一向にお店に来ることがなかったり(あるいは来ているのに気づいていない場合もある)、データの確認がないと、「あれれれれ……?」と思ったに違いない。今回、掲載になるお店には7日にあった出版記念パーティの招待状が届いているので、それが来てないということにより「やっぱり載らないんだ」とがっかりしたお店もあるようだ。もっともウィキペディアによると、「許可が取れた店だけを調査対象とする」という記載があるので、その観点からするとそれがミシュランのやり方と納得はできる。

さて偶然にも今日がその「ミシュランガイド福岡・佐賀 2014 特別版」の発売日だ。通常いくら地元のテレビ番組や雑誌のスタッフが通ったり、お願いしても掲載許可がおりない店も何軒か載っている。くやしいなぁ。しかしそこはさすが「ミシュラン」と認めるしかない。なにせ、「ミシュラン」は1930年から覆面調査による格付けレストランガイドを発行しているのだから、まさに格が違うと認めざるを得ない。しかしながら、やはり地元グルメ誌の立場から言えば掲載店のラインナップを見ると当然「なぜ?」はある。そもそも評価というのは主観ではあるし(極力客観に近くなるよう努力はするわけだが)、明確な掲載基準を数値化はできないので、そのような感覚は私が編集する「ソワニエ」はもちろん、どんな情報誌、ガイドブックでもあるわけだが、機会があれば「なぜここが載っているのか」「なぜあそこが載っていないのか」聞いてみたいお店はいくつかある。特に後者について気になって仕方がないし、おそらく根拠があるのだろうから、素直に勉強させていただきたい。ま、聞いても教えてはくれないだろうが。いずれにしても、私たち地元グルメ誌だけでなく、一般の方々も一人ひとりお店に対する思いがあるはずなので、自分が好きなお店が載っていることを喜んだり、載っていないことで悲しんだりという、一喜一憂も含めて楽しみたいものだ。

余談だが「ミシュランガイド福岡・佐賀 2014 特別版」は原則として1軒につき3点の写真が掲載されている。おそらくカメラマンではなく調査員が撮った写真がほとんどだと思うが(従ってライティングなどはしていない)、中にはお店に写真提供を依頼したところもあったようだ。そういう場合はお店が急遽自分たちで写真を撮る場合もあるだろうし、店によっては過去にプロのカメラマンが撮ったものを所有していて、それを提供した場合もあるようだ。しかし、本をみているとごく稀に写真がない店もある。いろいろなケースが考えられるが、載っていないお店のラインナップをみても、間違いなく編集的意図ではなく店側の意志・事情によるものだと思われる。

私が編集している「ソワニエ」(エフエム福岡刊)は隔月発行の雑誌であり、その時々の特集をメインとしているのでさして競合という意識はないのだが、6月20日に発売になったばかりの「大人が行きたいうまい店 福岡」(エフエム福岡刊)は多少競合する部分がありそうだ。「大人が行きたいうまい店 福岡」は格付けガイドブックではないし、細かなテーマ設定により、比較的新しいところを中心に取り上げているという点で、テーマも掲載店もだいぶ違うのだが、同じ福岡のグルメガイドブックとしてはまったく競合しないということはないだろう。元々「ミシュラン」といえばハイクラスなレストランと宿泊施設のガイドだったわけだが、昨今はグルメに関しても3,500円以下で食べられるコストパフォーマンスのいいお店などとして、ラーメンや焼鳥など大衆的なジャンルも掲載しているので、以前に比べるとアッパー層や飲食業界の人だけではなく幅広い人たちが購入するかもしれない。ん〜、それはまずい(失笑)。ぜひ「ミシュラン」を買いに書店に行った人は、「大人が行きたいうまい店 福岡」の方もご覧ください。きっとどちらも欲しくなりますから。

取材・文:弓削聞平
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