日々是食欲

酒は百薬の長。いや、健康面だけじゃないんです。

2010年12月09日 08:00 by 弓削聞平

 仕事柄飲食業界の人と話す機会が多いのだが、どこに行っても「若い人がお酒を飲まなくなってて…」という話を聞く。飲食店はもちろん、酒屋さん、酒造メーカー等の共通の嘆きだ。いや、嘆きどころではない。切実な問題だ。こういう会話が日常になったのっていつくらいからだろう。
 ぼくらが若い頃、つまり今から30年くらい前(めちゃくちゃ昔だぁ)、特に男の場合、酒を飲めないというのはカッコ悪いことだった。だから、ちょっと飲んだだけで顔が真っ赤になるぼくはかなりコンプレックスを抱いていた。酒が飲めないと飲み会そのものが憂鬱で、もちろん合コンなんかにも「顔が真っ赤になる」という理由で行きたくない。周りの飲み会もなんだかんだ理由をつけて断ることが多かった。なんか当時は自分だけウーロン茶と言える雰囲気ではなかった。そして、酒が飲めない=モテないとすら思えた。
 学生時代はサークルの先輩らによく飲まされたが、さして強くなることもなく、「飲めば強くなる」というのは嘘だと思った。しかし、社会人になると入った会社が大学のサークルみたいな会社だったこともあり、飲む機会もさらに増え、ここ10年くらいは飲食関係の仕事をメインにするようになったので、もはや「休肝日ってあるの?」と真顔で聞かれるありさまだ(ま、ほとんどないのだが)。う〜ん、この変わり様は我ながらスゴイと思う。
 確かに以前に比べると酒を飲めるようにはなった。しかし、ビール1杯で顔が真っ赤になるのは変わらない。真っ赤になるけど、その後普通の顔色になったりもする。ならなかったりもする。1つ言えるのは飲めるようになったからといって、モテるようにはならないということだ。
 酒を飲んだからといってモテるようにはならないが、人との出会いは確かに増えた。飲まなくても人と出会うことはできるという人もいるだろう。しかしぼくの場合、飲む機会が格段に増えた10年前から、仕事関係なしの友達が断然増え始めた。今でも特に酒好きというわけではないので、別に焼肉食いながらウーロン茶でも全然ストレスを感じないぼくだけど、飲みに行きたくなるのは「酒」「店」を通じてのコミュニケーション、あるいはそこで起きる出来事(ときには事件!)が楽しいからだろう。
 冒頭にも書いたとおり「おいしいと思わない」「すぐ酔ってしまう」という理由で酒と無縁の生活をしている人が増えているわけだが、最初は多少無理してでも、酒の場に接していくことは、きっと長い目でみれば人生にたくさんの喜びを与えてくれるに違いない。元々酒嫌いだったぼくの紛れもない実感だ。
 ただし、飲み過ぎはいかん! ぼくも含め、飲み過ぎて後悔するのも酒飲みの常。市川海老蔵も今頃後悔してるに違いない。

取材・文:弓削聞平
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