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地域おこし協力隊が住み続けるまち、玄海町 Vol.2

2026年03月18日 11:00

定住を決めて起業した、武藤さんの今とこれから。
 

浜野浦の「棚田クリエイター」や、棚田米おむすびの「朝ごはんコーディネーター」など、ユニークな地域おこし協力隊を募る、佐賀県玄海町。町外からやってきた協力隊員を地域丸ごとの愛情で応援し、地域に必要とされる人材へと育み、第2のふるさとに選ばれる。そんな玄海町の魅力や暮らしぶりをたっぷりインタビュー。お聞きするのは、地域おこし協力隊在任中に起業し、卒業後も玄海町に住み続けることを選んだ、武藤敬哉さんです。

あわせて読もう!地域おこし協力隊が住み続けるまち、玄海町 Vol.1 パラレルワークとご近所づきあいを楽しむ、橘髙さんの現在地
 


ーー武藤さんは2021年6月に、玄海町の地域おこし協力隊に就任。浜野浦の棚田で「棚田クリエイター」として、活動されていたそうですね。
関西から実家のある佐賀県嬉野市に戻ってきたタイミングで、ちょうど募集を発見したんです。農業をしたことはなかったけれど「棚田に深く関われるなんて、おもしろそう!」と興味が湧いて、すぐに手を挙げました。

浜野浦の棚田は以前、家族と遊びに来たことがあり印象に残っていましたし、祖父が佐賀県の大町町で米づくりをしているので、その影響も少なからずありました。
 


上空から撮影した浜野浦の棚田。さまざまな形状の田んぼが階段状に重なっています。

 

ーー約5年間の活動期間中、「棚田クリエイター」としては、どんなことをされていたのですか?
最初のミッションは、浜野浦の棚田の景観維持、稲作の促進、棚田のPRでした。前任の方は、棚田でのイベント開催やSNS発信をメインに取り組んでいて、私はもっと棚田という“現場”に近い存在ですね。耕作者のみなさんの高齢化などもあり、棚田のために動ける人が必要だったのです。



守る米づくりの活動でコンバインを操作する武藤さん。操作方法は玄海町に来てから教えてもらいました。

ただ、その役割をこなすというより、自分で新しい役割を見つけられたらいいなと考えていましたし、そういう点に期待もされていたと思います。

そんな気持ちもあって、玄海町みんなの地域商社が主催する、「守る米づくり」の運営にも積極的に関わりました。町内外から棚田の“守り人”を募集して、1シーズン計10回のお米づくりを体験してもらう企画で、参加者と一緒に、田起こしからすべて自分たちで行っていましたね。

米づくりは初めてのことでしたから、頑張りたいけれど、やり方が分からない…というジレンマも生まれました。そんな時は浜野浦の棚田の現役耕作者でもある、松本長喜さんや松本正弘さんに教えていただいていました。


浜野浦夕日組合の組合長の松本長喜さんと武藤さん。長喜さんは米づくりの師匠のひとり。
 

長喜さんも正弘さんも、いつもは離れた場所から静かに見守ってくれて、私が困っていたらすっと手を差し伸べてくれるんです。浜野浦のみなさんは、外から来た私のことも尊重してくれる優しさを持った方ばかり。その距離感が心地よくて、Webで調べれば分かるようなことも、わざわざ質問をしにいくのが習慣になっていました。

たくさんの知識を授けてくださったおかげで、今では田んぼの畔のきゃーたて(玄海町の方言で畔の際を立てること)も、自分でできるようになりましたよ。

ーー武藤さんは地域おこし協力隊の在任中に起業をして、退任後も、玄海町で浜野浦の棚田に関わる仕事を続けていくそうですね。そのきっかけはどんなところにありましたか?
地域おこし協力隊の任期は2026年3月末までです。それに先んじて2025年6月に「合同会社610サン」を立ち上げました。

玄海町にそのまま住み続けて起業という道を選んだのは、美しい浜野浦の棚田をずっと守っていきたいから。そして、この5年間でたくさんお世話になった方々と玄海町で生きていきたいからです。



玄海町に暮らして5年。「早寝早起きで健康的な暮らしをするようになりましたね」と武藤さん。
 

浜野浦の棚田は「日本の棚田百選(1999年~)」、「恋人の聖地(2007年~)」、「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ(2022年~)」に選ばれて、年々その知名度は上がっています。

一方で、高齢化や担い手不足で、耕作者は少しずつ減少しているのです。棚田での米づくりは手間ひまがかかりますし、労力に対して多くの収量は見込めません。だからハウスみかんやいちごなど、ほかの生産物を栽培している農家さんも多いんですよね。

戦国時代から400年続いた浜野浦の棚田には、現在212枚の田んぼがあり、その耕作率は約70%です。ただ、今のままだと10年後、20年後にはどうなっているのか分からない。浜野浦のみなさんも気にしています。そのため「合同会社610サン」では、棚田の保全を真ん中にした事業を展開していきたいと考えたのです。
 


日常に美しい棚田がある浜野浦の風景を未来につなぎたい!
 

ちなみに棚田は、上の田んぼから水を貯めて、下の田んぼへ水を送っていきます。どこかひとつの田んぼが耕作放棄地になると、水もそこでストップしてしまう。そのため、すべての田んぼが機能して、米が育つ環境を保つことが重要なんですよね。


ーー武藤さんはこの5年間で、浜野浦の棚田に欠かせない人物に成長されて、その上での起業だったのですね。
それも先ほどお話したような浜野浦のみなさんのサポート、そして玄海町からのサポートがあってのことなんです。

たとえば、就任したての頃は、当時、町役場で棚田の担当者だった筒井健太さんとふたりで浜野浦に行き、地域の方に紹介してもらったり、一緒に地域活動へ参加したりしていました。そんな下地があったからこそ、すぐに浜野浦になじめたのだと思います。また、町役場の一員として必要となる予算の組み方なども筒井さんに教えてもらいました。



稲刈り後に浜野浦の棚田を眺めながひと休み。
 

実は、その頃から筒井さんと「卒業後に起業できたりするのかな?」と話していたんです。すると、ほかのエリアで棚田の事業を行っている企業の情報を教えてくれるなど、いろいろと相談に乗ってくれて心強かったです。

また、玄海町のまちづくりに携わる方たちからも、起業する時にはどんな手続きをすればいいのか、どんな書類を作成すればいいのか、たくさんレクチャーしてもらいました。「合同会社610サン」にも、玄海町で知り合った3名の方がアドバイザーとして名を連ねてくれて、出資もしてくださったんですよ。

「武藤くんの将来を考える会」と名付けた会合も開いてくださって、町の人に応援してもらっています。本当にありがたいですね。


ーー頼れる方がたくさんいて、何よりですね! でも、武藤さんもみなさんに頼られているのではないでしょうか?

そうだとうれしいですね。今、浜野浦の棚田を守る「浜野浦夕日組合」の副組合長をさせてもらっていて、組合長の松本長喜さんのもとで事務作業などを手伝っています。

また、町の飲食店から「今日、人手が足りんけん、武藤くん、ちょっと手伝いにきて?!」と頼られることもあります(笑)。私もみなさんにいっぱい頼っているので、頼り、頼られる関係がこれからも続くといいなあと思っています。



みんなで稲刈り。「大切に育てたお米です。自分で米づくりをするようになって1粒たりとも残さず食べます!」と武藤さん。


ーー(ここで「浜野浦夕日組合」の組合長、松本長喜さんが登場しました)長喜さん、こんにちは! 武藤さんの印象や浜野浦のみなさんにとって武藤さんはどんな存在なのか、教えていただけますか?
長喜さん:そうねえ、最初は若いけん、心配しとったんですよ。棚田にばっかり来とらんで、早くどこかに就職しろ!と言っていました。そうしたら今度は起業をすると言い出して、また心配事が増えましたね(笑)。 

武藤さん:浜野浦のみなさんには、親より心配してもらっています。本当のお父さん・お母さん、おじいちゃん・おばあちゃんみたいな感覚で、おつきあいさせてもらっています。


野浦夕日組合の組合長の松本長喜さんと武藤さん。年齢の差があっても棚田への思いは一緒で話がつきません。

長喜さん:あとはねえ、浜野浦にとって武藤くんは「空気のような存在」。いつも棚田にいるのが当たり前になっている。それでいて、棚田になくてはならない。いなくなっちゃ困るねえ。

武藤さん:そんなふうに言ってくれるんですか。うれしいなあ。


ーーおふたりの信頼関係が伝わってきて、こちらもうれしくなります。さて、武藤さん、これから「合同会社610サン」でどのような事業を展開されていく予定ですか?
まずは、現在12人いる棚田の耕作者を減らすことなく、現在の棚田を保っていくことが目標です。それと同時に、棚田を守る仲間づくりをしたり、みんなが集える場所をつくったりしたいですね。

その足がかりとして、2026年3月29日に「浜野浦の棚田 ~現地説明会~(詳細は下記に掲載)」を開催します。玄海町内外のみなさんに浜野浦の棚田について興味を持ってもらうきっかけづくりにしようと考えています。


夕日が映る浜野浦の棚田。棚田に水が張られた田植え前後だけの特別な景色です。
 

たとえば、普段は入れない棚田の中の散策、耕作者のみなさんとの交流、歴史的ストーリーの紹介などを考えています。いつもは上から眺める棚田ですが、説明会では下から見上げて迫力ある棚田の姿も体感できますよ。

また、浜野浦の棚田は「東京2020オリンピック聖火リレー」のコースでもあったのですが、棚田のなかには1964年の東京オリンピックの年につくられた通称・オリンピック橋も存在します。そんな知る人ぞ知るスポットも紹介していきます!


ーー棚田に興味がある人はもちろん、美しい景色の写真を取りたい人、歴史が好きな人にも響きそうなプログラムですね!
そうなんです。まずは広く浜野浦の棚田のことを知っていただき、それから棚田の保全に関心を持っていただけたら最高ですね。ここ浜野浦で400年続く棚田を楽しみながら、みんなで守っていきましょう!

また「合同会社610サン」では、棚田で育てた夕日芋(からゆたか)の販売などにも取り組んでいきます。今後の活動はInstagram(@mutosun_6103_llc)でも発信していきますので、ぜひチェックをお願いします。

 

ーー今日は素敵なお話をありがとうございました。今後のご活躍にも期待しています!
 

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浜野浦の棚田 ~現地説明会~ 概要
・日時:3月29日(日)13:00~15:00
・場所:浜野浦の棚田展望台、その周辺、浜野浦公民館 
・参加費:無料(限定30名)
・参加特典:浜野浦の棚田限定 缶バッチ等
・持ち物:飲み物、タオル、雨具(天候に応じて)
・服装:動きやすい服装、帽子、靴
※天候により、内容が変更になる場合があります。

【詳細・申し込みはこちら】
https://forms.gle/JJ5t7NYuC6VWw6EC9


 

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