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遊休農地に、もう一度いのちを。企業と市が挑む、農地活用の実証実験レポート

2026年02月27日 11:00 by 深江久美子

福岡市内では、農業者の高齢化などを背景に、手入れされないままの「遊休農地」が増え続けています。この課題に向き合うため、福岡市と企業が連携し、農地活用の促進事業を行いました。今回は、株式会社LANDICホールディングス、株式会社 O・B・U Company、株式会社ホンプロの3社が参加した実証実験の一環として行われた収穫体験を取材しました。冬らしい冷たい空気に包まれる中、47名の参加者が寒空の下に集合。畑には、立派に育った白菜やキャベツ、そして参加者の笑顔があふれていました。


●企業が畑へ。実証実験としてはじまった農地活用
今回の舞台は、福岡市西区某所にある畑。実はここ、もともとは田んぼだった場所だそう。砂地で水はけがよく、白菜やキャベツなどの野菜づくりに向いた土壌です。9月22日にキャベツ、10月6日には白菜の植え付けとキャベツの追肥を実施。そして年を越した1月20日、いよいよ収穫の日を迎えました。


●いざ収穫体験!畑に広がる土と葉の香り
参加者は動きやすい服装に軍手をはめ、すっかり“戦闘態勢”。畑に立つと、土や葉の青々とした香りがふわっと広がります。収穫するのは、白菜・キャベツを中心に、JAファーム福岡さんのご好意でじゃがいもや大根も!収穫した野菜を段ボールで入れるところまでが作業になります。


●白菜・キャベツともに各1000玉ずつ収穫
まずは、白菜・キャベツの収穫から。畑に並ぶ野菜は立派なものが多く、収穫をはじめる前から期待が高まります。白菜は、上からそっと押してみて、ずっしりと固く巻いているものが食べごろ。キャベツは外葉をめくり、付け根を包丁で切り取っていきます。


作物の出来については「合格点」とのお墨付き。参加者は初めてとは思えないほど手際よく、次々と白菜やキャベツを収穫していました。


思いのほか大きく育った野菜に歓声が上がります。寒さにあたることで野菜の甘みが増すことや、畑に立って初めて知る“農業のリアル”などにも耳を傾ける様子も見られました。
 

●畑で味わう、収穫のよろこび
中には、収穫したばかりのキャベツをそのままかじる参加者も。その姿に声をかけえると、私も一枚いただきました。みんなが育てたキャベツは甘く、みずみずしい味わいでした。参加者からは「楽しかった」、「とても良い体験になった」といった声が多く聞かれ、畑は自然と笑顔と会話が広がるコミュニケーションの場に。
 

普段は、段ボールに入った野菜しか知らない“消費者”としての立場。しかし、苗の植え付けから関わり、成長を見守った野菜には、自然と愛着が湧きます。この体験そのものが、農業への理解を深める貴重な機会になっていたようです。


●なぜ今、企業が農地に関わるのか
今回の事業の背景にあるのは、深刻な農業人口の高齢化。5年先には、多くの農業者が後期高齢者になると言われています。とはいえ、企業が新たに農業へ参入するには、知識や機械、燃料など多くのコストがかかり、ハードルが高いのが現実。そこで福岡市から、農地管理を担うJAファームへ相談が持ちかけられ、今回のような実証実験が実現しました。


●これからの農地活用
「福岡市内には企業や消費者が多くいる一方で、農地を引き継ぐのはとても難しい状況。農業者だけで守るには限界があり、ほかの農家さんの規模拡大による受け皿にも限界がある」と話してくれたのは福岡市農林水産局の永田課長。本格的な企業参入は簡単ではないものの、社員研修や福利厚生、飲食店での活用など、様々な関わり方が考えられるといいます。


「農業者でない市民や企業にも、農地を守ってもらう仕組みを作っていきたい。まずは、こうした取り組みを市内のさまざまなエリアへ広げていくことが目標です」と話してくれました。


遊休農地の増加という課題に対し、行政と企業が一歩踏み出した今回の実証実験。収穫の喜びや学びを共有することで、農地は「負担」ではなく、「人と人をつなぐ場」へと変わりつつあります。


すぐにすべてが解決するわけではありません。それでも、こうした取り組みに参加する企業が少しずつ増えていけば、農地を守り、地域を支える新しい形が見えてくるはずです。畑に広がっていたのは、立派な野菜と、満面の笑顔。この小さな実践が、未来への大きな希望につながることを感じさせる一日でした。
 

取材・文:深江久美子
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