日々是食欲

2013年福岡飲食業界トレンド事情

2013年12月12日 08:00 by 弓削聞平

さて2013年も残り半月ほど。私もそうですが、誰に聞いても「早いね〜」と言います。たまには「そうかな〜?」という反応があってもいいんじゃないかと思うのですが、本当に皆が皆早いって感じてるんですよね〜。そんなスピーディな1年のなかにも、福岡飲食業界にはいろんなことがありました。福岡だけのこと、全国的なことといろいろですが、少し振り返ってみましょう。

まずお酒でいうと日本酒と日本ワインの動きは顕著でした。これは東京などでもそうですが、どちらも少し前から若い造り手が熱心にやってることもあり、秀逸な商品が数多くリリースされるようになっています。それに伴って、酒屋やメディアもそのことを消費者や飲食店店主に伝え、いつしかそれらをメニューに加える店が増えたり、あるいは専門店がオープンしたりしてきました。日本酒についていえば、3年ほど前に〈ソワニエ〉では「女性の日本酒ファンが増えている」という記事を掲載しており、その頃にはもう兆候はあったのですが、それ以降も着実に裾野が広がっています。また、日本のワインも以前は観光客のおみやげのようなワインが目立っていましたが、最近はそうではなく葡萄や醸造にこだわったおいしい国産ワインが増えています。薬院に「ユスク」というほとんど日本ワインだけをラインナップしている店ができたりしましたし、大名の「アジート」あたりは、まさに日本酒とワインという蒸留酒バー。しかも最近はワインもあきらかに日本のワインに傾倒していて、トレンド狙いだったわけではなく、自然とトレンド最先端の店となっています。
また、同じお酒ではクラフトビールもじわじわキテます。こちらも日本ワイン同様、以前は観光客目当てのおみやげ地ビールという印象だったのですが、最近は品質重視のおいしく、おもしろいものが全国にたくさんあります。そしてそれらが少しずつ居酒屋のメニューにも出てきたり、舞鶴の「Ales」、高砂の「PADDY」、大名の「BRIM」、そしてつい最近東京から出てきた春吉の「goodbeerFAUCETS」など、国産クラフトビールの専門店も増えてきました。この動きは2014年も続くに違いありません。

もう1つ飲食業態として増えたな〜と思うのは「焼き」の店。洋食でいえば「グリル」。薬院の「五(ごん)」や警固の「百式」をはじめとした炉端焼きの店も増えつつありますが、それだけではなく、「素材を炭火で焼いてその素材の味を味わってもらう」という店がここ数年増えつつあります。たとえば塊肉のグリル、あるいは野菜を炭火やピッツァ釜で焼く、などなど。あるいは福岡ビルにできたカキ小屋もめちゃくちゃ繁盛してます。これら「焼き」というテーマは東京でも数年前から魚介、肉など食材を絞り込んだ焼き業態として注目されているので、まだまだ福岡でも増えそうです。

また、福岡はほんの数年前まで関東や関西のチェーン系飲食点が進出しづらい街と言われていました。個人店の小バコの力、あるいはコスパにシビアで、おいしさも求めつつリーズナブルさも求める福岡人は、チェーン系の味には満足できず、福岡に進出しても成功するのは難しいというのが業界の定説だったのです。ところがこの1、2年、もしかしたらリーマンショックの少し後くらいからかもしれませんが、福岡にも外食業界の不況が襲ってきて、消費者の財布がとても厳しくなってきました。その影響もあるのか、安さをウリにする店も増えてきて、そういう店が以前より集客するようになってきたのです。さらには不動産の状況などもあるのでしょう、ここのところ関東の大手、準大手が福岡中心部や博多駅周辺の大バコを借りて、低価格をウリにする店を出し成功しはじめました。もちろんそこには業務用の加工品の質が上がったこともあるでしょう。いわゆるバイトでも簡単に作れる業務用のレトルトや冷凍商品の質の向上はすさまじく、そんなにおいしくないものがなくなってきたのでしょう。いろいろな社会や街の環境・条件の変化により、福岡は実力のある個人店じゃないと商売できないという神話はくずれてきているようです。ちょっとさびしいですね。来年はあの「ミシュラン」も福岡版を出すという噂です。ぜひとも正しい評価を下したものになるといいなと願っています。もっとも、飲食店の評価に客観的な評価ってあるのか、あるいは必要なのかとも思います。料理も価格も内装も店主の人柄も、人には好みがあり、その好みにより満足度はまったく違ってきますからね。

 ところで今年最後の〈ソワニエ〉はもうご覧になっていただけましたか? 今回の特集は「もてなし上手になりたい」です。もてなし上手な方々へのインタビューや、もてなしテクニック、そしてもちろんもてなしに最適な店の紹介など、今回も情報満載ですので、ぜひ読んでみてくださいね。きっとあなたの役にも立つことでしょう。




1・2は平尾の人気炉端焼き店「タキビヤ。」

取材・文:弓削聞平
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