日々是食欲

心底惚れ込める寿司屋を見つけるのは難しい

2013年04月11日 08:00 by 弓削聞平

今年は桜の開花が早かったですね〜。ぼくの周りにも顧客を集めて毎年恒例の花見をする店が多いが、そういうのって早めに告知をして皆のスケジュールを調整するから、急に日程を変更することもできず、葉桜の頃やもう散ってしまってからやらざるをえない店もあったようだ。しかも4月6日、7日は天候も悪く、この週末に花見を予定していた店は厳しかっただろうなぁ。なにせ、人数が多い宴だと、「雨だから店で飲みましょう」というわけにもいかないしね。みんな、どうしたんだろう?

さて、ここのところ仕事で立て続けに西中洲のお寿司屋さんを巡る機会があった。改めて思ったのだが、これほど価格や商品や雰囲気にバリエーションがあり、それぞれにマーケットを成熟させている業態も珍しいのではないか。1皿、つまり2貫で100円の回転寿司もあれば、住宅街で近所の住人を対象にし出前などをやる店もあり、さらには1人2万円近くするハイクラスな店もあり(東京だとさらにその差は広がる)、ファミリー、セレブなど、それぞれの対象に向けて商売が成り立っている。

またお寿司屋さんは料理の味だけでなく店主との相性が、お客の満足度に強く影響する業態だ。もちろんこれは他の業態でもそうなのだが、お寿司屋さんは特に満足度に与えるその点の比率が高い。それだけに自分にピッタリのお寿司屋さんを見つけることは簡単ではない。総じて価格が高く、たとえばカフェやカレーのように日常的には行けないから見つけるのが容易でないということもあるだろう。ぼく自身、すごくおいしい店は何軒も知っているが、相性ピッタリで居心地最高というお店はそうはない。難しいのは、相性の問題だから自分が好きでも他の人がそうとは限らないという点だ。ラーメンは味の好みの個人差が大きいのでおいしいお店を教えるのが難しいアイテムなのだが、違う意味でお寿司屋さんも教えるのが難しい。いや、おいしいということでいえばラーメンよりは教えやすいかもしれないが、それと満足度が一致しないというところが難しい。ラーメンの場合は逆に味が満足度に占める比率は高いのでわかりやすくはあるのだが……。

ぼくは焼肉に関しては飯倉の「三馬力+1/2」が一番好きだ。もちろん味も好きだが、これは店の雰囲気、今までのおつきあいの蓄積、価格などを含めて、個人的にはゆるぎない存在だ。しかしこれはいわゆるミシュランの★の数のような客観的な評価ではない(ミシュランが客観的評価とも思えないが)。いや、そもそも飲食店における客観的評価ってなんなのだろう? 結局、飲食店は店を出たときの満足度がすべてではないか。その判断基準は相性もあるし、行った日によっても違う。もちろん誰にとってもすばらしく、いつ行っても料理もサービスもブレがないというのがベストだろうが、そうは行かないのが飲食だ。

話が少し逸れたが、ぼくはまだ焼肉における「三馬力」のようにゆるぎない位置づけのお寿司屋さんには出会えてない。当然、めちゃくちゃうまいと思えるお店はたくさんあるし、そこに食べにも行き「やっぱ、うまいな〜」と心底思える。しかしうまい店と好きな店は違うのだ。女性でもすごい美人で性格もいい人が自分にとって最高かというとそういうわけではない。それと同じなんだろうな。そういう意味では女性以上に、“好みのタイプ”はわかっている。食べて呑んで1万円以内で○○レベルのお寿司が食べられる店。そして店主の性格は……。理想が高いというか、どっちかというとぼくの間口が狭いってことか? まだ出会えぬぼくにとって最高のお寿司屋さんはどこにあるのだろう。また、これが難しいのは、自分が年をとったり、店が年月を重ねるとまた変化する場合があるということだ。今はそれほどしっくりきてなくても5年後には相性バッチリになってる可能性もある。単純な話、20代のときは客層などかしても自分が浮いていた店でも、10年経っていくと店になじむこともあるし、食の好みも若いときと年を重ねてからでは変わったりもする。そういうのがまたおもしろい。
「すしざんまい」のランチは寿司が15貫と茶碗蒸しとあおさみそ汁(でかい)に白身フライまでついて1,000円だった〜。

取材・文:弓削聞平
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