日々是食欲

突き出しで“つかみ”はOK

2019年05月09日 12:00 by 弓削聞平

 居酒屋などで席に着くと(あるいはオーダーを済ますと)多くの店で頼んでないのにつまみが一品出てきます。これが突き出しです。関東の方ではお通しと言うことが多いようですが、関西以西は突き出しと言うことが多いようです。この突き出しについては、頼んでないものは出さないと欲しいとか、いらないときは断れるのかなど、いろいろな論争があるようですが、ここではそれは置いておいてその中身についてです。突き出しは本当にお店によって千差万別で(料金も差がありますが)、仕入れた加工品をそのままお皿に盛って出すところもあれば、お店で作った“料理”を3点盛りにするところもあります。この差は実はかなりお店にとって大きくて、多少手間暇はかかりますが、おいしいもの、見た目の華やかなものを出すべきです。突き出しというのは、お客さんが最初に目にし、口にする料理です。ここでまず出てきたときに「うわー、何これ、すごーい」と思わせ、実際にそれがおいしいと、その後に出てくる料理もきっとおいしいものが出てくるに違いないと思うものです。その先入観って意外に大事なんです。ですから、お店側はこの突き出しの原価や手間をケチってはいけません。春吉の「えぶりお」はオープン当初から、突き出しとして豆皿に入ったつまみを1人につき7種類ほど出しており(タイトル上画像)、もうほぼ100%、お客さんは喜び、写真を撮り、SNSにアップします。そしてテンションはあがり、ワクワクします。飲食店は客観的なおいしさももちろん大事ですが、要は食事中の気分、そして店を出るときの満足感こそがその店の評価になります。それを十分理解し、突き出しを軽く考えることなく、“つかみ”を重視する店は間違いなくいい店です。

 

上人橋通りの居酒屋「ふじ」の突き出し、自家製さつまあげは折り紙で作った唇にはさんで出てくる。

 

大宮のバー「喫酒」は薫製うずらの玉子など4点盛り。

取材・文:弓削聞平
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