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日々是食欲
実は孤独ではない“おひとりさま”
2015年03月12日 08:00 by 弓削聞平
仕事のほとんどがグルメ関係になって早いものでもう15年だ。昼と夜はほとんど外食。夕食の後もいろいろな店に出かけるのが日常だ。そんな私だが、実はフリーランスになった40歳までなじみの店の1軒すらなかったし、1人で店に行くなんてまずなかった(ラーメン屋とかカフェは別)。ちなみに、フリーランスになった当初は、グルメというジャンルに特化するなんてことは夢にも思っておらず、ノンジャンルで編集の仕事をしていきたいと思っていたので(というか、グルメに限らずスポーツでも映画でも、メディアの少ないローカルでジャンルを特定したライターやエディターは食っていけない)。
それはさておき、ランチならともかく、今のように夜、1人で居酒屋に行ったり、バーに行ったりすることを始めたのは会社員を辞めて以降だ。もちろん元々社交的ではないし、小心者ゆえに(ほんとです)、当時初めての店に1人で飛び込むなんてことはできるはずもなく、最初誰かと出かけた店で、お店の人や周りのお客さんと話すようになり、徐々に1人でも行けるようになるというパターンだ。
いわゆる「おひとりさま」というと、テレビ番組「孤独のグルメ」のように黙々とごはんを食べる(あの主人公は下戸なので酒は飲まない)のような光景を思い浮かべる人も多いかと思うが、実際にはたいていお店の人が話しかけてくれたり、隣のお客さんに話を振ってくれたりするので、意外に完全に1人という状況でもない。しょっちゅう1人で食事や飲みにいく人も、実は店に行けば一人ではないことがほとんどだ。むしろ2人や3人で行くと、そのグループ内だけの会話で終わるところが、1人でいくことにより店主やはじめての人と親しくなる可能性は高くなる。実際私も、14、15年前に通っていた店で知り合った常連やスタッフたちとの交流が今でも続いており、あの頃できた仕事関係なしの友人らは今もかけがえのない財産だ。
職業柄もあって「女性が1人でも行ける店を教えてください」と言われることがよくある。もちろんカウンターの位置、店主の人柄、客層など、おひとりさまに適した店というのはあるが、いずれにしても最初は友達と一緒に出かけて、店の人と話をすることがスタートだと思う。いや、もちろん最初から1人でガンガン行ける人もいるんだけど、そういう人はそもそも私にそういう質問をしてきたりはしないものだ。そこで共通の話題、知人などで話ではずむようになれば、1人で行っても店に入ればもう1人ではなくなる。これこそおひとりさまの楽しみ。ほとんどの人は本当に1人になりたくて1人で店に行くわけではない。くつろげて、やすらげる店や人に会いに行くのだ。
スタッフとの距離が近いのも、“おひとりさま”向きの条件の1つだ。
取材・文:弓削聞平
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