日々是食欲

最近の福岡のカフェ事情は〈ソワニエ〉で

2014年03月13日 08:00 by 弓削聞平

2000年だったかと思うが、雑誌「ブルータス」でカフェの特集があり、当時一世を風靡した「バワリーキッチン」という店が掲載されていた。それまでカフェといえば、女子ご用達のコーヒーとスイーツ、それにカフェごはんという、ぼくらは手にすることがない「Hanako」なんかでよく掲載され、イメージ的には表参道、代官山みたいなエリアが似合う業態と認識していたのだが、その頃から明らかにカフェという言葉の意味は変わり始めた。バーでもない、(それまでの)カフェでもない。そしてそこは飲食だけではないエンタメやカルチャーの交流・発信の場として機能も持ち始め、「オモシロイコト」がカフェで体験できた。それはもしかしたら昭和時代に文化人が集ったというカフェ(喫茶)のポジションに戻ったのかもしれない。

しかし「ブルータス」の特集より2年早い98年、薬院(感覚的には今泉だが)に「カフェ・ソネス」がオープンしていた。当時のあのエリアは今と違ってまだひっそりしたもので、今泉にポツポツと店ができ始めたか、というくらい。しかも国体道路よりではなく、少し薬院駅寄りで、こんなところで飲食店、しかも客単価の低いカフェが成り立つのだろうかと思ったものだ。

「ソネス」のオープンから少し遅れて「カフェ・テコ」が、そして次に「パロマグリル」がオープンし、いずれも毎日昼夜を問わず大盛況だった。それぞれコンセプトもカラーも違うが、まさにその3軒が福岡のその後にカフェシーンを牽引してきたのは間違いない。

さて、グルメ雑誌〈ソワニエ〉の3月20日発売号は「福岡の街を元気にする、なごみカフェと美味しいコーヒー」という特集だ。最近のカフェにあの頃のようなインパクトは感じてなかったのだが、実際にリサーチしてみると、派手ではないが個性的で上質なカフェがたくさんできていることに気づかされた。

昨今はコーヒーの質にこだわった店が増えているのも1つの傾向だ。数年前から街のあちらこちらに自家焙煎のコーヒー豆の販売店が増えているのはみなさんもご存知かと思うが、それとともにスペシャルティコーヒー(生産国での栽培・収穫・生産・品質の管理が行き届いた豆で抽出する、風味・酸味に優れたコーヒー)に特化したカフェも増えてきた。福岡でその走りは豆の販売店である「ハニー珈琲」で、その豆に感動してカフェを始めたのが春吉の「マヌコーヒー」、さらに「マヌコーヒー」でバイトして目覚めたというのが「RECコーヒー」だ。

また福岡には全国的にも有名な店がいくつもある。護国神社近くの「美美」は言わずもがな。春日の「豆香洞コーヒー」の後藤さんは昨年バリスタのコンクールで世界一になったし、前述「RECコーヒー」の岩瀬さんはジャパンバリスタチャンピオンシップで3位になった経歴をもつ。もちろん他にもエイジングコーヒーにこだわりをもつ平田さん(元カフェ・ド・カッファ店主)、テイスティングで世界3位になった「蘭館」の田原さんをはじめ、受賞の有無にかかわらず、コーヒーに熱き思いをもつ人が多い。

そんな福岡のカフェ・コーヒーの話を詰め込んだ〈ソワニエ〉。今号もぜひご一読ください。

そうそう、余談ながら「ハニー珈琲」店主である井崎さんの息子さんは、現在、全国的にも有名な「丸山珈琲」に務めており、なんとジャパンバリスタチャンピオンシップで2連覇中だ。豆の販売とバリスタで役割は違えど、そんな親子の対談なんかもいつか〈ソワニエ〉に載せることができたらいいなぁ。


【1】独自の方法で毎日焙煎する「美美」の森光さん。
【2】グルメマガジン〈ソワニエ〉は隔月発行。

取材・文:弓削聞平
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