日々是食欲

炉端焼きをはじめとした「焼き」業態に注目

2013年11月14日 08:00 by 弓削聞平

街はそろそろクリスマスイルミネーションが彩り、飲んでるときの会話も「忘年会」とか「おせち」とか「年末年始の過ごし方」など、年の瀬を実感する話題が増えてきました。私の最近の定番のセリフは「この前おせち食べた気がするのに……」。いや、冗談ではなくほんとにそんな気がするんです。そういえば、昨年はこのコラムでもおせちについて書きました。名店のおせちを1人1つ、いや2、3人に1つ持ち寄って新年会をやりたいというような野望を書いたのですが、現実はなかなか難しく、今年も地味〜な正月になりそうです。

〈ソワニエ〉はすでに11/20発売の編集業務は終わり、今は1/20発売の編集、ならびにその先の仕込みなどに入っています。〈ソワニエ〉にも掲載し、前回このコラムにも書いたサバサンドは、その後じんわりとではありますが話題に上ることは増えてきています。今月もとあるテレビ番組でサバサンドの企画をやるという話が入ってきていますし、先日キャナルシティであったパンのイベントに出店していた荒江の「ニシパン」はサバサンドが何百個も売れたということでした。〈ソワニエ〉では11月発売でも新たにサバサンドをはじめた店など4軒を紹介していますし、私の方で「博多サバサンド応援団」というフェイスブックのページも作っていますので、よろしければそのページを開いて「いいね!」をクリックしていただければと思います。https://www.facebook.com/hakata.sabasand

さて今年の総括は12月の本コラムにとっておくとして、最近の動きを1つだけ挙げてみたいと思います。薬院駅近くにあった鶏すきの店「とりのこ」が11月から内装にも手を入れて業態を炉端焼きに変更。店名も新たに「氷炭(ひょうたん)」としてリスタートしたのですが、近年にわかに炉端焼き業態が増えてきています。もちろん炉端焼きという業態はだいぶ前からあるにはあったのですが、いつしかそれが普通の居酒屋になったりして「焼き」をメインにした店というのを明確に挙げづらくなってきていました。そこに彗星のごとく現れたのが3年ほど前に大丸の近くにできた「雷橋」でしょう。以前あった炉端焼きというのはキッチン内で素材を焼いて、それを大きな杓文字でお客の前に提供するというスタイルでしたが、ここはカウンターのみで、お客の目の前に小さな焼き台があり、スタッフがそこで焼いてベストの状態に焼き上がったら「どうぞ」とお客に差し出す(といってもほんの数センチずらすだけ)といったスタイルで、そのライブ感は実に新しく、瞬く間に人気を博しました。時を同じくして関東でも「素材を焼く」という業態がトレンドになってきて、その波なのか、福岡でも徐々に“炉端焼き”をウリにする店が増え、それぞれお客を集めているようです。

なかでも平尾駅からほど近い筑肥新道沿いにできた「タキビヤ。」はそう大きな店ではないものの、カウンターにテーブル席が数卓あり、いつのぞいてもほとんど埋まっているという状況です。ここは「雷橋」とは違い、スタイルとしては通常の居酒屋と同じなのですが、キッチンの最も目立つ場所に囲炉裏があり、そこで魚などを炭火で焼き上げて提供しています。また、その“ステージ”ではたびたび天井近くまで炎が上がります。なにかと思えば、名物料理のカツオの藁焼きです。火の付いた藁で瞬間的に炙るこの料理は、来たお客は必ず注文するここのスペシャリテです。
 他にも警固にできた「百式」や「五(ごん)」も同業態だし、赤坂にできた「アブリーヨ」は炭焼き酒場と称しており、純粋な炉端焼きとは少し違いますが、炭火焼き業態の1つとして今後が期待されます。他にも野菜のグリルを打ち出した店や肉を塊でグリルする業態なども出てきており、「焼き(グリル)」業態の勢いが出始めているのは間違いありません。


【1】福岡における炉端焼きブームの火付け役ともいえる「雷橋」。 【2】「タキビヤ。」の藁焼き。魚はそのときによって違う。

取材・文:弓削聞平
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