日々是食欲

町に酔っぱらいがあふれる「酒まつり」

2012年10月11日 08:00 by 弓削聞平

 10月7日、「ソワニエ」の取材で広島の「酒まつり」というイベントに行ってきた(なんとストレートな名称なんだ)。東広島市の西条という町は、日本酒の蔵が集まっている町として有名なところで、平成2年からこのイベントが行われている。東広島市は人口20万人くらいの市だが、なんでも2日間で人口を越える集客があるそうだ。すごいな、しかし。
 今回は渡辺通の日本酒酒場「酒肆 ちろり」のご夫妻とカメラマンとともに参戦。元々、新幹線で広島まで行って、そこから在来線で最寄り駅である西条へ、というルートを考えていたのだが、「ちろり」に来られた広島のお客さん情報によると、広島→西条の在来線はとんでもなく混むとのこと。特にカメラマンは重たい機材も持っており厳しいのではないかということで、急遽そのお客さんのおすすめルートである「新幹線で東広島に行って、そこからタクシー」というルートにした(タクシーは1,680円だった。4人分と思えば実に安価だ)。東広島はこだましか止まらないので本数は少ないのだが、混雑を考えるとこれは大正解だった。やっぱ、地元の人の情報は確かだな〜。
 さて、まずはメイン会場の「酒ひろば」へ。ここでは1,500円(前売り料金)で入場すれば広島の酒はもちろん、なんと全国約900銘柄の酒がいくらでも試飲できるのだ。開場は10時なのだがぼくらが着いたのは10時半くらい。開場前にはすごい行列ができているということだったが、「そんなにあせっていくことないやん」と思っていたのだが、我先に、の理由は会場に入るとおのずとわかってきた。
 ふだんは公園なのだろうか? そんな会場内にはずらりとテントが並び、そこには「九州・沖縄」「関東」「東北」などとエリアごとのサインがあり、そのテントにいくと今度は県ごとに酒が提供される。入場するときに酒リストと利き酒用のお猪口を1人に1つ渡されるので、好きな酒を求めてうろうろするわけだ。しかしなにせ900銘柄なので、もはやどれを選んだらいいのかはわからない。簡単な酒の説明はそれぞれに付いているが、それを読んでもわかるわけないし。なにせ専門家である「ちろり」のお2人でもほとんどが知らない酒ということだから、もう当てずっぽうで飲むしかない。しかし、それがまた楽しみでもあるのだ。
 驚いたのは花見のように、みなさんがブルーシートを持参し、場所を確保していること。試飲イベントだから、当然立ち飲みで多少休憩用の椅子があったりするのだろうと思っていたのだが、慣れている方々は、どっかり腰を据えて、どうかしたらつまみを持参したりして宴会を始めている。酒はお猪口1杯ずつしかもらえないので、その点は(宴会としては)かなりめんどうなのだが、持参したトレイに皆のお猪口をに乗せ、1人がそれで調達にいくという感じだ。
 当然ぼくらは座る場所もなければ座る気もないので、たまに会場内で売ってるつまみを買って、それをつまみにひたすら全国の酒を試飲しまくる。12時にはすでに真っ赤な顔で寝ている人もいたりして、会場内の酔いどれ指数は相当なもの。しかし、よくもまあこれだけ老若男女(外国人も)の酒好きが集まったもんだ。
 酒にも酔うが、人の多さにも酔い、昼すぎには「5,000人の居酒屋」という会場へ移動。こちらは入場は無料で、通常のお祭りのように、ステージイベントや露店が出ている。先ほどのような混雑はないが、こちらは全国の酒が飲めるわけでもないので、ここは軽く流して、今度は町のあちこちにある蔵を巡ってみることに。蔵は全部で9つあり、いずれも歩いて巡れる距離。それぞれの会場で、無料試飲をやったり、食事を出したり、限定酒の販売をしたり・・・。これまた楽しい。楽しいけど多い(失笑)。先ほどの会場に勝るとも劣らぬ人の波だ。そして「酒まつり」がやっているわけではないのだが、蔵と蔵の間の道沿いでは、近隣の店が店頭や店先の駐車場で料理や酒を売ったり、フリマのように酒とは関係のない雑貨や小物を売ったりもしていて、これもまた楽しい。
 ぼくらは立ち寄ってないが、その他にもイベント会場などがいくつもあって、ライブがあったり、子供向けのキャラクターショーがあったり、ともかく町全体がお祭り会場となるこの「酒まつり」。日本酒が好きなら一度は行ってみることをおすすめする。
 この西条のものほどではないが、毎年2月には福岡県の酒どころである城島町で「城島酒蔵びらき」というイベントがあっている。これも広場でその町で作っている酒を飲めたり、露店が出たりして、町内の各蔵に行けばそこで試飲や販売もやっているというもの。これも1年でこの町にこんなに人が来る日はないだろうというほど人気のイベントだ。天神から西鉄電車で行けてアクセスもいいので、こちらもおすすめ。天神付近でも最近は町を回遊する酒のイベントが多く、町を酔っぱらいが徘徊している光景を見ることはあるが、あの郊外のゆるい空気のなか、町中酔っぱらいだらけという非日常な体験は実に楽しい。ぜひ、来年は行ってみてください。




【1】「酒ひろば」会場内【2】蔵と蔵をつなぐ道もこのとおり【3】亀齢酒造の入口

取材・文:弓削聞平
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