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誰もが暮らしやすい都市を目指す「ユニバーサルデザイン体験会」に参加

2024年02月16日 16:00 by 山内淳

福岡市が推進する「ユニバーサル都市・福岡」の普及啓発活動の一環として「ユニバーサルデザイン体験会」を天神で開催。多様な方々を迎える商業施設のスタッフなどで構成されたWe Love天神協議会のメンバーと一緒にLOVE FMのDJ YURIさんも参加し、天神におけるユニバーサルデザイン(以下、UD)体験や意見交換が行われました。

まずは九州大学大学院芸術工学研究院准教授の張彦芳さんによるUDについてのお話。UDとは文化・言語・国籍の違い、老若男女や能力の違いを問わず、誰もが使いやすいようにデザインされた製品やサービスを指します。その製品やサービスを必要とする人が必要な時に利用できること、周囲の人がいつでも手を差し伸べられる心のUDを持つことが、多様性社会に大切といったお話を伺いました。

私たちの身近なものにもUDはたくさん。例えば、交通系ICカードの一部に切り欠きがあることでチャージする際に挿し込む向きが判別でき、シャンプーのボトルは側面にギザギザの突起があることでリンスと区別がつくようになっています。
 

続いては福岡市介護実習普及センターの作業療法士の八尋さんから、福祉用具の基本的な使い方やユーザーへの接し方を教わりました。白杖は視覚障がい者が使用していますが、全盲の方は2割ほどで、目で見える範囲が狭かったり色の認識が困難だったりする弱視の方など症状はさまざま。視覚障がい者に限らず、介助のニーズは人によって異なります。まずは何か困っていることはないか?手伝えることがないだろうかという目線で見守ること、そして「必要があればいつでもお声がけください」と側で見守っていることを伝えて安心してもらえるようにしましょう。

そして車いすのブレーキのかけ方やたたみ方など基本的な操作方法のお話、車いすの利用者は立っている人と視線の高さが異なることや、手の届く範囲が限られていることに留意するなど介助する際のポイントを伺いました。
 

UDと介助のレクチャーを終えると、白杖・車いす・高齢者の3チームに分かれてUD体験です。高齢者体験チームとなったYURIさんは、4カ所のポケットに各1kgの重りを入れて体力低下を疑似体験するベストを着用。YURIさんもその重さにビックリです。
 

そのほか、ひじやひざ関節の可動域が狭くなるサポーター、腰を曲げて前傾姿勢になるベルト、手首と足首にも重り付きベルトを装着します。高齢者体験キットを身に着けたYURIさんは、関節の動きや筋力の低下、姿勢の変化による不自由さを実感していました。
 

高齢者体験キットを身に着けたら、いよいよUD体験スタート。「私は子どもを抱いて歩くこともあるので重さには慣れているつもりでしたが、高齢者体験キットを着けていると思っていたよりも歩き疲れやすかったです」。二児のママであるYURIさんですが、普段とは異なる疲労感があったようです。
 

西鉄福岡(天神)駅北口の大階段。足元をしっかり確認しながら、一段一段ゆっくり上らないと大変そう。
 

大階段の壁側は一般的なストレートの手すりですが、中央はクネクネした波形の手すりとなっていることに気付きます。これにはどんな違いがあるのでしょうか?
 

「波形の手すりは、握る場所で取っ手のように持って体を引きつけたり、杖のように体を支えたりできます。体に自然と力が入るので、階段の上り下りが楽でした」とYURIさん。
 

次にやってきたのは西鉄電車の券売機前。ここでは白内障や黄斑変性などの視覚体験ができるゴーグルと、遮音による難聴体験ができるイヤーマフを装着します。「どこに何があるのか、何が書いているのか見えづらく、人の声や物音が聞こえにくいのも不安でした」。
 

白内障の視界だと、このように白く曇って見えるそうです。目的地への切符を購入するだけでも大変なことが分かりますね。
 

白杖体験チームは、アイマスクを着用して高速バスセンターまで歩いてみました。エレベーターの点字サインの高さやボタンの分かりやすさ、音声案内の理解のしやすさをチェック。白杖を持って歩きながら、手すりや点字ブロックの使い方を体験しました。
 

車いすチームは、天神地下街を通って地下鉄七隈線天神南駅まで移動。混雑した道を通る際の課題、券売機の高さや操作パネルが利用しやすいかをチェックしました。車いすの車輪が通りやすいように点字ブロックが一部途切れていること、エレベーターがホーム中央に位置していることなど、地下鉄七隈線には様々な人に配慮されたUDが取り入れられており、世界的にも優れた事例なのだとか。
 

各チームが体験を終え、それぞれに感じたことを付箋に書いていきます。ワークシートに貼りきれないほど、たくさんの感想が集まりました。


UD体験を通じて、体や心で感じるバリアと天神のホスピタリティで解決できそうなことについて、各チームで意見交換と発表を行いました。


今回の「ユニバーサルデザイン体験会」は、UDについて共有・拡散できるように体験型の「対話」を中心としたプログラムでした。参加者には体験会での気付きをそれぞれの職場に持ち帰り、天神エリアのおもてなし力向上に役立てていただきたいですね。


【「ユニバーサルデザイン体験会」を終えた参加者の感想】
・エレベーターを待つスペースに休憩できるベンチが欲しいと思った(高齢者体験)
・波形の手すりは、おしゃれなデザインのための形状だと勘違いしていた(高齢者体験)
・視覚障がい体験ゴーグルを装着すると見える文字の色やサイズが限られ、デジタルサイネージの白い文字が読みやすいことが分かった(高齢者体験)
・聴覚障がい体験イヤーマフを装着すると周囲の状況が分からず、遠くの声も近くの声も聞こえにくいので少し孤独に感じた(高齢者体験)
・アイマスクをして歩くと、路面のちょっとした傾斜やタイルが怖く感じた(白杖体験)
・介助者が周囲の情報を具体的に話してくれたので助かった(白杖体験)
・天神ビッグバンの工事期間中は点字ブロックも臨時だったりするので、誘導ボランティアが多いと助かると思った(白杖体験)
・さまざまな人が不自由なく通行するには、フラットな通路があるといい(車いす体験)
・車いすで通行するには、自分が思っていた以上に幅が必要だと分かった(車いす体験)
・車いすユーザーの視線の高さは子どもと同じくらい。案内表示は見やすく配置して、色やピクトグラムでインバウンドの方なども理解できるようにすることが大事(車いす体験)
 

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取材・文:山内淳
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