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待望の新作「無頼」を引っ提げ、井筒和幸監督が天神に登場!

2020年12月29日 08:00 by 深江久美子

社会では理不尽に爪弾きになっても、愛しきアウトローたちを力強く描いてきた井筒和幸監督。約8年ぶりとなる新作映画「無頼」が12月25日(金)に公開された。不器用だけど、欲望の昭和と虚妄の平成という時代をしっかり生き抜いたあぶれ者たちの群像劇だ。

LOVE FM内で放送されている「Departure Lounge」のゲストに井筒和幸監督を迎え、DJの藤田じゅんが真骨頂にして集大成といわれる「無頼」について聞いた。


――「Departure Lounge」は“空港のラウンジ”をイメージした番組名です。監督は色んな経験をされてきたと思いますが、海外でのエピソードをご紹介ください。

海外ね、しばらく行ってないな。「無頼」に合わせていうと、イタリアのシシリア島のパレルモ空港(ファルコーネ・ボルセリーノ国際空港)。映画「ゴットファーザー」の生まれ故郷です。物々しい島かと思って行ったら、とても良いところで観光の名所ですよ。最高だったなぁ。本場だから雲丹スパゲティが旨かったなぁ。そして、「ゴットファーザー」の風情を巡る旅をしたんですよ。

映画の舞台になった場所を旅するのは愉快だね。何回もニューヨークには行っているけど、JFK空港もラガーディア空港もあってね。アメリカでは飛行機をバス代わりに利用している。LAのラックス空港は広くてね、便を間違えて「え~!」って言いながら端から端まで走ったよ。
 

――1975年に監督としてデビューして、今年で45年。映画に対する思いを聞かせてください。

レンタルビデオもNetflixもないから、映画館に行くしかなかった。映画はエンタメじゃなくて先生だった。人の人生を観に行くわけだから、考え事をしに行くところ。人の人生に2時間付き合うから覚悟して行くよ。哲学の場だね。
 

――たった2時間で考え方が変わったり、影響を与えられますね。

ふわっとした映画も良いけど、B級ムービーの方が面白い時もある。昔のニューシネマは哲学しているんですよ。映画館の真っ暗な暗闇にいるんだけど、まったくの他人に触れるんだよ。勉強になるし、面白いよね。映画館は学校で教えない人生を教えてくれる先生だね。
 

(C)2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム
―井筒監督がいう「無頼」では、他人の人生である“アウトロー”に触れることができます。

アウトローは社会が貼っているレッテルであって、そういう男の稼業に身を投じるのはそれなりの境遇があるですよ。僕は若い時からそれをテーマに作家として追ってきたつもり。最初に撮ったのは大阪の不良たちを描いた「ガキ帝国」とか……。不良モノばかりやってきたよね。
出自や門地で、差別社会があるから、僕はそこに焦点を当てようと思って映画界に飛び込んだんですよ。僕も映画界に身を投じた異端者の一人ですよね。
 

(C)2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム
――「無頼」は背筋を伸ばすような緊張感が続いて、エネルギーを持って行かれるような熱量を感じました。

昭和は欲望の時代だから、欲望の限りを生きた奴らが一家を構えてく話だからね、身構えて観てしまうよね(笑)?いつ何が起こるか分からないし、マヌケな抗争もあるし。要は熱い昭和史だからね。

――1965年から始まって、バブル崩壊直までの事件や社会で起きたイベント・問題が織り交ぜて描かれています。

少年期、青年期、それからEXILEのまっちゃんが演じる大人期と3期に分かれていて長い話です(笑)。60年代は安保デモを描いているけど、主人公・正治は安保デモとか行く人間じゃないからね。高校生をカツアゲして弁当盗んでいる時代で、そいつに血を売りに行こうって言うんだよ(笑)。当時は実際にあったんだよ、売血って。ほかの映画でも描かれているよ。
 

――時代が細かく区切られていたようですが、その狙いは?

色づいていたでしょ? 10段階くらいに微妙に分かれているのよ。是非、劇場で見て欲しいんだけど、若い時はモノクロームに近く、少しずつクリアにね。高度経済成長とともに色づいていくんだ。
日本がどんなことにも欲を剥きだしに肥えていくのが昭和。コレステロールを貯めながら、公害を生み、ヤクザ者を生み、政治家も全員が肥えていく。
 

(C)2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム
――3,000人のオーデションを行ったそうですが、キャスティングについて教えてください。EXILEの松本さんを起用さたのは?

昭和顔。やさぐれ感というか、ぶっきらぼう感というかね。彼だったら30過ぎから60歳までメイキャップしたら演じられるだろうと。眼つきがいいでしょ?いかつい目つきじゃないんだよ。人の痛み、苦しみやひもじさを経験したことを知っている眼差しをね、マツくんは飲み込んで演じてくれましたよ。

 

――1人の男を通して描かれていますが、この作品に込めた思いは?

もう1回昭和にトリップしてみたら?欲望の限りを生きれなくなったでしょ?僕もそうだけど欲がなさすぎるよね。コロナ禍だと余計にね。
失われた世代と言われているけど、東京で若い子と接していても「俺ら、失ったものあるんですか?」って。元から経験していないから分からないんだよね。昭和はみんなギラギラしていた。人の不幸を顧みず、とにかく幸福になりたいみたいな。でも、連帯感とか人間同士の温もりもあった。画面(SNS)で悪口を好き勝手に拡散したりする時代じゃなかった。


――最後にメッセージをお願いします。

どうか、今年1年の憂さばらしに来てください(笑)。コロナにやられてどっこい生きているぞというのを画面で体感して、昭和にトリップして。晴れ晴れした年末と正月を迎えて下さい。

現在公開中の映画「無頼」は、KBCシネマ1・2にてロードショー!
 

■映画『無頼』公式サイト https://www.buraimovie.jp

■映画「無頼」公式twitter @buraimovie2020

YouTube「井筒和幸の監督チャンネル」
©2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム



【井筒和幸】(映画監督)
1952年、奈良県出身。奈良県立奈良高等学校在学中から映画製作を開始。
1975年、高校時代の仲間と作ったピンク映画『行く行くマイトガイ・性春の悶々』(井筒和生 名義/後に、1977年「ゆけゆけマイトガイ 性春の悶々」に改題、ミリオン公開)にて監督デビュー。上京後、数多くの作品を監督するなか、1981年「ガキ帝国」で第22回日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降「みゆき」(83年)、「晴れ、ときどき殺人」(84年)、「二代目はクリスチャン」(85年)、「犬死にせしもの」(86年)、「宇宙の法則」(90年)、『突然炎のごとく』(94年)、「岸和田少年愚連隊」(96年/第39回ブルーリボン賞作品賞を受賞)、「のど自慢」(98年)、「ビッグ・ショー! ハワイに唄えば」(99年)、「ゲロッパ!」(03年)を監督。
「パッチギ!」(04年)では、2005年度 第48回ブルーリボン賞作品賞他、多数の映画賞を総なめ獲得し、その続編「パッチギ!LOVE & PEACE」(07年)も発表。
その後も「TO THE FUTURE」(08年)、「ヒーローショー」(10年)、「黄金を抱いて翔べ」(12年)、「無頼」(20年)など、様々な社会派エンターテインメント作品を作り続けている。
その他、鋭い批評精神と、その独特な筆致で様々な分野に寄稿するコラムニストでもあり、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。

 

取材・文:深江久美子
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