2008年に結成されたアートユニット「アチケン」による美術展は今回で6回目。今回の展示は、メンバーであり、自然の中に暮らし、野菜を育て、収穫し、作品制作を行う美術作家・安倍智子の物語をもとにインスタレーションを行います。

昨今の田舎暮らしへの憧れではなく、美術とは何か、生命とは何か、問い続けることが、安倍と農業を繋ぎました。新しい畑を開墾するために、大型機械を使わず、すべて自らの手で行います。農薬や化学肥料を使わないために、季節のみならず、作物と土、虫たちの関係を考えなければなりません。

しかし、彼女にとって｢害虫」という概念はありません。捕食する虫と捕食される虫。それを捕食する動物。死んだ生命は土へと還り、また別の形で再生されます。また、月の満ち欠けも植物の生育の具合に強く影響を及ぼすそうです。

畑仕事が、野菜を取り巻く、ミクロながら広大なパノラマを見せてくれたとき、｢死と再生」の終わることのないサイクルの中に、作家自身も存在することに気づかされたのだそう。

｢春の雪」は、そんな安倍智子の日々の生活から滲み出た物語。今回、「アチケン」がその物語の世界観をもとにして、展示空間を視覚的に演出することを試みます。

会期を2期に分け開催し、2つの会場で異なるアプローチのインスタレーションを行います。生まれては朽ちていく、植物をメインの媒体とした空間表現を楽しんで。

※vol.2は2021年1月17日（日）～31日（日）に朝倉市「gallery cobaco」にて開催。