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【深夜の恋愛小説】優しく彼女を困らせる~「夏の夜空」~

2020年09月26日 23:00

天神サイトでは、秋の夜長を気楽に楽しく過ごせるように、ヨーロッパ企画のラジオ番組「こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM)」とコラボレーションして、9月限定で毎晩23時に【深夜の恋愛小説】と題して恋愛ミニ小説を連載。読んでいるほうがちょっと恥ずかしくなるような恋愛ラジオドラマ小説の世界をご堪能ください。



タイトル:「夏の夜空」

 

同僚に誘われて海辺のバーベキューパーティーにやってきた。

 

西の空では、夏の太陽が、本日の仕事を終え
東の空では、夜空がスタンバイしている。

 

 

 何人いるんだろう?

 

ざっと100人くらいだろうか?
その場に参加している人は、みなが知り合いというわけでもなさそうだが、どこかで誰かが知り合いのようだ。

 

社交的な同僚は、いつものようにグループの中心にいる。
人見知りの僕には、彼のような真似はできない。真似をしようとも思わない。

 

ただ、ノリが悪い奴になるのはごめんだ。
この場を適当に楽しんで帰れれば、それでいい。

 

 

「こんばんは。いらっしゃっていたのですね」

 

 

振り返ると、サングラスを頭に乗せ、エスニック柄のロングワンピースを着た女性が立っていた。
ドキッとしたのと同時に、彼女がお得意先の女性であることに気付いた。

 

そんな僕のリアクションを彼女は見逃さなかった。

 

「あれ~、こいつ誰だろ?って感じでした?」
「い、いや、そんなことないさ。」

 

「それはよかった(笑顔)」

 

 

彼女のちょっと意地悪な笑顔に夕日があたる。
僕はその無邪気な眩しさのなかに小さな安堵を感じた。

 

「ビールをとってきますね」
「レディーにそんなことをさせていいのか?」

 

僕は先ほどのお返しとばかりに、優しく彼女を困らせてみた。

 

「それじゃ、取ってきてもらおうかしら?」
「喜んで」
「ふふ、わたしも一緒に行きます。いいでしょ?」

 

僕らはビールがある方へと歩き出した。

 

 

これまで話す機会がなかったわけではないが、こうやって何も気にせず話をするのは初めてのことのようにおもえた。

 

 

それから、どれくらいったのだろう

 

 

いつの間にか、夜空には夏の大三角が輝き、僕らを照らす

 

いつもは見上げることのない夜空。

 

 

僕は夏休みに星座の研究をしたことを思い出し、彼女に話した
すると彼女はある星に指をさした。

 

 

「あの輝いている星は?」
「あれはベガっていうんだ。すごく綺麗に輝く星だよ」
「きれいだなぁ、星空がこんなに綺麗だなんて、いつもは気付かなかった」

 

 

僕は頷きながら、もう1つの気付かなかった星に、今夜初めて気付く

それは、織姫星を指さした、僕のすぐとなりに座る星に。

 

 

おしまい
 



こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM) 
京都を拠点に活動する劇団・ヨーロッパ企画による福岡発オリジナル番組。
【イシダカクテル】は、番組開始2013年の第1シーズンから続く大人の恋愛ラジオドラマ

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