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【深夜の恋愛小説】幸せな恋をしてると、よく膨らむ~「恋のレモンスフレ」~

2020年09月18日 23:00

天神サイトでは、秋の夜長を気楽に楽しく過ごせるように、ヨーロッパ企画のラジオ番組「こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM)」とコラボレーションして、9月限定で毎晩23時に【深夜の恋愛小説】と題して恋愛ミニ小説を連載。読んでいるほうがちょっと恥ずかしくなるような恋愛ラジオドラマ小説の世界をご堪能ください。



タイトル:「恋のレモンスフレ」

 

彼女は窓辺に座って一日中海を眺めていた。

「一日中海を眺めていると、地球が少し動いたことが分かったわ」

 

寂しそうに僕にそう言った。
太陽は沈み、あたりは暗くなり始めていた。

 

 

「ねえ、私を月に連れてってほしいわ」

 

そう言って彼女は出てきたばかりの月に手を伸ばす。
すると月は雲の間に隠れてしまった。

 

「月に手を伸ばしちゃいけないっておばあちゃんに言われてたの。月に手を伸ばすと月が消えちゃうって。おばあちゃんの言ってたことは本当だったのね」

 

僕はウォッカとカルーアを混ぜて作ったブラック・ルシアンを渡すと彼女は一口飲んだ。

「星と星の間で遊んでみたり、火星や木星の春がどんなのだか見てみたいわ」

 

地球では、今年は春がなかった。

 

月に行って、他の星々の春を感じたいと思うのは当然だ。

 

「来年の夏には、海にいけるかな」

ブラックルシアンのコーヒーの甘い香りが漂った。

 

「ねえ、今からレモンスフレを焼こうかな」
「レモンスフレ?」
「昔おばあちゃんから作り方を教わったの、レモンスフレ。いま思い出した」
「スフレって、あの膨らんだケーキのこと?」
「そう、幸せな恋をしてると、スフレはよく膨らむんだっておばあちゃんは言ってた」

 

彼女はそういうとグラスを僕に手渡して台所に消えていった。
雲の合間から出てきた月を眺めながら、僕はブラックルシアンを飲んだ。

 

数時間後。

 

ふっくらとふくらんだレモンスフレと、笑顔の彼女が僕のそばにはあった。

 

おしまい
 



こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM) 
京都を拠点に活動する劇団・ヨーロッパ企画による福岡発オリジナル番組。
【イシダカクテル】は、番組開始2013年の第1シーズンから続く大人の恋愛ラジオドラマ

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