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ひと

【深夜の恋愛小説】あなたに会いたくて~「夢の中のデート」~

2020年09月17日 23:00

天神サイトでは、秋の夜長を気楽に楽しく過ごせるように、ヨーロッパ企画のラジオ番組「こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM)」とコラボレーションして、9月限定で毎晩23時に【深夜の恋愛小説】と題して恋愛ミニ小説を連載。読んでいるほうがちょっと恥ずかしくなるような恋愛ラジオドラマ小説の世界をご堪能ください。



タイトル:「夢の中のデート」

 

「ねえ、私さびしい」

 

 

テレビ電話の画面の越しで、彼女はそう言って泣いた。

 

「これからどこかへお酒を飲みに行きたい。それで、私を酔っ払わせてよ」

 

彼女と僕は遠く離れて暮らしている。

いま、彼女のもとに会いに行くことはできない。
彼女の顔が見れなくて、画面に映る小さな自分の顔を見る。
どうすればいいのかと困った、自分もさびしい顔をしていた。

 

「会いたくてさびしい。あなたに会いたくて、さびしい」
「ああ」

 

彼女の口にした「さびしい」は状態ではなく、欲求だ。
顔を見ることができ、声も聞くことができる。

でも、触れることはできない。

 

きみの髪をさわりたい。
肩を引き寄せて抱きしめたい。
そしてキスもしたい。

 

その欲求は生きている限り付きまとう。

 

人生はさびしい時間のほうが長いんだ。
さびしさを忘れられるのは、きみを抱きしめているときくらい。

 

僕もおなじだ。

 

さびしくなるのは自然なことなのだ。

 

 

「夢を見たの。二人でドライブをしてた。あなたが運転をして、私が助手席で歌っているの。窓の外は海がキラキラしてて、それがずっとどこまでも続いているの」

 

彼女は続ける。

「気がつくと私たちは浴衣に着替えてて、見たこともないような大きな海老を食べていたわ。そしてお酒もたくさん飲んでいた。楽しそうに話をしながら」

 

「いい夢だね」

 

「気がつくとあなたはもう大きなベッドでぐうぐう眠ってるの。私はそこにもぐりこんで、あなたの隣で眠るの。ベッドがもう温かくなっていてすごく気持ちがよかった」

 

「ふふふ。夢の中でも眠るんだ」

 

「そう、眠りについたはずなのに、そこで目が覚めた。それで、すごくさびしくなっちゃったの」

 

「もうすぐだよ。もうすぐしたら、それを全部しよう。海をドライブして、大きな海老を食べて、温かいベッドで眠ろう」

 

「うん」

 

 

彼女はそう言って涙を拭って笑った。

 

おしまい
 



こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM) 
京都を拠点に活動する劇団・ヨーロッパ企画による福岡発オリジナル番組。
【イシダカクテル】は、番組開始2013年の第1シーズンから続く大人の恋愛ラジオドラマ

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