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【深夜の恋愛小説】そんなあなたの仕草が大好き~「彼女を好きな理由」~

2020年09月08日 23:00

天神サイトでは、秋の夜長を気楽に楽しく過ごせるように、ヨーロッパ企画のラジオ番組「こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM)」とコラボレーションして、9月限定で毎晩23時に【深夜の恋愛小説】と題して恋愛ミニ小説を連載。読んでいるほうがちょっと恥ずかしくなるような恋愛ラジオドラマ小説の世界をご堪能ください。



タイトル:「彼女を好きな理由」

彼女はいつも、そのコーヒーショップでドーナツを頼んだ。

 

「ドーナツ好きですよね?」
「うん、大好き」
「なんでそんなにドーナツが好きなんですか?」
「だって、二重丸でしょ」

そういって彼女はドーナツを一口食べた。

よく分からないし説明にもなってない気もするけど、
そもそも好きなものの理由なんて、説明しようがないのかもしれない。
逆にいうと、説明できないからこそ、好きなんだろう。

 

「僕より3歳も年上だなんて嘘みたいだ」
「どういう意味?おばさんのくせに子供っぽいってこと?」
「いや、そうじゃなくて」
「ふふ。」

 

「……。」

 


「どうしたの?」
「あなたに伝えたいことがあって」
「…はい。」

 

母親に怒られた子供のように、彼女は手に持っていたドーナツを皿に置いた。

 

「ここであなたと初めて会ったとき、」
「私がぶつかってあなたの白いシャツにコーヒーをこぼしたときね」

 

 

(過去 / ぶつかってコーヒーがこぼれる音)

 

「ごめんなさい!」
「ああ、いえ」
「白いシャツがコーヒーで」
「大丈夫ですよ、すぐ洗えば」
「洗いますから、脱いでください!」
「いや、大丈夫ですよ、ここじゃ脱げないですし、自分でやるんで」

「そっか、あーごめんなさい、ほんと、火傷してないですか?」
「え、いやアイスコーヒーですよね、それ?」

「ああ!そうだった!ごめんなさい、
なんか、ああ、よかったアイスコーヒーで、ってよくないか、ごめんなさい白いシャツ!」
「ふふ、おもしろいですね」

 

 

(現在に戻って)

 

「あのときあなたはすごく子供っぽくてかわいらしくて、
まさか僕より3歳も年上だとは思わなかったです」

「また歳のこと?」

「ごめんなさい、それから何度か会うようになって、親しくなって、
あなたは僕を年下扱いしないでくれるし、いつも誠実だった。
けど、僕はときどきあなたが霧のように掴めなくなることがあった。」

「…」

 

「少し前の夜、中洲であなたを見かけました。
隣には、僕の知らない、おそらく僕より年上の男性がいました。
あなたは、とてもきれいで、とても楽しそうだった。
僕の知らない優しい笑顔をしていました。
そのとき僕は、あなたとは住む世界が違うんだなと思いました。」

「…」

 

「僕はあなたのことが大好きです。けど
あなたのことを諦めるために、他に好きな人を作ることにしました。」


「…それは、うまくいった?」

 

「いまからその人に会いに行って、自分の気持ちを伝えようと思ってます。
だからその前に、あなたにこのことを伝えておきたかったんです。」

 

「ありがとう。彼女のこと好き?」

「ええ、大好きです。」

 

「彼女の、どういうところが好き?」

「…あなたじゃないところです。」

 

「ふふ、がんばってね」
「はい」

 

彼女はまたドーナツを手に取って、子供のように食べ始めた。
僕より3歳も年上だとは、とても思えないかわいらしい表情だった。

 

おしまい
 



こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM) 
京都を拠点に活動する劇団・ヨーロッパ企画による福岡発オリジナル番組。
【イシダカクテル】は、番組開始2013年の第1シーズンから続く大人の恋愛ラジオドラマ

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