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【深夜の恋愛小説】愛してると言わなくなるでしょ~「愛してる」~

2020年09月07日 23:00

天神サイトでは、秋の夜長を気楽に楽しく過ごせるように、ヨーロッパ企画のラジオ番組「こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM)」とコラボレーションして、9月限定で毎晩23時に【深夜の恋愛小説】と題して恋愛ミニ小説を連載。読んでいるほうがちょっと恥ずかしくなるような恋愛ラジオドラマ小説の世界をご堪能ください。



タイトル:「愛してる」

「ねえ、いま向こうから歩いてくる女の子見てたでしょ」
「え?」
「そういうのすぐ分かるんだから」
「いや、女の子を見たんじゃなくてー」
「さいてー」

 

やれやれ。

 

彼女とデートしているときに前を歩いてくる夏服を着た女に目を奪われる。
もちろんそんなことあってはならない。
そこから映画館に入って映画を見終わるまで、彼女の機嫌がわるいのは当然だ。


スパイダーマンがおもしろくて助かった。
マーベルスタジオには感謝しなくては。

 

レストランに移り、食事をとることにした。

 

「夏の牡蠣は岩牡蠣で、冬は真牡蠣なの。私は岩牡蠣が好き。
おいしいー、もう大好き」

 

生牡蠣を食べると彼女は機嫌が良くなる。 僕は生牡蠣を食べている彼女を見るのが好きだ。

「愛してるよ」
「何?急に気持ち悪い」

「うん、そういうと思った」
「どういうつもり?」
「好きだよとか愛してるとか、長く付き合ってると言わなくなるでしょ」
「そういえば言わなくなる」

「お互いね。言わなくなるし、言われなくなる。そういうもんかもしれないけど、でも付き合いたての頃は好きだとか愛してるとかしょっちゅう言ってたんだ、僕たちは」
「イタいバカップルだったな」
「まあね、けど君は岩牡蠣のことはずっと大好きだって言ってる」
「うん、大好きだからなあ」

「それでいま思ったんだ。愛してるってもうずいぶん言わなくなったのに突然言ったから気持ち悪いってなった。じゃあ愛してるっていつも言ってれば、気持ち悪いって思わないだろ」
「ふふふ、なに言ってるの?」

 

「今日、僕は夏服を着た女の子を見ていたんじゃなくて、その横にいる彼氏の方を見ていたんだ」
「彼氏のほう?」
「彼氏?彼氏のほうが君を見てるって気が付いたんだ」
「え?」
「君をじっと見てたよ」
「そうなの?」
「ああ。なんでこんな男と一緒にこんな美人が歩いているんだろうって思ったんじゃないかな」

 

「何にも出ないわよ」

 

「一緒に歩いてると君の顔が見れなくて残念だと思うこともある」
「今は向き合って座ってるもんね」

「うん。しっかりと君が岩牡蠣を美味しそうに食べる顔が見れた」
「かわいかった?」
「そんな口が開くんだって思ったよ」
「岩牡蠣は大きからね」

 

「愛してるよ」
「うん、…やっぱりなんか気持ち悪いな」
「たしかに」

 

「大好きとかにしてよ」
「大好き」
「ああ、それでも気持ち悪いなあ」
「なんだよ」
「ふふふ」

 

おしまい
 



こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM) 
京都を拠点に活動する劇団・ヨーロッパ企画による福岡発オリジナル番組。
【イシダカクテル】は、番組開始2013年の第1シーズンから続く大人の恋愛ラジオドラマ

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