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【深夜の恋愛小説】ふたりは付き合った。つまり、これは~「本が好きなふたり」~

2020年09月02日 23:00

天神サイトでは、秋の夜長を気楽に楽しく過ごせるように、ヨーロッパ企画のラジオ番組「こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM)」とコラボレーションして、9月限定で毎晩23時に【深夜の恋愛小説】と題して恋愛ミニ小説を連載。読んでいるほうがちょっと恥ずかしくなるような恋愛ラジオドラマ小説の世界をご堪能ください。



タイトル:「本が好きなふたり」

自動車整備の仕事をしている男は、
巡回サービスの休憩で立ち寄った営業所で事務の仕事をしている女に話しかけた。

 

「本が好きなんですか?」
「…はい」
「僕も本が好きでして」
「そうですか」

 

男はいつもその営業所でコーヒーを飲み、女は休憩中にかならず本を読んでいた。

「何を読んでるんですか?」
「水上勉の「雁の寺」です」
「あ、その本、僕も読みました。面白いですよね」
「…私のお家がお寺なんです」
「そうですか。この近くですか?」
「はい」

 

「本がお好きなんですか?」
「はい」
「僕も、本が好きで、よく読みます」
「そうなんですね」

 

「有吉佐和子の新作はもう読みましたか?」
「恍惚の人?」
「そう「恍惚の人」です」
「いえ、まだ」
「本屋で売り切れてまして、いま取り寄せてもらってるんです。届いたら、お貸ししますよ」
「ふふ、読み終わってからでいいですよ」
「ああ、そうですね、じゃあ読み終わったらすぐお貸しします」
「ありがとうございます」

 

男は「恍惚の人」を2日で読み終えた。
何度か本の貸し借りを繰り返したあと、男は女を誘った。

 

「僕もお寺が好きでして、あそびに行ってもいいですか?」
「はい、じゃあ明石寺に」
「ご実家は、あの明石寺ですか?」
「いえ、実家は別のお寺です」
「ああ、そうですか。じゃあ、まあ、明石寺に」
「はい、ぜひ」

 

男はいきなり女の実家に行こうとした。

明石寺でデートをするふたり。

「通っていた高校が、この近くなんです」
「そうですか」
「高校生のデートスポットです。ここしかないんですよ、このあたりは」
「…こんどはあなたの実家のお寺にお邪魔してもいいですか?」
「え?」
「あの、僕とお付き合いしてください」
「…はい、こちらこそよろしくお願いします」

 

そうして二人は付き合った。
次のデートで男は女の実家に行き、そうめんをごちそうになった。

 

昭和48年の夏のことだ。
つまりこれは、僕の父と母のなれそめだ。
 

おしまい
 



こちらヨーロッパ企画福岡支部(LOVE FM) 
京都を拠点に活動する劇団・ヨーロッパ企画による福岡発オリジナル番組。
【イシダカクテル】は、番組開始2013年の第1シーズンから続く大人の恋愛ラジオドラマ

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