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2019年の映画を振り返り!勝手にセレクション3 〜邦画編〜

2019年12月31日 17:00 by 筒井あや

さて、昨日に引き続き、今年観た映画の中から勝手にレコメンドする映画をご紹介。早今年観た200本超えの映画の中から、“これは本当に素晴らしい映画だった!好みのタイプ!”と思った作品を3本。今回は邦画編としてお届けしますが、邦画ってセレクトが難しい!洋画だったら完全に自分の趣味嗜好で振り切って選べるのですが、邦画はなまじ俳優さんの素顔がチラついたりしてしまうんです。そこをグッと心の奥にねじ伏せて、悩んだ挙げ句に選んだ3本です。

 

期間限定上映だったのがもったいない!人間臭い名演技が秀逸だった
『台風家族』PG12 (9月6日から2週間公開)


©2019「台風家族」フィルムパートナーズ

【STORY】
台風が近づく2018年のある夏の日、鈴木小鉄(草彅剛)は妻・美代子(尾野真千子)と娘を連れて実家へと車を走らせていた。10年前、銀行強盗で世間を騒がせた両親の葬儀に参列するためだ。葬儀といっても死体はおろか逃走に使われた霊柩車も、強盗した2000万円も未だ見つかっていない。そんななか、音信不通だった兄妹が集まる理由は、財産分与を行うためでもあった。すっかり朽ち果てた鈴木家に長男の小鉄、長女の麗奈(MEGUMI)、次男の京介が次々とやって来る。しかし、末っ子の千尋(中村倫也)は“見せかけ”の葬儀が終わってもやって来なかった。

【お気に入りポイント】
とある俳優さんの事件により公開が危ぶまれ、本来は6月に公開予定だったのが9月まで延期になったこと、さらにノーカットでの上映することもあって、期間限定の上映になりました。そんなこともあり、期間限定なら観ておこう、くらいの軽い気持ちで観たら…ちょっと感動すらしてしまいましたね。鈴木小鉄という主人公が、草彅くん自身なの?(たぶん、全然違います)と思ってしまうほど、ハマり役。それもそのばず、当て書きらしいですから。とはいえ、草彅くんのパブリックイメージからは想像が着かない。鬱屈した、どうしようもない人間像を、繊細に演じていたのには感動です。
ノーカットでの上映にしたのにも納得がいきます。なぜなら、この鈴木兄妹は、この俳優達でないと成立しない感じがあったからです。私は妄想は良くしますが、物語は作れません。だから物語が作れる人に、かなりのリスペクトを感じます。このストーリーテイリングも素晴らしいです。ストーリーを綴りながら、それぞれの人間の“個”を描く。それを俳優の身体を通して語り、俳優の力で物語に奥行きと厚みを作っていく。そんな立体的なクリエイティブさを感じる素敵な映画でした。何よりも、これまで俳優・草彅剛の力を見くびっていた自分にガッカリです。きっと彼の代表作のひとつにしてもいいのでは?と思います。

【監督・脚本】市井昌秀
【出演】草彅 剛、MEGUMI、中村倫也、尾野真千子、若葉竜也、甲田まひる、長内映里香、相島一之、斉藤暁、榊原るみ、藤竜也

 

ベストセラーには理由がある。人気俳優にも理由がある!
『キングダム』 (4月19日公開)



Ⓒ原泰久/集英社 Ⓒ2019映画「キングダム」製作委員会

【STORY】
紀元前245年、春秋戦国時代、中華・西方の国「秦」。戦災孤児の少年の信(山﨑賢人) と漂(吉沢亮) は、いつか天下の大将軍になることを夢見て日々剣術の鍛練を積んでいた。ある日、漂は王都の大臣である昌文君(髙嶋政宏) によって召し上げられ王宮へ。信と漂の二人は別の道を歩むことになる……。 王宮では王弟・成蟜(本郷奏多) によるクーデターが勃発。戦いの最中、漂は致命傷を負いながらも、信のいる納屋にたどり着く。「今すぐそこに行け…」血まみれの手で握りしめていた地図を信に託し、漂は息絶える。信は漂が携えていた剣とその地図とともに走り出した。 地図が示す小屋にたどり着いた信の目に飛び込んできたのは、静かにたたずむ漂の姿だった!? 死んだはずの漂がなぜ―

【お気に入りポイント】
中国史にはホントに疎いんです。興味がないこともありますが…。しかも最近は漫画を読まなくなってたし…原作者の原泰久先生が福岡在住らしい、そんな話は知っていました。とある情熱溢れる密着番組を観ていたし。そもそも、原作がある映画(とくに漫画)は、原作を知らない方が楽しめることが多々あります。だからたとえ原作を知らなくても楽しめなくては、わざわざ映画を作る必要ないんじゃない?とすら思っているのです。だから前情報ナシで、今回も挑みました。
「な、何これ?めっちゃ面白い!」が、観終わった後の素直な感想です。私は自分の好みは、マスだと思っています。絶対コアじゃない。人気のアーティストのライブには行きたいし、大ヒットドラマもハリウッド超大作映画も大好き。並ばないけどタピオカをどうしても飲みたくなる。ただ、この作品に関しては中国史に苦手意識があったので、ちょっとだけハードルがあったんです。その“苦手”をクリアさせてくれたのは、愛して止まない山﨑賢人。山﨑賢人くんは、人気者なので多くの作品に出ていますが、いかんせん当たり外れが大きい(完全に主観です)。だから、賢人の映画を観るときは、ちょっと怯むんですよ。でもこれはアタリ!大アタリ!!それに髙嶋政宏や大沢たかお、長澤まさみなど豪華キャストのおかげで、中国史にも少し興味出てきたし。あ、坂口 拓さんの殺陣がハンパなくスゴかった!!とにかく「あー楽しかった!」と映画館を出られたことが何より。だから、これ、映画館じゃなかったら、楽しくなかったかも、とすら思っちゃいました。スクリーンの力は偉大です。

【監督】佐藤信介
【原作】『キングダム』原 泰久(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
【出演】山﨑賢人、吉沢 亮、長澤まさみ、橋本環奈、本郷奏多、満島真之介、阿部進之介、深水元基、六平直政、髙嶋政宏、要 潤、橋本じゅん、坂口 拓、宇梶剛士、加藤雅也、石橋蓮司、大沢たかお

 

家族の歪み、人の心情、愛のゆがみ。
『ひとよ』PG12 (11月8日公開)


Ⓒ2019「ひとよ」製作委員会

【STORY】
どしゃぶりの雨降る夜に、タクシー会社を営む稲村家の母・こはる(田中裕子)は、愛した夫を殺めた。それが、最愛の子どもたち三兄妹の幸せと信じて。そして、こはるは、15年後の再会を子どもたちに誓い、家を去った—。たった一晩で、その後の家族の運命をかえてしまった夜から、時は流れ、現在。次男・雄二(佐藤 健)、長男・大樹(鈴木亮平)、長女・園子(松岡茉優)の三兄妹は、事件の日から抱えたこころの傷を隠したまま、大人になった。抗うことのできなかった別れ道から、時間が止まってしまった家族。そんな一家に、母・こはるは帰ってくる。15年前、母の切なる決断とのこされた子どもたち。皆が願った将来とはちがってしまった今、再会を果たした彼らがたどりつく先はー

【お気に入りポイント】
家族ってそんなに綺麗なものばかりじゃないんだ。最近の家族の映画を観ていたら、そんなことを感じます。それが色んな意味での自分自身への家族に対する感情への赦しでもあり、自己肯定にもなりうる時があって、こういう歪んだ家族の物語はすんなり心に入ってくる。個人的には私は三人兄妹の真ん中なので、佐藤健が演じた雄二の動向や感情には共感に近いものを感じられたのです。

白石和彌監督は、今の若手俳優がもっとも新作に出たいと思う監督の一人ではないかと思います。映画を観ていても俳優への信頼感や愛情が溢れ出ているのが解るからでしょう。あと、田中裕子という女優のスゴさをまざまざと見せつけられたし、鈴木亮平の心底役になりきる俳優魂のようなものも感じられた。そして、佐藤健のこれまでの佐藤健像を清々しいくらいに裏切ってくれた。ただ、なんというか…松岡茉優。人気監督の映画によく出ているから、きっとどこか素晴らしい才能があるとは思うのですが、まだ、私には何を演っても松岡茉優、にしか見えなくて…(ファンの方すみません!)。ただ、どんな役でもその役に全身でぶつかっているのは素晴らしいと思います。個人的には、白石和彌監督の映画の質感のようなものが、作品毎にガラッと変わってしまうのは、何でだろうか。そこんとこ、機会があれば聞いてみたい。

【監督】白石和彌
【出演】佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、MEGUMI、大悟(千鳥)、佐々木蔵之介・田中裕子


 

ということで、邦画は崩壊した家族を描いた作品が過半数になってしまいました。今、そんなモードなのかも。でも、少し前までは日本の映画と海外の映画の作品性や技術的なところに、乖離があるなと、ほんのり思っていましたが、日本の映画、素晴らしいです。2020年も楽しみ!

 

あと…余談ですが、これから公開になるボン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」は、観た方がいいです。1月10日公開ですから、ぜひ映画館で観てください。

 

 

取材・文:筒井あや
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