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福岡にルーツを持つ“喋り方がキャビア”な名パンチラインマシーンのMIYACHIにインタビュー
2019年08月16日 08:00 by 山内淳
RADWIMPSのアルバムやライブに参加したり、音楽フェス「サマーソニック 2018」や「ULTRA Japan 2018」にも出演を果たした、日系アメリカ人ラッパーのMIYACHI(ミヤチ)。独自の言語感覚からなる日本語のラップとスキルフルな英語のフロウで中毒者を続出させている彼は、さまざまなアーティストとの楽曲コラボやWWEのトップレスラー・中邑真輔選手のテーマ曲への歌詞提供など幅広く活躍しています。幼い頃から縁がある福岡で、7月3日にリリースした待望のデビューアルバム『WAKARIMASEN』について語ってくれました。

―― 今回のデビューアルバム『WAKARIMASEN』に込めた想いは何ですか?
MIYACHI:アジア系アメリカ人としてのプライドを表現することです。僕のルーツであるアメリカと日本のストーリーをみんなに伝えたいと思いました。日本のことを知りたい日系アメリカ人や、ニューヨークのことを知りたいアメリカ系日本人もいっぱいいるはず。それぞれのカルチャーを繋げることが僕の役目で、そこから世界に広げていきたいね。
―― 表題曲「WAKARIMASEN」は、何度も繰り返す「英語わかりません」のフレーズが印象的です。
MIYACHI:みんなが歌いやすいように、キャッチーで耳に残りやすいな言葉にしました。日本に「英語分かりません」という日本人はいっぱいいるけど、アメリカで生活するアジア系アメリカ人の中は、英語が理解できていても母国のプライドを守るために「英語分かりません」ということもあるんだ。アメリカで生活するアジア人や日本で生活するハーフの人たちは、この気持ちをわかってくれると思うよ。
―― ユニークに思えるリリックですが、デリケートな人種問題へのメッセージでもあるんですね。MIYACHIさんがラップを始めたきっかけは何ですか?
MIYACHI:高校生の頃からヒップホップを好きになりました。周りの友達がヒップホップを聴いていたり、学校でフリースタイルが流行っていたのがきっかけ。家でもトラックを作ったり、パーティーでラップをやってた。そこから本格的に自分もラッパーの道に進み始め、リリックに日本語を取り入れるようになったのは3年前の23歳くらいからだね。
―― ラップの本場・ニューヨークで、日本語のラップは受け入れられましたか?
MIYACHI:ジャパニーズラップを聴いているアメリカ人はまだあまりいません。その人たちにとってジャパニーズラップはとてもレアなジャンルで、今までにないリリックはカッコよく聴こえるみたい。聴いた人は「意味は全然わからないけど、とにかくカッコいい」と言ってくれます。
―― 英語が分からない日本人が、英語のラップを聴いてカッコよく感じるのと同じですね。
MIYACHI:はい。その感覚は世界共通だと思うよ。これまではアメリカで生まれたヒップホップを世界の人が聴いていましたが、近年は世界各国で生まれたその地域の言語によるヒップホップがアメリカに入ってきて、アメリカ人がそれを聴くことも増えました。ヒップホップがアメリカだけのものではなく、世界中の音楽になっていることを嬉しく思います。
―― 2PMの元リーダー・Jay Parkとのコラボ曲「MESSIN」はどうやって生まれたんですか?
MIYACHI:3年くらい前に「BAD & ブジ」のPVを見たJay ParkからSNSを通じて「カッコいいよ」とメッセージが来て、ずっと僕のことをフォローしてくれていました。そして、アルバムを作るタイミングでJay Parkに声をかけ、今回のコラボが実現したんだ。これまでとは違ったクラブ系のテイストに仕上がったので、夏に聴いてほしいですね。
―― MIYACHIさんといえば、以前「喋り方がワサビ」というリリックがありました。今回も「喋り方がキャビア」だったり、「貞治ホームランバット」だったり、不思議なリリックがたくさんありますが、その発想はどこから生まれるんですか?
MIYACHI:僕はニューヨーク育ちのラッパーだから、アメリカのヒップホップスタイルのフロウを作ってます。ラップではフロウが一番大事だと思ってるので、アジア系アメリカ人っぽいカタコトの日本語や意味不明な文章を考えながら、フロウ的に一番ハマる言葉をセレクトしてるよ。ほかのアーティストでは作れないストーリーや、日本語を駆使したオリジナルなラップがMIYACHIらしさです。
―― 作詞で意識していることやインスパイアされることはありますか?
MIYACHI:今回のアルバムでは僕自身の育ちのことも歌にしてるけど、身近な出来事から生まれた曲もあります。今年の1月にPVを作ってくれていたベストフレンドが亡くなって、その人のためにも頑張りたいと思ってアルバムを作りました。「GRIND」や「ANOYO」は彼一人のためだけの曲ではないけれど、亡くなったらどうなるかを考えてリリックを作りました。

―― 「MADA FLY」の中では、「福岡からパリまでやるけん」といったリリックが出てきますね。
MIYACHI:実は母が福岡出身で、祖母も福岡に住んでいます。福岡には子供の頃によく来ていたので、僕にとって日本といえば福岡のこと。アーティスト活動を始める前は東京には1回しか行ったことがありませんでした。アメリカの学校は6月から夏休みに入るので、夏は日本の小学校に1か月くらい通ったりしました。みんな福岡弁を使っていたから自分も自然と方言が身につき、「MADA FLY」のリリックにも使ってみました。
―― 福岡でよく行っていた場所はありますか?
MIYACHI:福岡によく来ていたのは子供の頃だったので、どこの店に行っていたかはあまり覚えていません。でも、親と天神地下街にはよく行っていて、旧・岩田屋新館(現・福岡パルコ)へ繋がる階段の「天神かっぱの泉」は今でも覚えています。アーティストになってからは、親不孝通り近くのクラブ「STAND-BOP」の方に連れて行ってもらった「天婦羅処 ひらお」の天ぷらはおいしかったです!
―― 「WAKARIMASEN」ではトラックメイクも手掛けていますが、作詞する時との違いは何ですか?
MIYACHI:トラックメイクする時とリリックを書く時では、頭の使い方が違うね。大変さはあるけど、今後はそういった楽曲も増やしていきたいと思う。これからはもっとたくさんの日本語ラップを作って日本とアメリカで活動し、両国のカルチャーを世界に広げていきたいです。
―― 読者にメッセージをお願いします。
MIYACHI:僕はニューヨークで生まれ育ったけど、福岡はすごく身近に感じる大切な場所。福岡の人たちにもたくさん聴いてもらえると嬉しいです。

取材協力:三月の水(福岡市中央区今泉1-23-4-103号)
●PROFILE
MIYACHI(ミヤチ)
2018年3月に発表したシングル「WAKARIMASEN」で、“英語わかりません”と繰り返す中毒性の高い歌詞が話題となり、Spotifyのバイラルトップ50にて1位を獲得。昨年はNHKの音楽番組「シブヤノオト」や音楽フェス「サマーソニック 2018」「ULTRA Japan 2018」などにも相次いで出演を果たす。今年に入ってからは6月にZOZOマリンスタジアムで開催されたRADWIMPSの「ANTI ANTI GENERATION TOUR 2019」にて、計6万人の前でもパフォーマンスを披露するなど存在感を高めているラッパー。満を持してリリースしたデビューアルバム『WAKARIMASEN』で、日本だけではなく、世界各国から注目を集めるアーティストだ。
・オフィシャルサイト https://www.sonymusic.co.jp/artist/miyachi/
●RELEASE
アルバム『WAKARIMASEN』
2019年7月3日発売 2,200円(税別)
取材・文:山内淳
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