グルメ | 新店舗オープン

ギムレットには早すぎる…。オーセンティックでいて気取らない、粋な大人の社交場が誕生

2018年08月14日 21:00 by 森 絵里花

渡辺通「ホテルニューオータニ博多」のちょうど真裏、「麦衛門」などの飲食店がポツポツと軒を連ねる通りの一角。割烹「博多ふじ本」の入るビルの左脇に、何やら気になる階段を見つけました。

小さな光に照らされた看板には「Cocktail & Wine」の文字が。静かに階段を上り扉を開くとそこには、ダウンライトに照らされた大人の雰囲気を醸すバーがありました。

6月30日(土)に開業した『Lennox’s Cocktail & Wine (レノックス カクテル アンド ワイン)』。店を手がけるのは、大分の名宿「由布院 玉の湯」内にあるバー「ニコルズバー」にて長らくチーフバーテンダーを務め、シニアソムリエの資格も有する川原博隆さん。今期までは日本ソムリエ協会の大分支部・支部長を務めるなど、お酒のエキスパートとして九州のバー業界を牽引する一人です。

キャリアのスタートは、意外にもオランダ・ロッテルダムの日本料理店。日本料理の料理人として活躍しながらも、約3年のヨーロッパ生活にて一番身に染み込んだのは、海外の“パブ文化”だったのだそう。

「仕事の合間や終わりにさらりと立ち寄り、酒を酌み交わす。実にカジュアル、それでいて大人にしか愉しめない、粋な空気が流れるあの空間が大好きで。気付けば料理よりもこちらの世界にのめり込んでいました」。

憧れはやがて目標となり、遂に夢の実現へ。店内にはアンティーク家具を配し、漆喰の壁には使い込むほどに風合いが増すヴィンテージ加工を。オーセンティックなバーとヨーロッパの古びたパブを融合させた、大人の社交場が完成しました。

「仕事を早く終えたビジネスパーソンが、ちょっと一服できる空間に」との思いから、オープンは15:00に設定。バーカウンターでしっとり飲むもよし、奥に設置したスタンディングエリアでビールを立ち飲みするもよし。シーンや気分に合わせて自在に楽しむことができます。

さて、キンと冷えたビールは美味しいものの、やはり美味なカクテルを飲まずには帰れません。川原さんの師匠は、帝国ホテルで研鑽し、「ニコルズバー」の礎を築いた後、現在湯布院にて「Bar Stir」を営む、名バーテンダー・岩本賢二氏。師の思いや教え、技術を継承し、基本に忠実で丁寧なスタンダードカクテルを供することに注力しています。

得意とするカクテルを伺うと、店名にも深く関係する「ギムレット」を薦めてくださいました。そう『Lennox’s』(レノックス)とは、ハードボイルドの巨匠と謳われるレイモンド・チャンドラーの名作「The Long Goodbye(長いお別れ)」に登場するゲストキャラクターの名前です。「ギムレットには早すぎる」というレノックスの台詞は、あまりにも有名ですね。

川原さんは、このレノックスとギムレットが大好きなのだそう。「小説に登場するレシピと、現代のレシピ。どちらにいたしましょうか?」と、にっこり。物語に浸るべく、ここは前者をオーダーすることに。

小説中には「本当のギムレットはジンと“ローズ社製ライム・ジュース”を半分ずつ。他には何も入れない」とあります。

レノックスの言葉通りのレシピでシェイクを降り、差し出された一杯。極々薄い木村硝子店のショートグラスを覗くと、粉砕された氷が雪の結晶の如く輝きを放っています。

口へ運べば、パチパチ、キラキラと弾けるように爽やかなアロマが広がり夢心地。現代レシピのギムレットはもっとアルコール感が強くキリッとドライですが、こちらはハーフ&ハーフで作られていることもあり、肩の力を抜いてスッといただける美味しさがあります。

続いては、常連の紳士から「ドライマティーニをロックで」とのオーダーが入りました。レシピは、ドライジン、ドライベルモットをステアしてカクテルグラスへ注ぎ、レモンピールの香りを纏わせオリーブを飾るもの。カクテルにはそれぞれに合った温度も大切。故に「素早く作る」ことも求められます。川原さんは、師から受け継いだ特注のロングバースプーンとミキシング・グラスで素早くステア。

このバースプーンは帝国ホテルのメインバー・オールドインペリアルバーにて10本ほど特注したものがベースになっているそう。現在は岩本氏の同僚で銀座から秋田に移転された名店ル・ヴェールの佐藤謙一氏がスクリューのないヴァージョンを考案され、専門店で販売もされているのだとか。

この他、ご紹介したいスタンダードカクテルはまだまだ盛りだくさん。シニアソムリエである川原さんが選ぶワイン、希少なオールドボトル、太宰府「自家焙煎珈琲 蘭館」の豆を使った芳醇な水出しコーヒーもぜひ味わっていただきたい一杯です。

価格は、ギムレット1290円、水出しコーヒー750円、カクテルは1杯970円〜、グラスワイン(150ml)は1290円〜。チャージはお一人500円で、平均予算は1人3000円〜と良心的。

店内に流れるJAZZ、はたまた昭和の歌謡曲、クラシック……。時間帯やシーンに合わせて川原さんが自在にセレクトするBGMをお供にグラスを傾け、心地良い大人の時間を過ごしてみませんか。

取材・文:森 絵里花
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プレイス情報PLACE

Lennox’s Cocktail & Wine (レノックス カクテル アンド ワイン)

住所 福岡市中央区春吉1丁目7-18 2F
TEL 092-791-3637
営業時間 15:00〜翌1:00
定休日 火曜※ほか不定休あり
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