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池松壮亮&松居大悟監督が揃って凱旋!果たして池松は尾崎豊になりきれたのか!?

2018年07月09日 21:00 by 筒井あや

愛する女性の憧れる人になりきり、自分の名前すら捨て去って10年間にわたり彼女を見守り続けた3人の男たちの愛の行方を描いた松居大悟監督の最新作『君が君で君だ』。尾崎豊になりきる男を池松壮亮、ブラッド・ピットになりきる男を満島真之介、坂本龍馬になりきる男を大倉孝二がそれぞれ演じ、韓国人女優キム・コッピがヒロイン役を務める。

福岡出身の松居大悟監督と池松壮亮が揃って凱旋し、撮影秘話や二人の関係性などを語ってくれた。

——松居監督らしいオリジナルストーリーですが、どういったところから着想されたのでしょう?

松居大悟監督:2011年にゴジゲンで上演した「極めてやわらかい道」をもとに作りました。僕自身、一番辛い時期でもあったんです。そんな時にドラマや映画で表現されている恋愛の形が、これが正しい恋愛の形なんだと言われているような感じに違和感があって(笑)。好きな人に思いを伝えることだけが取り沙汰されていたのですが、僕は思いが強ければ強いほど伝えられないものなんだと思っているタイプなので、そこに違和感を感じていたのかもしれません。だからこそ、誰かを想うこと、そのものを描きたいと思っていました。
ただ、僕が思っていることは、きっと多くの人の共感は得られないだろうなと(笑)。こんな間口の狭い映画を作って良いのかという思いもありましたが、自分にとっては核のような存在で、大切な作品だったので協力してくれる人が増えてきた今なら、スタッフやキャストのみなさんと共有しながらこの作品を育てられるかもしれないと思い、台本を作り始めました。

——尾崎豊、プラッド・ピット、坂本龍馬の3人のキャラクターが出てきますが、その中で尾崎豊を池松さんにお願いしたのはどういった理由からですか?

松居大悟監督:尾崎豊という人は僕の中でとても大きな存在で、彼の曲を聴くと無敵になれるというか背中をバンバン叩かれるような憧れの存在なんです。この映画での尾崎豊は、究極の愛情を持って突っ走っているけど、僕はそこまで行けなかった、という意味で憧れの象徴でもあります。池松くんとは映画以外でも舞台やラジオドラマ、ミュージックビデオも一緒にやっていて、同志のような存在。だから、監督と俳優という関係よりは「このテーマに向かって走る戦友」であり、一緒に戦う男・池松壮亮として、真ん中にいて欲しかったんです。

——池松さんはオファーを受けた時の感想はいかがでしたか?

池松壮亮:僕、最初は尾崎豊の映画だと思っていたんですよ(笑)。
父親の影響で尾崎豊の音楽をすごく聴かされていて、これはたまたまですけど、僕が物心ついて歌詞を見ずに歌えるようになった曲が「僕が僕であるために」という曲でした。僕は90年生まれで、尾崎豊は92年に亡くなられていますが、彼が残した表現が、いつの間にか自分の身体の中にしみついて、生きる指針、人としてあるべき姿みたいなものを学んだような気持でいたんです。だから尾崎豊に対しては特別な想いがありました。というのもあり、尾崎豊の映画だと思っていたのでフタを開けたら全然違っていて(笑)。

松居さんとも一緒に色んな作品に挑戦していて感じていたことは、全然形は違いますけが、根底にある「人を想うこと」とか「愛すること」など、そういうことに関しては、松居監督に通ずる部分がありました。今、日本映画でオリジナル作品をやるって、ものすごく難しいことなんですよ。お金も集まらないですし、興行として難しい部分もある。そんな中で、松居さんが自分の内側を向いて、深いところで誰かと握手をしようとしている姿に、賛同したいという気持ちと、あと尾崎豊を汚されたくないという気持ちがありました。

——「尾崎豊になりきる男」をどう解釈されましたか?

池松壮亮:そこなんですよ(笑)。尾崎豊という人の名前を借りているだけで、自分が好きな人になったわけでもなければ、好きな人の好きな人になるわけですから、そこには意外と距離があるんです。ただ尾崎豊という名前や、彼が残した楽曲をお借りする訳ですから、例えばこの映画を天国から尾崎豊が観て、笑いながら応援してくれるような作品にしなければいけないと思っていました。なので、尾崎豊という人からは離れすぎず、そして松居監督のやろうとしている今回の映画の核みたいなもの。その2つの柱を常に軸に持ちつつ、あとは生の感情を抑えていけばなんとかなるかなと思っていました。

——撮影中、大倉孝二さん、満島真之介さんと一緒にいるシーンが多かったと思いますが、印象に残っているエピソードはありますか?

池松壮亮:僕は基本的に撮影中共演者と喋ったりしないので、作品について話をすることはあまりなかったです。一応主役なので、多めに差し入れを入れたりはしました(笑)。
この映画に出てくる3人は、ヒロインに対して会おうともしない人たちなんです。結果がすごくロマンチックに描かれている日本の恋愛映画の中で、今回、松居監督がやろうとしたことは、会わない時間こそが本当のロマンチックなんだと。つまり人を想っている時間です。例えば誰かを思いながら歩いた放課後とか帰り道とか、そういうところに松居監督作品の面白さがある。そういうことは自分の中でも新しい発見でした。10年間、3人で好きな人を共有していること。それこそがあの人たちにとってかけがえのない時間だったし、ロマンチックなものだったということなんだと思っています。それは脚本にも書かれていましたし、松居監督がそれをやろうとしていたのは解っていたので、直接的なやりとりはしなくとも、現場でよりお互いを見つめながら感じる部分はありました。なので、すごく濃い時間を過ごせたんじゃないかなと思っていますし、いつも以上に共演者と仲良くなりました。

 

映画『君が君で君だ』は7月7日(土)全国ロードショー

取材・文:筒井あや
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