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最初から出演が決まっていた!?『万引き家族』リリー・フランキー&是枝裕和監督インタビュー

2018年06月18日 21:00 by 筒井あや

第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した是枝裕和監督最新作『万引き家族』。
決して明かしてはならない、ある一家の秘密が紐解かれていくうちに、未体験の心の震えが押し寄せる衝撃の感動作。またパルムドールの日本映画の受賞は、97年の今村昌平監督の『うなぎ』以来21年ぶり。
本作で、父親・治を演じたリリー・フランキーと是枝裕和監督が記念の盾を持参して来福!
制作に至った過程から撮影秘話などを語ってくれた。

——物語は「年金不正受給」のニュースを見たことが着想のひとつになったそうですが、どのようなところに“引っかかり”を感じたのですか?

是枝裕和監督:いくつか着想に繋がることがありましたが、ひとつは『そして父になる』の直後でした。この作品では、家族が繋ぐものは“血(血縁)”なのか“共に過ごした時間”なのか、という二者択一を、福山雅治さんが演じた男に背負わせて、葛藤させるという物語でしたから、その先にどんな問いがあるのだろう?と考えていました。『そして父になる』をカンヌに持って行った時に、そこで取材していただいた方の中に、養子縁組をされている方が多かったということもあります。その時に、血縁を超えて繋がっていく家族の話をやってみたい。次はストレートにそこに向かおうと思いました。今作は、血縁はないけど母親になろうとする、父親になろうとする物語にしようと。
他に、僕自身が「コウノトリのゆりかご」にもとても感心があり、養子縁組や里子制度などは、この国だとなかなか広がっていかない。そういう血を超えた共同体での家族を作ろうとした人たちの話を作りたいと思ったのが始まりでした。でもそれがただの優しさで繋がっているものではない方がいいなと考えている時に、年金詐欺、年金不正受給のニュースを見てしまった。それは無くなった母親の死亡通知を出さずに、それで生計を立てているというものでした。それに触れた時に、それで見ず知らずのおばあちゃん、おじいちゃんの年金を頼りに人が集まっていて、それはお金目当てなんだけど、結果的に家族に見えるみたいな、そういう発想で作ってみようかと思っていた時にはもう、樹木希林さんとリリー・フランキーさんの顔が浮かんでいました。そこがスタートです。一つ目のスタートは「そして父になる」の直後で、二つ目のスタートがそこで、それが三年くらい前でした。

——……と、監督は仰っていますが、リリーさんは最初にその話を聞いてどう感じられましたか?

リリー・フランキー:僕は台本になる前のプロットを頂きました。素晴らしいと思って、プロットの段階でちょっと心が震えました。是枝さんらしいというか、是枝さんが一番関心を持っているものというか、是枝さんしか見ようとしていないことなんだと思いました。僕らが子供の頃に、地面に落ちている瓦をひっくり返したら、表からは見えないけど、ひっくり返すと色んな虫がうようよ出てくるみたいな(笑)。例えばニュースで報道されていることでも、表面的におかしなことがあったら、それを100%悪として断罪し続ける。それをニュースだけでなく、世の中全体もそうですよね。でも一番見逃してはならないのは、それに至った理由や背景なんです。この物語も、表立っては良くないこと、犯罪とされていることでも、その真実は無関係ではない。

——祥太演じる城桧吏くんの演技が印象に残っています。どんなアドバイスをされたのでしょう?

是枝裕和監督:大したアドバイスはしてないんです。感情の説明とかはほとんどしてないけど、あの子はそれを捕まえてくるから、何にも言ってないですね。

リリー・フランキー:撮影の後半になってくると、桧吏くん自体がすごく成長していて。周りの人たちの芝居を見ていて、自分はどう受けるべきかって解っているんでしょうね。あの歳で、あの感覚の受けの芝居ができるってスゴいですよ。

是枝裕和監督:自然に(大人の芝居に)セッションに参加してきてる感じでしたね。

——お父さんは、いい人なんだけど、弱さを抱えた人で、お父さんを演じるにあたって監督と相談されたことはありますか?

リリー・フランキー:クランクインする前に、是枝さんからお手紙を頂いて、このお父さんは、ただの木偶の坊で、最後まで全く成長しません。って書かれていました。だからどうやったら木偶の坊になるのか色々考えたんですけど、自分のまんまでいいんだと(笑)。子供と万引きする時も、遊んでるように万引きするし、いつも“ごっこ”の人。そのくせ仕事場に行ったら一言も喋らないみたいな人で。気持ちを出せる場所が家族が居る場所しかないんでしょうね。

是枝裕和監督:お父さんが成長しないことで、周りが成長するんです。祥太は成長しないお父さんを超えていくことで、治(父)は超えられることでようやく父親になるという風に捉えていました。

——リリーさんは、血が繋がっていないけれど、どんどん家族になっていく、この家族をどう捉えていましたか?

リリー・フランキー:プロットとか台本の時点で、僕の憧れているものがこの映画の中にあるし、この家族の中にあるなと感じていました。この家族って、貧しいんだけど、身の丈でちゃんと生きている。だって、夏に茹でたトウモロコシと発泡酒があって、花火が見えない縁側に出てあれだけ楽しそうにできるって、これ以上いらないでしょって思うんです。それ以上を求めるから、また新しい不幸を抱える。そういうのを見ていて、清潔感というか、血の繫がりよりも暖かいものを感じました。

是枝裕和監督:車上荒らしはかなり上手でしたけどね(笑)

リリー・フランキー:映画を観た、杉作J太郎という僕の友達が、「リリーさんは日本で一番車上荒らしのうまい俳優です」って言ってました(笑)。

——映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。

リリー・フランキー:結果こういう賞をいただきましたけど、監督も賞をもらうために作っていたわけではないと思うんです。ただパルムドールを頂いたことで、映画の上映館数がすごく増えたんですよ。僕は小倉の出身なんですけど、もとのスケジュールだと小倉では上映館がなかったんですけど、パルムドールを獲った瞬間に小倉だけで3館も開いたんです。パルムドールにそんなに反応してくれるとは思わなかったですけど、賞を獲るというのは、たくさんの人に見てもらう機会を作ってもらえることだなと思って、すごくうれしいです。パルムドールという賞のすごさを、そういう日々起こる現象で知る感じです。福岡の友人も観てくれてて、共通する感想は、観終わった後に自分の家族のことを考えたということでした。

良い作品というのは、本でも映画でもそうだと思うんですけど、映画を観終わった後に、1分でも2分でもいいから、自分の家族を省みたとか、映画館以外のところでも、観た人がそれについて何かを考える時間を作品によってもらえたということがうれしいですね。映画館以外の生活の中で少しでも思ってもらえれば。

 

『万引き家族』は、大ヒット上映中!


©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

取材・文:筒井あや
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