グルメ | 新店舗オープン

クラフトビールに人生を捧げた店主が開いたインディー酒屋

2018年04月27日 12:00 by 木下 貴子

福岡でクラフトビールを浸透させたい…。「そのためには本気を見せないと」と、1年待った念願の店のオープンと同時に、オリジナルビールまでも造り上げた店主・深堀成吾さん。強い志とクラフトビール愛にあふれる、クラフトビール専門の酒販店が誕生しました。


そもそも店を開くまでの経緯がユニーク。「23年間公務員として働き続け、40代半ばを迎えたときに、何か自分でやりたいという気持ちにかられたんです」と深堀さん。ちょうど長期休暇をもらえるタイミングと重なり、「ぼんやりですが、カフェに興味があって」と、カフェの聖地アメリカ・ポートランドを訪れカフェ巡りを試みたといいます。「戻った後に参加した起業セミナーでカフェ運営の提案をしたんですが、全然ダメで。それで最後の方に講師から『自分が1日幸せに過ごすなら何をしたいか』というテーマをいただき、そこでふと思い出したのがポートランドでたまたま入った1軒のビール店でした」。


「ポートランドはクラフトビールの聖地でもあり、僕が入ったのも裏に小さな工場のあるクラフトビール店。表では人々がグラスを傾けながら立ち話ししていて、その光景が印象に残っていて。ビールって万国共通で、人を楽しませるアイテムじゃないのかなってその時に思ったんです」。これをきっかけにクラフトビールのフェスタの手伝いをすることになり、そこで深堀さんは造り手の方々と知り合います。その中で大きな出会いの一つとなったのが、東京のクラフトビールメーカーFar Yeast Brewingの代表・山田司朗さんとの出会いでした。

2年ほどビール造りを勉強し、いよいよ独立しようと決めた2017年。「ビアパブをしようかとも考えましたが、飲食の経験がないからピンとこない。その時、山田さんが『酒販免許をとったらどうですか?』と言ってくれたんです」。クラフトビールを扱う酒販店はまだ福岡にはあまりなく、大手スーパーでもクラフトビールを多く扱っていても品揃えが変わらないという現状を考え、「ネットで買えても送料を考えれば、高くなる。だったら色々なクラフトビールが買える専門の酒販店をやろうと決めました」。

まずは税務署から認可を受け、自宅マンションの一室でお店をオープン。自宅なので当然、待っていても買いにくる人はいないので、深堀さんはイベント販売や、カフェなどの飲食店に卸したりしながら(それも自転車配達で!)、クラフトビールを広める活動を行っていました。でもやはり拠点となる店舗の必要性を強く感じ、店舗場所を探していたところ「僕が希望する小さな店舗はいまはないけど、1年待てるなら新しく建つビルの1室を紹介できると不動産やさんに教えてもらい、待ちました」。

それがわずか4坪のこの小さな、でも思いがぎっしり詰まった店舗なのです。インダストリアル風に仕上げた店内は、「“エッジ”と“入りやすさ”を意識しました。両極端ですが、ふり幅を広げることで、マニアだけでなくクラフトビールに初めて触れる人も気軽に入れるように」と話します。



商品棚には、国内外のクラフトビールが並びます。常時70種ほど揃え、割合としては、アメリカ6・ヨーロッパ3・日本1。ポピュラーな銘柄は他の販売店に任せることにして、ここでは、店舗販売では手に入りにくい銘柄を随時入れ替えながら販売して行きます。いわば、クラフトビールのセレクトショップ。



最も注目したいのは、冒頭でふれたオリジナルのクラフトビールです。「かっこよいだけでは足りません。自分でビールを作ることで、本気を見せないと伝わらない」。その気持ちを込めて生み出したのが、Far Yeast Brewingとのコラボレーションによる「WESTBOUND」です。

「西行き」を意味する「WESTBOUND」。デザインの5つのサークルは、苦み、香り、甘味、酸味、ボディの成分表を表したもの。ダントツに大きいサークルが香りです。「ニュージーランド産の貴重なホップをふんだんに使用しています。味わいは何杯でも楽しめる用にライトに仕上げ、アルコールも3.9%に抑えました」。迷わず購入。店内にはテーブルも配置され、角打ちができるのでさっそくここで飲ませてもらいました。


香りも楽しめるのもクラフトビールの特徴の一つ。角打ちでは、香りを立たせる形状のビール専用グラスを使用します。「WEST BOUND」の香りはというと…白ブドウのような爽やかな香りが際立ちます! 口に含むとパッションフルーツ、あるいはマンゴーのようなトロピカルな風味が届き、喉越しはマイルド。そしてビールなのに、とても余韻が長いのです。お値段は、1本600円。



もう1本、届いたばかりのベルギーのBRUSSELS BEER PROJECTの「GROSSE BERETHA」もいただいてみました。こちらは、「ベルジャントレプル」と「ヴァイツェン(白ビール)」という2つのスタイルを掛け合わせたハイブリット・ホワイトビール。香りは深く個性的だけれど、白ビール独特の癖が和らいだ親しみやすいビールです。1本700円(持ち帰りは100円引き)。



飲んでいる間のひととき、深堀さんと談笑。自らビール造りに携わっただけあって、クラフトビールについて様々な話がうかがえました。一般のビールに比べるとクラフトビールは値段が張りますが、製造工程の話を聞くとそれが妥当であることを知りました。また一瓶一瓶に込められる造り手の想いなども聞けました。知れば知るほど深まる興味。「人と接して、クラフトビールを広めていくのが僕の使命」と深堀さんの言葉に納得です。

ユニークな店、ユニークな店主。福岡はもとより、他地域からも人々が集まるような店に育っていきそうな予感がプンプン。福岡のクラフトビールシーンの底上げをしてくれそうな、楽しくしてくれそうな『BEERSONIC』に期待が募ります。

取材・文:木下 貴子
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BEERSONIC(ビアソニック)

住所 福岡市中央区高砂1丁目18-2 高砂小路103
TEL 092-707-3921
営業時間 16:00~21:00(土曜13:00~17:00)
定休日 日祝日
URL https://www.beersonic.com/
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